読んだ論文 (Propensity score matched analysis comparing the clinical outcome of Klebsiella pneumoniae and Escherichia coli causing community-onset monomicrobial bacteremia. Medicine (Baltimore). 2017;96(26):e7075.)

https://europepmc.org/article/med/28658101

肺炎桿菌と大腸菌による市中発症菌血症の臨床アウトカムの傾向スコアマッチングによる比較に関する報告

上記リンクから本文も無料で閲覧可能(2020年8月22日現在)

要旨

菌血症は生命を脅かす疾患であり、多額の医療費がかかる。大腸菌と肺炎球菌は、市中発症型グラム陰性菌血症の主な原因となっているが、これらの病原体間の包括的な比較は報告されていない。本研究では,大腸菌または肺炎球菌による市中発症型単菌性菌血症の成人を6年間に渡り,医療センターの救急部で募集し,診療録から臨床変数をレトロスペクティブに収集した.複雑な膿瘍の発生は、感染症コンサルタントの意見に従って、画像検査で判定した。多変量回帰分析により同定された28日死亡率の独立予測因子によると,大腸菌群の患者は肺炎桿菌群の患者と1:1の割合で傾向スコアマッチ(PSM)していた.K 肺炎球菌群では,大腸菌群に比べて致死的な併存疾患(McCabe 分類),重症度(Pitt 菌血症スコア 4 以上),初期症候群(重症敗血症,敗血症性ショックなど)を有する患者が多く,粗死亡率も高かった.適切なマッチングを行った結果、2 群(大腸菌群、n = 242;肺炎球菌群、n = 242)の菌血症発症時の重症度、初期症候群、主要な併存疾患、および併存重症度には有意差は認められなかった。さらに、14 日間および 28 日間の粗死亡率は 2 つの PSM 群間で同程度であったが、肺炎桿菌群の方が大腸菌群よりも膿瘍の発生頻度が高く、入院期間が長かった(大腸菌群と肺炎桿菌群では初発症時の多くの臨床的特徴が異なる)。結論として,初発時の臨床症状は大腸菌群と肺炎桿菌群で大きく異なっており,ベースラインの特徴の違いをコントロールするためにPSM解析を行ったにもかかわらず,肺炎桿菌群では大腸菌群に比べて入院期間が長く,膿瘍の発生頻度が高かった。


(要旨以外の内容)

PSM解析前の症例は肺炎桿菌群:274例, 大腸菌群:825例と大腸菌の方が、血液培養から検出される菌株としては、やはりコモンである。

調整前の患者背景の比較で有意差を認めた項目は、肺炎桿菌群の方が、適切な抗菌薬の使用までの時間は短く, PITT bacteremia score4点以上の割合が多く、重症敗血症, 敗血症性ショックの割合が高い, 膿瘍を認めており、14日死亡の頻度も高い。調整後は前述の要旨の内容のとおり。調整前も調整後もICU滞在期間、入院期間が肺炎桿菌群で長期。

薬剤感受性は大腸菌群の方が悪い薬剤が多かった ( LVFX, SBT/ABPC, CEZ, CXM (セフロキシム))。ESBL産生菌の頻度は両群で変わらない。


(個人的な感想など)

肺炎桿菌による菌血症の方が、Onset時の重症度は高く、調整前では、肺炎桿菌群の方が予後が悪いという傾向だったが、PMS後の解析では、予後に関わる因子を含め、マッチングしており、予後は変わらないっていうところが、興味深い点です。

あと、本報告は台湾の報告ですが、大腸菌のキノロン等の薬剤感受性が悪いという点は、日本も同じような背景があるなと感じる点でした。


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40代病院薬剤師
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