読んだ論文 (Efficacy of generic meropenem products in combination with colistin in carbapenemase-producing Klebsiella pneumoniae experimental osteomyelitis. https://doi.org/10.1016/j.ijantimicag.2020.106152)
カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌実験的骨髄炎に対するコロスチンとの併用によるメロペネム後発品の有効性
下記よりアブストラクトは閲覧可能
要旨
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)感染症の管理に関するガイドラインでは、MICが8mg/L以下の場合、メロペネムを含む2種類の活性薬剤の併用が推奨されている。メロペネムのジェネリック医薬品の治療上の同等性が問われている。我々は,MEPMの先発品(AstraZeneca)と4種類のジェネリック医薬品(Actavis,Kabi,Mylan,Panpharma)の殺菌活性を,in vitroおよびin vivoでコリスチンとの併用で比較した。in vitroでのタイムキル試験は、4×MICで実施した。KPC産生肺炎桿菌骨髄炎の実験モデルとして、ウサギにKPC-99YC(メロペネムMIC 4 mg/L、コリスチンMIC 1 mg/L)を2×108 CFU接種した後、硬化剤を脛骨に注射することにより、KPC産生肺炎桿菌を誘導した。処置は、接種後14日目から7日間、10匹以上のウサギの7群:対照群、コリスチン、および各メロペネム製品(すなわち、プリンスプ、および4つのジェネリック)の1群で、コリスチンとの併用で開始された。
in vitroでは、メロペネム+コリスチンは、6時間後に生菌が発生しない殺菌効果を示し、この効果はすべてのメロペネム製剤で同様であった。骨髄炎モデルでは、コリスチンと併用した場合、メロペネムジェネリックと先発品の間に有意差は認められなかった。コリスチン耐性菌は、コリスチン+メロペネム先発品(n=3)、ジェネリック(n=3)での治療後に検出された。結論として,メロペネムの4つのジェネリックの有効性は,in vitroでは先発品と,ウサギのKPC産生肺炎桿菌骨髄炎の実験モデルでは,殺菌活性,耐性菌の出現の点で差がなかった。
ハイライト
-カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌は、骨髄炎を含む浸潤性感染症の原因となる多剤耐性菌である。
-最適な抗菌薬レジメンは明らかにされていないが,ほとんどの専門家は,MICが8 mg/L以下の場合にはメロペネムを含む2種類の活性薬の併用を推奨している。
-メロペネム系抗菌薬5製剤とコリスチンとの併用療法について、in vitroおよびウサギモデルのカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌による骨髄炎における有効性を比較した。
-先発品とジェネリックのMEPM4剤との間には、in vitroおよびin vivoにおいて、殺菌活性および抵抗性の選択性に有意な差は認められなかった。
【読んだ感想】
カルバペネマーゼ産生菌に対する、メロペネム+コリスチンはケースシリーズなどでその有効性は示されています。
メロペネムは、カルバペネム系抗菌薬なので、通常、カルバペネマーゼで分解される薬剤なので、単剤では使用できません。
しかし、高用量カルバペネムの使用は、他の有効な抗菌薬との併用療法ではその有効性が示されており、レビューなどでも取り上げられています。
少し前の報告になりますが、下記の内容が参考になると思います。
Morrill HJ, Pogue JM, Kaye KS, LaPlante KL. Treatment Options for Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae Infections. Open Forum Infect Dis. 2015;2(2):ofv050. Published 2015 May 5. doi:10.1093/ofid/ofv050
CREの場合、カルバペネム系抗菌薬のMICは8μg/mLを超えるため、耐性となる場合が多いですが、上記レビューによると、16μg/mL未満であれば、カルバペネムは使用可能となっていますが、今回読んだ報告では、8μg/mL未満がガイドラインに記載されているようです(今回は本文を読めていないのでどのガイドラインかは不明)。
アミカシンは、日本国内では一般的に使用量は少ないです。このため、感受性が残っている場合が多いです。
今回はKPC産生肺炎桿菌を対象に検討をされています。しかし、日本では、IMP型CPE産生腸内細菌科細菌の検出が問題となっており、今回の検討が日本国内でそのまま使用できるかは不明です。これは、カルバペネマーゼの酒類が異なると、活性中心が異なることがあるからです。
KPCは活性中心がセリン、IMPは亜鉛です。
カルバペネマーゼなどについては、上記記事が参考になると思います。
ケースシリーズなどでは、感受性のある薬剤±カルバペネムというのがIMPに対しても有効ということが示されています。
日本国内で流行中の菌種に対する効果を検討する必要があると思います(化学療法学会を中心に検討をされているようですが・・・)。
現在は、COVID-19が流行しており、細菌感染症のアウトブレイクの話などは聞かない状況ですが、今後のことも想定して、感染症診療に関わる薬剤師はこの辺り知識はしっかりと得る方が良いと思います。