読んだ論文 (The legal extension of the role of pharmacists in light of the COVID-19 global pandemic. doi:10.1016/j.sapharm.2020.05.033)

COVID-19世界的パンデミックを踏まえた薬剤師の役割の法的拡大

下記リンクから無料で閲覧可能です。


要旨

背景
COVID-19の流行は生活のあらゆる分野に影響を与えている。最大の課題は、流行の拡大を防ぎ、感染した患者を助けるために、医療サービスの機能を適応させることであった。これには医師や看護師だけでなく、薬剤師の関与も必要であった。このパンデミックに直面して、多くの国の政府は薬剤師により大きな権限を与えている。

目的
本論文の目的は、COVID-19パンデミックを踏まえ、薬剤師の役割の法的拡張をレビューすることである。レビューでは、欧州諸国、カナダ、米国における最近の変化を検討する。

方法
パンデミック期間中の薬剤師の役割拡大に関する知見をまとめるため、文献レビューを実施した。主にPubMedおよびGoogle Scholarから、「COVID-19」、「2019-nCoV」、「コロナウイルス」、「パンデミック」をキーワードに、「薬剤師」を組み合わせて検索した。2019年2月1日から2020年5月15日までの科学論文を対象とした。

結果
薬剤師は、ウイルスとの戦いに積極的に参加できるように、多くの機会が与えられている。負荷のかかった医療システムを支援することを目的とした新しい法整備の例としては、手指消毒薬や表面消毒薬の調製許可、慢性治療薬の処方箋更新資格、薬剤師による 前回 (pro=前の, auctore=(ラテン語で)沿って)処方箋や馴染みの(pro=前の, familia=馴染みの)処方箋の記入、COVID-19、インフルエンザ、A群溶連菌スクリーニング検査の実施、ワクチン投与などが挙げられる。さらに、多くの国では、患者間の社会的な距離を縮めるために、仮想医療相談、e-処方箋 (電子処方箋)、在宅ドラッグデリバリーなどのインターネットサービスが容易になっています。薬物不足を緩和するために、以下の戦略が実施されています:代替品の調達、強度、ジェネリック、または治療法の代替品、薬局での配合製剤の調製などです。

結論
新しい法的拡張により、世界中の薬剤師の潜在能力を最大限に活用し、過負荷のかかる医療システムの限られたリソースを支援することが可能になりました。


(読んだ感想)

COVID-19のパンデミックに関連して、海外のコミュニティ薬剤師 (日本でいう、保険薬局の薬剤師)に与えられた権限や特別な扱い、権利等についてまとめられた報告。

日本とは、薬剤師の立ち位置、業務内容、与えられている権限が異なるので、日本の薬剤師には与えられないであろう点はたくさんあります。

しかし、例えば、電子処方箋など。海外では既に導入されているところもありますが、2020年現在、日本ではマイナンバーに紐づけて、診療情報を共有する制度が2年後を目処に始まる予定ですが、おそらくその際に実施されるであろうと思います (下記リンクの記事参照)。

アルコールについては、不足しているものは、厚生労働省が特例で、アルコール濃度の高い酒類を使用することを認めています。

また、関係団体から、工業用のエタノールの供給があったりしました。

日本でも、医療機関にかかるのがCOVID-19の広がりのなか、受診控えなどに繋がるということで、電話診療で、処方箋発行→薬局さんにFAXし、原本が届かない状況でも調剤、交付をする運用が始まっています。

2020年4月10日、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」が発出され、その内容の1つとしてオンラインでの服薬指導 (もともと2020年9月に解禁予定だったらしい)について記載されています。

また、上記対応に伴う、医薬品の搬送についても言及され、配送料についても明記されていました(薬局従事者の場合はもともと300円 (のちに500円に引き上げ)、患者負担は200円。配送業者の場合は実費)。

ただ、海外の方がやはり進んでいます。

本文Table2に「COVID-19パンデミック期間中の欧州諸国における薬不足の法的解決策」が記載されています。

薬剤師に権限が与えられ、処方の変更などを行っているようです。

海外と比べるのは良くないかもしれないですが、現状、やはり日本の制度は劣っていたり、薬剤師の権限の少なさが少し目立った報告です。

ちなみに、本報告には、日本のことは一切触れられていません。これは、関連する通知の内容が、英語で提供されていないこと、国内の現状を英語論文としてまとめている方がいないことなどが考えられます。

私も含め、日本の薬剤師自体も頑張らないといけないのかと考えさせられる報告でした。


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40代病院薬剤師
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