見出し画像

バンコマイシンの至適トラフ濃度域を得るための投与量は体型により変わるか?

本記事は、医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、個人的に英文を翻訳しており、論文を読む時の解釈が個人の見解に基づいているため、誤っている可能性がありますし、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。

はじめに

久しぶりの更新です。
また、バンコマイシンの投与と体型に関する話題です。
完全に趣味で過去の論文を調査しています(自分の書いている論文に引用する用です)。

今回はJICに掲載されている、NOTEのカテゴリでレベルは落ちる報告ですが、非常に興味深い結果が記述されていました。

日本人を対象とした研究です (薬物動態領域の詳しい先生が指導しているみたいです)

ただし、今回読んだ論文はあくまでもトラフ値にフォーカスをあてて投与量の確認を行われており、近年推奨されているAUCガイドでの投与設計にはそのまま当てはめれない可能性があることには注意が必要です。

論文タイトル

Hashimoto M, Iketani O, Ichinose N, Enoki Y, Taguchi K, Uno S, Uwamino Y, Hasegawa N, Matsumoto K. Evaluation for optimal dosing of vancomycin in patients with different physical types. J Infect Chemother. 2019 Sep;25(9):735-737. doi: 10.1016/j.jiac.2019.04.017. Epub 2019 May 21. PMID: 31126752.

要旨の内容

画像1

非標準的な体型の患者において、バンコマイシン(VCM)の最適なトラフ濃度を得るための十分な投与量については、依然として議論の余地がある。今回,VCM投与患者のうち,最適なトラフ濃度が得られた患者について,投与量と体型の関係を検討した。2つの医療機関で2012年1月から2017年1月までにVCM治療を受けた患者(n=272)を対象に、VCMの投与量と身体タイプをレトロスペクティブに調査した。体型はボディマス指数(BMI)を用いて分類した。BMIが18.5kg/m2未満の患者を「痩せ型」、BMIが18.5〜24.9kg/m2の患者を「標準型」、BMIが25kg/m2以上の患者を「肥満型」とした。VCMの目標トラフ濃度である15〜20μg/mLを達成するためのVCMの1回あたりの平均投与量(mg/kg)は、痩せ型、標準型、肥満型の各群でそれぞれ19.8±4.3、16.5±3.7、13.7±2.7mg/kgであった。目標トラフ濃度を達成するための1回あたりの投与量は、BMIの増加に伴い有意に減少した。痩せ型の患者では推奨用量の上限(15~20mg/kg)以上、肥満型の患者では推奨用量よりも低い用量が、実際の体重に基づいて1回あたりの投与量を計算した場合、目標とするトラフ濃度を達成するのに適切である可能性があると考えられた。

内容の感想

本報告では、上記の要旨の内容のとおり、投与量はやせの患者で多く、肥満の患者では少ない量で良いという内容でした。

ポイントとしては、

●本報告の患者背景としては、腎機能は推定糸球体濾過率(eGFR)が≧60mL/min/1. 73 m^2としている点

●要旨ではトラフ値15-20μg/mLとなるときの投与量と記載されてるようですが、本文では10-20μg/mLの時の投与量と記載されており、どちらなのかよく分かりませんでした
(上記は私が見誤っているかもしれないです)

スクリーンショット 2021-03-13 22.58.45

そんな、トラフが10-20μg/mLもしくは15-20μg/mLを達成した時のどちらなのかわからないですが、図のように、痩せの方が必要な投与量が多かったというのです。これは、あくまでも達成した時の投与量ということですので、実投与量から得られたトラフ値ということかなと思います。

本文の考察では、患者背景の部分をいくつか述べられていますが、本報告では、推定クレアチニンクリアランスだと体重の影響を受けるため、腎機能初見をeGFRで慣らしています。しかし、実際の現場で投与量を決めるときは、推定クレアチニンクリアランスを用いて考慮しているのではないかなと思います。うまくは言えないですが、この辺りの背景も上記の結果につながっているのではないかと考えられます。

この報告では、薬物動態パラメータが算出されていません。これは推定値も含めです。このあたりがどうなのかということは少し考察で触れられていますが、かなり古い論文の内容かつ元文献の体型の区分は今回読んだ報告との区分とは異なりますので、そのまま当てはめるのは良いのか?と思いながら読んでしまいました (否定するつもりは一切ありません)。

はじめのところでも記載しましたが、本報告は、あくまでも過去のガイドラインで推奨されていたトラフ値を得るための推奨投与量について報告しているもので、近年ガイドラインで触れられている、推奨AUCを算出するための投与量ではないことは注意が必要と思います。

おわりに

今回もまたバンコマイシン投与と体型との関係に関しての論文を読みましたが、参考になりつつも、今後の日本のガイドラインはAUCガイドになるため、このあたりとの突合をどうするかという点も興味深いなと思いながら、今回は終わりたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

もしもよろしければ、今後の研究、論文読み込むなどの目的のために、ご支援んいただけると助かります。


いいなと思ったら応援しよう!

40代病院薬剤師
よろしければサポートお願いします。 サポートいただいた費用で、論文の取り寄せ等に使わせていただき、記事を充実させていきます。