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病院薬剤師の採用は難しい?

久しぶりの投稿になります。 (2021年7月以来でした)
投稿再開の一発目は病院薬剤師の採用事情について自身の思うところなども含め記載していきたいと思います。
今回、このテーマを選んだのは、ある雑誌の記事を見て触発されました。
では、よろしくお願いします。


はじめに

病院薬剤師の採用において、募集しても応募者がなかなか集まらないという課題があります。この記事では、そんな採用事情について思うところを記述します。

病院薬剤師の確保の状況と取り巻く問題

病院で働いている方の中で、病院薬剤師は働き甲斐があると感じる方が多いのではないかと思います。
その一方、働く上で働きがいとは相反するようなことを色々と感じながら働いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ある記事の中で、薬剤師の確保は”給与が安い”、”休暇取得が難しい”のが問題ではないと書かれていました。
どちらが正しいのでしょうか。
そのあたりをはずは見ていこうと思います。

薬剤師の職種による給与は違うのか?

薬剤師の給与については、いくつか客観的なデータとして確認されているものがあります。
まずは、m3のコラムに記載されている「病院薬剤師の給与はいくら?なぜ低い?平均給与や給与明細事例も公開」(下記リンク)という記事に自社調べの内容が記載されています。

この記事の中では、薬剤師の平均年収はドラッグストア (調剤併設)では528万円、調剤薬局では517万円、病院が474万円と記載されており、病院薬剤師の給与が低いということが報告されています。
この中で、病院薬剤師の給与が低い理由について書かれていますが、「新卒の薬剤師に人気があり採用に困らない」、「病院内で人件費を抑制されやすい」の2点が記載されています。
個人的には、このうち、「新卒の薬剤師に人気があり採用に困らない」については、少し当てはまらないようには思っているところはあります。
また、厚労省のHPに記載されていますが、「病院薬剤師を活用した医師の働き方改革推進事業一式 報告書の中には、「子育て中の病院薬剤師の勤務継続を阻害しうる主な要因」として、「経済的事情 子育て費用の負担がある中、家を購入しまとまったお金が必要であるが、病院薬剤師の給与では心もとない。」との記載や「将来こどもにお金を残すことを考えると、病院よりも薬局の給与が魅力的である。」、「経済的理由(給与)が離職の主な要因となっている。」、困りごとの欄には、「給与」の項目があり、「薬局に比べて相対的に給与が低い」、「医師や看護師に比べて相対的に給与が低い」、「時短勤務により給与が減る」と記載されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001237509.pdf

以上から、給与が低いことは、入職後、結婚・出産など、生活環境が変わってくると収入が低いと困る方が増えてくるということかと思います。また、普段、実務実習生に関わる立場でもありますので、実習生から正直な意見を聞くと、奨学金を借りている方が多く、その奨学金を返すために給与の高い職場に行きたいという希望を強く持っている方が案外多いことも職場を選ぶ上で、給与面を重視する理由になるのではないかと思います。これは、ライフプランを考える上では仕方ないとは思います。

「病院内で人件費を抑制されやすい」点については、m3の記事の中で簡単には解説されていますが、それが全てではなく、正直なところ、病院では、薬剤師が直接収入を得れる診療報酬の内容が少ないこと、点数が少ないことなどが挙げられるのではないかと思います。
このあたりについては、別記事で今後記載をしたいなと考えています。

生涯年収はどうなのか?

先ほど記載した平均年収はすべての年代の併記であることです。
ここで疑問が出てくるのは、生涯にわたり、薄給で病院薬剤師は働いているのか?という点です。
このあたりは、第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会の資料として提出されている「薬剤師の偏在への対応策」に詳細な記載がされています。
この資料の中に「病院・薬局間の給与格差の実態」という内容が記載されています。その内容によると、「65歳まで働くことを想定した場合、常勤の病院薬剤師(23,280万円)と薬局薬剤師(22,768万円)との生涯年収の差額は512万円であり、大きな差異はみられなかった。」とのことです。一方、「学生が就職先を選択する際に考慮する要素の上位に「給与水準」があげられていることから、20代での病院・薬局間の給与格差が病院への就職に影響していることが考えられる。」と記載されています。グラフの数字ですが、20代では、病院勤務は380万円、薬局勤務は430万円であり、50万円の開きがあり、この年代では薬局勤務の薬剤師の方が給与は有意という実情のようです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001079647.pdf

薬剤師の職場を考える上で重視されていることは?

薬剤師の職場を選ぶ際に判断されている基準についても、第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会の資料として提出されている「薬剤師の偏在への対応策」にまとめられている。その中では、病院では「業務内容・やりがい・給与水準」薬局では「給与水準・通勤時間の長さ・勤務時間の長さ」であり、病院・薬局とで薬剤師が重視する事項は異なる。」との記載がされています。
すなわち、病院と薬局に求めていることがそもそも違います。しかし、給与が低いことは前述のとおり、離職にも影響が出る可能性がありますので、給与の面も病院薬剤師を確保する上で非常に重要な要素であることは間違いないと感じています。
採用上で、給与面を重視されると、薬局と比べると採用は正直難しいということとなるのではないかと思います。
これは、給与を増やしてもらうことは経営側の判断となること、給与を改善してもらうための成果を出すことはすぐには困難なことから、すぐに給与水準の改善を行うことは難しいと考えるからです。
また、実務実習生に話を聞くと、「当直や夜勤」という特に急性期の病院では多い勤務体系が病院の就職を敬遠される理由になることもあるようです。

採用する上で受験者に対する伝達等で配慮したい点

それでは、病院薬剤師の仲間を増やす上で、採用側がどういう点に配慮したらよいのでしょうか?
この点についても、第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会の資料として提出されている「薬剤師の偏在への対応策」に簡単に解説がされています。
薬剤師の離職防止のためには、就職前に昇給ペース、業務内容・やりがいなどについて十分に情報提供を行うことが望まれる。
●病院においては「給与水準」への不安への対応として、不安をなるべく少なくするために「給与水準」について求職者への説明を丁寧に行うこと
●残存する不安の解消に向け、面談などを行い勤務する薬剤師の不安を把握し、解消に向けた取り組みを続けること

実際に行っている事例について

個人的にはある領域の職員採用に関して、深く関わっている状況です (身バレ防止で詳細は書けませんが。。。)。
近年、同じ領域で、他院の採用が多数あること、近隣の施設でも同じ領域の職員採用が始まっていることが引き金となり、応募者数が減っていました。
ここまで記載した問題点等を考えると、給与、やりがい、業務内容などについて十分に説明が必要ですし、私が勤めている施設では競合他社のこともあり、別の対応も求められていました。

実際に行っている工夫としては、下記のような取り組みをしております。
・HP上での情報を増やすこと
・年収について包み隠さず行うこと
・入職後の環境について具体性をもって話をすること
・競合他社との違いを明確に伝えること
・競合他社にはないメリットを伝えること
・病院見学では、実際に働いている職員との面談の場 (質問の時間)を多く設け、職員には自分の好きなように回答して良いことを伝え対応してもらうこと
・病院見学の内容を充実させ、採用試験の時期は他院となるべく同じような時期 (試験日は重複しないようにはしている)に実施すること

以上のような取り組みは以外と効果があり、ここ数年は自分が関わっている領域の職員確保には難渋していない状況ですね。
特に、「競合他社との違いを明確に伝えること」、「競合他社にはないメリットを伝えること」については、自施設の強みと弱みを採用者の対応者自身が正しく理解し、受験希望者にどれだけ誠実に伝えることができるかということが、入職後の離職を防ぐことに役立つのではないかと思います。

最後に

病院薬剤師の取り巻く環境は非常に厳しいです。
病院薬剤師の採用・確保についてもやりがいだけでは簡単にはいかないことも大いにあると思います。一方、給与を改善することはなかなか難しいとは思います。
我々が病院薬剤師の仲間を増やしていくために何が必要か、どうすれば魅力のある職場にできるのか等を考えながら対応していかないと仕方ないと思います。

今後も自分のペースで記事を記載していきます。

質問はXのDMなどでも受けていますのでどうぞ。


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40代病院薬剤師
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