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割と美人な同居人とほんの少し距離を縮めました。
菅原さんとの同居がはじまって1週間ほど。
お互い少しずつ慣れてきて学校生活で関わることは無いけど家の中では少しずつではあるけど話しはじめている。
4限の授業がはじまる前、菅原さんがいきなり教室に来た。
「○○君、ジャージ貸し....」
なんか危ないこと言おうとしてる。
明らかに。
「あー!!!ジャージ!!!あそこに忘れてましたもんね!!どうぞ!!!!」
不自然にも思えるほど大きい声を出しながらジャージを菅原さんに押し付ける。
「あ、ありがと...」
クラスメイトからの疑惑の視線をなんとか振り切り4限の授業をはじめる。
睡魔に耐え切り4限の授業が終わるチャイムが鳴り響く。
それと同時にすぐさまお弁当を取り出す。
その時に事件は起きた。
「あ......」
「あれ、お前弁当ちっちゃくね?」
友達に言われるまでもなく感じる違和感。
○○は普段朝弁当を2つ作っている。
大きめの方と小さめの方。
包みを開けて出てきたのは小さい方だった。
「.......多分向こうもこうなってるよな。」
携帯を確認すると菅原さんから連絡が来ていた。
「○○君、お弁当逆だよね?」
「うん、屋上がいい。」
「じゃあそこ向かうね。」
・・・
屋上の扉を開けると菅原さんはもう待っていた。
「はい、これ。」
「ごめんね、間違えちゃって。」
「ううん、作ってくれてるし...」
「それじゃあね。」
菅原さんは足早に行ってしまった。
「なんかまずいことしたかな...。」
・・・
授業も終わり部活の時間。
「ヘイ!」
ボールを味方から呼び込みワンタッチでシュート。
ボールはキーパーの手を掠めることなくゴールに吸い込まれた。
「っし!」
大会は近いうちには無いけどゲームになると気合いは入るしいい緊張感でプレーできている。
「疲れた....」
はやく帰って晩ご飯の準備をしなくては。
「あ!英語のワークやってねぇ!」
「明日までなら耐えるっしょ。」
部員たちの声で思い出す。
あれ、教室に忘れてね?
帰宅前に重い足を引きずって教室まで戻ると隣の教室には菅原さんがいた。
「あれ、菅原さん?」
「.......学校では関わらないで欲しいんじゃないの?」
ジャージの時のこと、気にしてたのかな。
「同居してるってことがバレたら大変だから...同居なしにしたら俺たちが関わってるのおかしいじゃん?」
「なんだ、てっきり嫌われちゃったかと...」
「菅原さんのこと、嫌いになるわけないでしょ。」
「むしろ同居がバレたら大変なんだからね、菅原さんの影響力考えてよ。」
学年でも一二を争う位の美人なんだから。
「ごめんね。」
「てか、なんでまだここに?」
「ダンスの練習してて....」
ダンス?菅原さんは帰宅部のはずなのに。
「なんでダンス?」
「き、聞いても笑わないでね...?」
「うん。」
「私、アイドルになりたいの。」
割と食い気味にその言葉を俺は肯定していた。
「なれるよ、菅原さんなら。」
「ひとつ思ってたんだけど、菅原さんって距離感じちゃうんだよね。」
「じゃあなんて呼べば...?」
「咲月がいい...!」
女子の名前を呼ぶなんてはじめてだけど、バレないように堂々と目を見て、
「咲月。」
なんて言ったら彼女の顔は夕日のせいなのか少し赤くて。
「は、はやく帰ろ!」
なんて焦りが顔に書いてある。
俺たちは一瞬だけど永遠に感じる甘酸っぱい時間を過ごした。
学校を出る頃にはもう帰っている生徒は誰もいなくて2人だけの道。
「手、冷たそうだね。」
「冷たいけど、帰るまですぐだから。」
「もう...」
そう言って菅原さんがポケットから何かを取り出し俺の手に乗せてきた。
「え....」
乗せてきたのは菅原さんの手。
急に心拍数が上がって菅原さんの方を見るとどうやらあちらも顔を真っ赤にしている。
「ポケットに手袋が引っかかっちゃって...カイロも手袋で握ってたから...」
ポケットのカイロを渡そうとしたら手袋がポケットに引っかかって手だけが出てきたんだろう。
それでも明らかに意識してしまう綺麗な手。
暖かい感触。
もう、後のことは一旦後で考えよう。
今は少し、いたずらする。
「え...?」
驚く菅原さんを他所に俺は菅原さんの手を握って帰り道を歩き出した。
「○○君...!」
少し歩きはじめたところで菅原さんに引き止められる。
「もう少しゆっくり...歩こうよ...」
今にも消えそうな声で頬を染めながら言う菅原さんを見て、自分の体温が上がる。
「そうだね。」
別に話をしなくても繋がっている。
心地よい空間を楽しみながら家にたどり着いた。
・・・
少し遅くなってしまったので急いで身支度を整えると早炊でご飯を炊き、冷蔵庫を漁る。
「なににしようか.....」
「私、手伝おうか?」
「すが...咲月は座っといていいよ。」
「もう...慣れてよ?」
「分かったから。」
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茶化すように俺の言い直しを笑いながらいじると咲月はそのままカウンターに顎を乗せてちょこんと見学の体勢に入った。
リズム良く玉ねぎをみじん切りにしていると咲月の涙を浮かべた顔が目に入った。
それを見て手元が狂う。
「いった....」
「大丈夫?!ちょっとまってて!」
咲月のすぐさま持ってきたバンドエイドのおかげで事なきを得た。
「珍しいね、慣れてるのに。」
「....そういう時もあるよ。」
「そっか、今日の洗い物は私やるからね。」
「手荒れちゃうかもだし、俺がやるよ。」
「申し訳ないよ...」
なんで急にこんなこと言おうと思ったのか分からないけど咲月にはなんだかいじわるになってしまう。
「じゃあ、はやく治るようにおまじないかけてよ。」
「えぇ...」
「アイドルならできるでしょ?」
また困った顔でこちらを見てくる。
上目遣いで。
玉ねぎのせいで少し涙目。
「じゃあ...ちょっとまってて?」
そう言って足早に2階の自分の部屋に行ったかと思えばすぐさま戻ってきた。
「ピンクと水色のペンなんて何に使うの?」
「指出して...!」
手を差し出すと何か書こうとして、また少し手を握られる。
俺が意識をそっちに割いてる間に咲月のやりたい事は終わったみたい。
「じゃん...!」
バンドエイドの両端に2色のペンでハートが書かれていた。
「私のパワー込めたから、早く治してね!」
そう言って自信満々にこちらにウインクしてくる。
しっかり撃ち抜かれた俺は
「ご、ご飯途中だから...!」
そう言ってキッチンの奥へと逃げる。
カウンターでまだこちらを見てる咲月。
とりあえずこのバンドエイドは忘れられないバンドエイドになりそうだ。