読んだ論文 (Removal of remdesivir's metabolite GS-441524 by hemodialysis in a double lung transplant recipient with COVID-19. DOI: 10.1128/AAC.01521-20)

COVID-19併発両肺移植患者における血液透析によるレムデシビル代謝物GS-441524の除去

下記リンクから本文を確認できます (採択原稿で、論文様式ではないです)

要旨


レムデシビルは、in vitroおよびin vivoでSARS-CoV-2に対する有効性が報告されている。薬物-薬物相互作用は、移植患者における治療法の選択肢を制限する。レムデシビルとその代謝物である GS-441524 は主に尿中に排泄される。多臓器不全が急速に起こる可能性のあるICU環境では、レムデシビルの代謝物(GS-441524)とSEBCD (SEBCDは添加物のスルホブチルエーテル β-シクロデキストリンナトリウム)の両方を除去することで、耐性を改善しながらレムデシビル治療を維持するために血液透析が実行可能な選択肢となる可能性があります。追加の研究は、特にCOVID-19の治療オプションの評価において有益であることが証明されるかもしれない。


(個人的な感想)

まずは、要旨だけでは何のこっちゃかわかりませんが、経過しては、肺移植後の患者で、COVID-19を併発し、相互作用等を考慮認めた患者に抗ウイルス薬による治療を躊躇していたが、最終的にレムデシビルを使用したがAKIを発症し、透析をした際の報告。

図などに血中濃度がサクッと掲載されている訳でもなく、本文を読んで、レムデシビルも代謝物も透析前と比較し、透析後では、低下していたというような内容。

具体的には、

透析セッションの前に、トラフ血漿中のレムデシビルは1ng/mL未満、GS-441524は563ng/mLであった。透析後の血漿中濃度は,レムデシビルが1ng/mL未満,GS-441524が226ng/mLであった.

だそうだ。つまり、レムデシビル自体は透析前後で低かったため、タイトルのとおり、今回は、代謝物のみに言及されているということですね。

読んでいて気になったのが、レムデシビルの薬物動態関連の情報。

ベクルリーのIFは見当たらず、とりあえず、添付文書を確認しました。

半減期はレムデシビル: 1時間弱, 代謝物: 25時間強

タンパク結合率: 87.9%

分布容積: 記載なし

記載なしだと??

分布容積について、困ったときのThe Sanford Guideを確認してみましたが、データなしの記載。

確認していないんかい。

透析性を決める3つの因子として、

1)分子量、2)タンパク結合率、3)分布容積

がよく知られています。

1)分子量は500以上が透析されにくい基準となりますが、レムデシビル自体は600ほどあり。代謝物は不明

2) タンパク結合率による影響は明らかな指標はないが、平田らの報告(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/37/10/37_10_1893/_pdf)によると、下記の図のような感じとなり、9割近い当該薬剤は透析しにくい部類に入ると思われる。

画像1

3) 問題の分布容積。これは正直当該薬剤ではわからないので影響は不明。

以上から、透析性は悪そうに見えるのだが、実際はよかったと報告されている。

しかし、気をつけなければいけない点がある。本文等でも触れられてはいないが、4時間透析後のどのタイミングで採血されたか。なぜなら、仮に分布容積が大きな薬剤であれば、再分布によるリバウンド現象発現の懸念がある。

レムデシビルの代謝物自体の半減期は非常に長い。これは、一概に排泄速度が遅いというだけでは説明されない。詳細は不明だが、例えば、タンパク結合率や分布容積の影響で通常の排泄自体が遅い。そういうことであれば、仮に透析性があったとしても、リバウンド現象による再分布の可能性はないのか?という点が非常に気にはなった点であった。

ちなみに、要旨に急に略称が出てくる、SEBCDは添加物で使用されるスルホブチルエーテル β-シクロデキストリンナトリウムの略称で、原末の溶解性を向上させるために使用されることのある添加物。

SEBCDはブイフェンド (ボリコナゾール)やノクサフィル (ポサコナゾール)の添加物としても使用されている。

SEBCDは腎機能障害症例では、蓄積し、腎機能をさらに悪化させる懸念があるということが知られており、透析で除去される物質。


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40代病院薬剤師
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