バンコマイシンの投与設計を行う際にクレアチニンクリアランスの上限を設けることが適切な投与設計を行うことに役立つか?(PMID: 30051194)
本記事は、主に医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。
はじめに
どうも、数日ぶりです。
今回もまた相変わらずバンコマイシン (VCM)に関する論文を読みました。
こんなにVCMの論文を読み漁っているのは、VCMに関することで、何かを行おうと考えている最中なんです。
これまでは、VCMのガイドラインの改訂の話や
体格 (主に肥満)で、VCMの薬物動態、投与量、安全性が異なるかどうか?に関する内容や、
VCMのトラフ濃度15-20μg/mLでの管理 vs AUCガイドでの管理の安全性に関する内容
等について読んだものをまとめて記事にしていました。
VCMの投与設計をする際に、施設や薬剤師の個人レベルで、色々な考え方があると思います。その中で、腎機能の評価をどうするか問題に関しては、様々な派閥があり、例えば、血清クレアチニン値が0.6 mg/dL未満の症例では一律0.6 mg/dLとする方法など、様々な方法を検討されていたり、実践されていたりすると思います。
私は、症例を見ながら、腎機能の評価に関しては、その時々で考える派で、特殊な方法かと思います(個人の裁量ってやつです・・・)。
そんな中、先日読んでいた論文に引用されていた報告で、頭部外傷の症例で、CrClの上限を設ける場合、設けない場合で、バンコマイシン血中濃度について、実測値と予測値で差があるかどうかについて確認した報告がありましたので、今回はその内容についてまとめました。
The Impact of Capping Creatinine Clearance on Achieving Therapeutic Vancomycin Concentrations in Neurocritically Ill Patients with Traumatic Brain Injury. Neurocrit Care. 2019 Feb;30(1):126-131. doi: 10.1007/s12028-018-0583-z. PMID: 30051194.
内容をスライド1枚にまとめました。
今回読んで感じたことは、
頭部外傷の患者では、日常診療で見ていても、尿崩症のように、尿量が多くなり、輸液療法で追っかけるような方法を取られている場面を多く見ていましたが、やはりそういうことがよく見られるようで(今回読んだ報告では、ARCの基準を満たしている症例が75%だった)、頭部外傷の症例では、ARCが起こりやすい
→つまり、VCMに限らず、腎排泄薬剤の使用時には注意が必要なんだということを再認識しました。
本文は、無料で見れない報告ですが、本報告では、患者背景に関しては、全体の記述統計を行うのみで、例えば、ARCの症例 vs 非ARCの症例のような群分けで比較したりは一切していません。同じサンプルで、CrClの上限を設けた場合の予測トラフ値、CrClの上限を設けない場合の予測トラフ値を算出し、それを実測のトラフ濃度と比較するというシンプルな方法で記述されていることも、非常に興味深いことだと感じました。
この内容でIF 2台の論文に掲載されているという点もポイントだと思いました。
終わりに
VCMの投与設計に関して、施設の薬剤師のレベルが異なるので、マニュアルを用いたり、ソフトウェアを使用したりしてできる限り解析方法をシンプルにしている施設も多いのではないかと思います。
しかし、患者個々の病態により、一律の方法では当てはまらないということを指導していかないといけないし、認識して、責任のある薬物療法を提供できるよう、我々が努めていかないといけないと考えさせられる報告でした。