褪せないフィルムはあの頃の青春のように儚い。
夜は涼しく、昼には残暑を感じる9月上旬。
学校の窓から外を見れば、中庭の花壇に咲く黒いコスモスが目に映る。
カメラのファインダーを覗くと彼女の奈央が外側からカメラを覗き込んでいた。
「ねぇ、撮れないんだけど。」
「奈央のこと撮れば良くない?」
さほど身長差もないカップルの僕達。
奈央がカメラを覗けばおのずと距離も近くなり、奈央の整った顔が目と鼻の先にある。
「彼氏になって1年経つのにまだ照れてるじゃん。」
向日葵みたいな笑顔をこちらに向けてくる奈央の可愛さにはたぶんずっと慣れないんだろうな。
「......奈央が可愛いのが悪い。」
「急に褒めないでよ......」
頬を染める奈央を見て咄嗟に謝った。
「ご、ごめん......」
少し恥ずかしい空間を切り裂くように教室の扉が開く。
「2人とも、一年以上のカップルには見えないくらいピュアだよね。」
やれやれと言った顔で入ってきたのは僕の幼なじみの彩。
「彩にピュアって言われたくない。」
「なおも。」
「○○はなんかムカつく......!」
「いてっ!」
「ふふっ」
奈央がカメラを取り出し僕達の掛け合いをカメラに収める。
「てか、2人とも文化祭の写真はもう選んだの?」
カメラを見て思い出したかのように彩が僕達に言った。
「明日だし決めてるよ。」
「なおも!」
僕達3人は1年の時に写真部を立ち上げた。
2年目の文化祭はなにか展示してみようということで各々が撮った作品を教室に展示する。
花というテーマを決めて、僕達はそれぞれベストショットを撮ってきた。
「じゃあ、せーので見せてから展示の準備する?」
奈央からの提案に僕と彩は頷き、同時にカメラからスマホに保存した写真見せることに。
「じゃあ行くよ?せーのっ!」
彩が出したのは一面のアネモネ畑。
色んな色が咲き誇っていてとても綺麗。
「彩のやつ、綺麗。」
「お母さんと行ったんだ~」
「可愛い......。彩はこのまま赤ちゃんでいて欲しい!」
奈央からの意外な言葉に彩が少し頬をふくらませる。
「奈央は赤ちゃん扱いしないと思ってたのに......」
「彩、奈央のこと許してやってよ。悪気はないんだから。」
少し拗ねた様子の彩。
「○○が言うなら......」
「やった!○○大好き!」
「あやの前でイチャイチャするなー!!」
「ごめんって~」
現在、絶賛にやけている奈央の作品は満開の桜。
「奈央、なんで桜なの?」
僕が聞くと
「○○に出会えた季節を思い出したから!」
「.......」
「あ、照れてる。」
彩がにやにやしながらこっちを見て言うと、さらに僕を追撃するように奈央も言葉を紡ぐ。
「ほんっと私の彼氏は可愛いな~」
「なおうるさい。」
「拗ねちゃって~」
「で、○○の作品はピンクの薔薇?」
彩が不思議そうに見てくる。
「知り合いの園芸家の人に撮らせてもらったんだ、どう?」
真っ白な部屋に、ピンクの薔薇が1輪。
とても鮮やかに色を感じる。
「○○の撮る写真、やっぱり好き。」
そう言った奈央の優しい笑顔に目を奪われる。
「○○......?」
ぼーっとしすぎて彩と奈央に不思議がられる。
「ごめん、準備しよっか。」
・・・
文化祭当日の朝、家の扉を開けると奈央が待っていた。
「あ、○○!」
「一緒に行きたいなら僕が迎えに行ったのに。」
「○○と居たい気持ちが抑えきれなくて......」
その言葉を言う君が儚くて、可愛くて。
思わず首から提げたカメラを持ちシャッターを切った。
「変な顔してない......?」
「してないよ。いつも通り可愛い。」
「もう......!」
そう言って僕の手を握る奈央。
「珍しいね?あんまり外ではくっつかないのに。」
「......たまにはいいじゃん!」
2人で手を繋ぎ、学校までの道を歩く。
鳥も、草木も、田舎である環境さえ僕たちを祝福するかのようにあたたかく揺れ、僕も奈央も顔を見合わせて微笑んだ。
学校に着き、教室に入ると彩に声をかけられる。
「2人ともおはよ。」
「おはよ、彩。」
「おはよ~」
「2人ともはい、これ。」
彩は写ルンですを鞄から取り出して僕たちに渡してきた。
「顧問の先生から、余ってたからあげるって。」
「文化祭だし、使えそうだね。」
「○○のこといっぱい撮ってあげるね!」
「恥ずいからやだ。」
「なんで?!」
不毛なやり取りですら青春の空気を感じる。
そんな空気を胸いっぱいに詰め込んで開会式を迎えた。
3、2、1というカウントダウンに合わせて風船を空へと打ち上げる。
彩は友達とまわるため、奈央と二人。
「○○!行こっ!」
僕の手を引いて歩く奈央の後ろ姿に、こっそり写ルンですのシャッターを切った。
「○○?」
「ごめんごめん、どこから行く?」
「2組のチュロス!食べたい!」
「いいよ。」
手を繋ぎ指を絡めてくる奈央。
「へへ~」
「嬉しそうだね」
「......○○のこと、大好きだもん!」
「美味しい~」
奈央はシナモン味。僕はいちご味。
「○○にも1口あげる、ほら!」
「ん......美味しい。いちごもあげる。」
「んまっ!」
写ルンですのシャッターを切り、奈央との思い出をフィルムに残していく。
僕だけでなく奈央も大切そうに思い出に残していく。
それからもお化け屋敷に行ったり、フォトスポットに行ったりして文化祭を満喫していた。
「そろそろステージ発表行こうよ。」
奈央からの提案で体育館へと歩みを進める。
体育館に入ると演劇部の発表がはじまった。
傲慢な野獣がヒロインと出会う事で人を思いやる事などを学び、お互いに心を通わせ続け愛が芽生えていくというストーリー。
ヒロインが本を読んでいるシーンから始まる第2幕。
ヒロイン役の井上さんに思わず目を奪われる。
「綺麗......」
思わずカメラのシャッターを切ろうとした瞬間、横から脇腹を抓られた。
「いっ......」
「○○は私だけ見てればいいの......!」
奈央は少し儚い雰囲気を纏いながらもステージに目をやった。
劇はおおずめとなり、狩人を追い払って野獣の呪いが解けるシーン。
キスをする振りをした演技に会場は黄色い声に包まれる。
そんな中、僕は奈央に目をやった。
「○○......?」
奈央も僕もお互いの気持ちが何となくわかっていた。
舞台に注目が集まっていて、あたりは少し暗い。
1度奈央の唇を見てから奈央と目が合った。
いいよ
口パクで奈央がそう言い微笑む。
キスシーンの余韻に包まれた中、僕達は一瞬キスをした。
「......しちゃったね。」
照れくさそうに笑いながら言う奈央が可愛くて写ルンですで奈央を撮る。
「ちょっと、恥ずかしいよ。」
そう言って奈央も僕を撮った。
いつの間にか劇が終わって、体育館の照明がつく。
明るくなって、僕達は少し距離を置いた。
体育館を出て、空き教室へと向かう。
もちろん手は繋がれたまま。
「奈央、好きだよ。」
教室について、ふと溢れてしまった言葉。
「○○......」
奈央の大きな瞳から溢れる涙。
「なお.....?」
後夜祭の花火が放たれた音がした瞬間、僕達は静まった。
そして夜空に花火が咲く瞬間、奈央が口を開いた。
「私ね......転校するの......」
大きな瞳から大粒の涙がこぼれる。
僕は到底受け入れられてなどいないし、頭の中で処理できていない。
それでも彼氏として奈央を抱きしめた。
「ごめん......」
奈央からの謝罪に喉の奥で言葉が詰まる。
「......いつ転向するの......?」
震える声で涙を堪える。
「明後日だけど......」
「じゃあさ。」
「明日の午後、僕にくれない?」
「1日じゃないの......?」
「うん、午前は彩とか友達に使ってあげて?」
「分かった......」
重苦しい雰囲気の中、上がり続ける花火。
夜空を彩ると共に、僕たちの心の影を伸ばしていった。
下校中、手を繋ぎながら帰る僕たち。
手は繋がれていても言葉はない。
それでも、考えはまとまった。
奈央の家まで自然と着いた時、繋がれた手は離れずにいる。
「奈央。」
「なに......?」
「明日、1時に迎えに来るから。」
「......分かった」
奈央が家に入るのを見届けたところで地面にしゃがみ込む。
「はぁ......」
堪えていたものが一雫溢れたところで帰り道へと歩き出した。
「○○......」
2階の自室から○○を見つめる奈央。
その瞳からも涙がこぼれ落ちていた。
帰ってきてご飯を食べていても、風呂に入っても、頭から離れない花火の音と奈央の表情。
風呂を出て自室に戻ると奈央からメッセージが来ていた。
「○○の声が聞きたい」
同じ気持ちだったことが嬉しくなったからか。
体温が上がっていたからか。
焦ってボタンを連打してしまうとビデオ通話で電話をかけてしまった。
ワンコールで顔を隠した奈央がスマホに映し出される。
「すっぴんなんだけど......」
「可愛い顔見せてよ。」
少し微笑んで奈央に促した。
「もう......」
ゆっくりと手を退ける奈央の目は少し赤みがかっていてる。
「ごめんね○○......奈央も聞いたの一昨日とかで......」
「奈央、謝るの禁止。」
「でも......」
俯きながら考え込んでしまう奈央。
人一倍責任感を感じてしまう子だからこそ。
「なお、楽しい話しよ?」
「うん......!」
やっと見れた奈央の笑顔に僕もつられて笑顔になる。
「ちょっと、なんで笑うの......!」
「ごめん、奈央が可愛くて。」
「たらし......」
机に突っ伏して下唇を突き出す奈央。
「奈央だけだよ?」
僕がそう言うと奈央はハリネズミのぬいぐるみで顔を隠した。
「......」
泣いているのか、はたまた恥ずかしがっているのか。
「奈央、泣き虫だよね。」
あえてバカにしたような言い方をしてみる。
「泣き虫じゃないもん......!」
泣いてなかった事が分かって、畳み掛けてみる。
「僕が告白した時も泣いてたじゃん」
「そういう○○だってあの時は泣いてたもんね~」
「泣いてないし。」
「泣いてたし!」
「ふふっ」
そこから話は尽きなくて、日付を跨いでも僕達は2人で記憶のフィルムを重ね合わせた。
「でさ、あの時の彩面白かったよね。」
「......うん.........そうだね......」
奈央の瞼が閉じ始めている。
「もう眠そうだね、切ろっか。」
僕がそう言うと奈央が目をこじ開けて口を開いた。
「切りたくないよ......」
奈央のその一言から、さすがに寝ない訳にも行かないのでビデオを切って寝落ち通話することになった。
枕元にはスマホを置いて横になる。
目を瞑ればまるで奈央と寝ているかのようで恥ずかしさも感じた。
僕が寝返りをうつと、奈央の方からも布団が動く音がする。
真横を向くと明確に奈央と目が合ったような気がした。
「んぅ......」
奈央はもう寝ていたので、僕も眠りにつくことにした......
朝起きると通話は切れていて、どこからともない寂しさを感じた。
休みの日だというのに制服を着て、いつもより少しだけ身支度に時間をかける。
最後くらい、かっこいいを奈央に覚えていて欲しかった。
約束の時間になり、奈央の家まで迎えに行く途中で彩に出会った。
「○○......」
彩は目をうるうるさせていた。
「彩、よく頑張ったね。」
あやの頭をそっと撫でる。
「明日......朝イチの電車で行っちゃうんだって......」
「そっか、わかった。」
「行ってくる。」
彩にそう言い残して奈央の家まで向かった。
「○○......」
・・・
家に着くと、制服に身を包んだ奈央はもう外で待っていた。
「○○っ!はやくいこっ!」
しっぽをブンブンと振り回してるように見えるくらいはしゃいでいるのが可愛くて1度頭を撫でた。
「よしよし、行こ?」
「うん!」
僕たちが向かったのは地元の遊園地。
中に入ると奈央の目が輝き出した。
「○○!あれ行きたい!」
奈央が指さしたのはゴーカート。
「いいよ、行こ!」
2人のバッグには持参した写ルンですがあって、さっそく僕は1枚、奈央の後ろ姿を撮った。
「○○、行くよ!」
田舎の遊園地ということもあってすぐに順番が来る。
「どちらが運転しますか?」
スタッフさんにそう聞かれた。
「じゃあ僕が......」
そう言いかけると肩を奈央に掴まれる。
「任せなさい!」
結局奈央が運転することになり、今は操作説明を受けている。
「はい!OKです!」
「じゃあ、いってらしっしゃーい!」
スタッフさんの一言を聞いた瞬間に奈央がアクセルをベタ踏みした。
「ちょっとなお?!」
「あっはっはっはっは~」
カーブにギリギリ当たらないドライブテクでスピードを緩めることなく運転していく。
僕は心配していたけど奈央は爆笑している。
「○○ー!楽しいー!!!」
その瞬間を頑張ってカメラに収める。
「はぁ......」
「あー楽しかった!」
対象的な僕達の手はすぐに繋がれて、そのまま次のアトラクションへと歩いていく。
ジェットコースターやメリーゴーランドなど1つのアトラクションを残して全てを制覇した僕達。
日も傾いていて、僕達の写ルンですのフィルムも残り1枚となった。
何回か使い切ろうと思ったけど、使い切ってしまったら奈央との思い出が切れてしまうみたいで怖かった。
それに気を取られていると奈央に声をかけられる。
「○○、観覧車行こ?」
「......うん」
「では......いってらっしゃーい。」
狭い空間に2人。
片側に2人座っているためおのずと距離も近くなる。
「○○......」
奈央が僕の方に頭を乗せてきた。
「疲れた?」
「うん、でも楽しかった。」
「そっか。」
無言の時間が少し続き、観覧車が頂上へと差し掛かったところで奈央の方を見た。
「なお。」
何も無い所からするのは恥ずかしかったし、ベタにはなってしまうけどこれが一番僕達のフィルムに残せるんじゃないかと思った。
「ん......」
一瞬のはずなのに、永遠にも感じた。
観覧車が下りに差し掛かっても僕達は写ルンですを取り出すことは無く、自分たちの記憶にお互いを刻み込んだ。
観覧車から降り、帰り道。
「少し遠回りしたいな。」
「私もそう思ってた......。」
奈央との思い出のフィルムを頭の中で再生しながら2人で歩く帰り道。
奈央の前では泣かないと決めていた決意が揺らぐほど、引き止めたい、行かないで欲しいという感情が出てきてしまう。
小さな公園を通り抜けようとしたところで、そんな僕の気持ちを察したかのように奈央は僕の正面にまわって抱きついてきた。
「なお......?」
「......」
謝るの禁止という僕の言葉を覚えていたからか、何も言わないでそっと頭を撫でてくる。
ぐっと堪えていたものが溢れ出し、涙が溢れてしまう。
「よしよし......」
そんな僕を奈央は慰めてくれた。
誰よりも辛いのは奈央のはずなのに。
僕は決心して奈央と目を合わせる。
「なお......僕たち、別れよう......」
「......うん。」
僕達はお互い震えた声でお互いの連絡先を消した。
お互いがお互いに依存してしまっても、今みたいには戻れなくて傷つけあってしまうから。
「......行こっか」
「うん......」
フィルムを重ね合わせるように繋がれた僕達の手。
僕の涙腺を破壊する言葉が奈央の口から零れる。
「だいすきだよ......○○......」
「僕だって......大好きだよ......」
2人して雨に打たれながらとうとう奈央の家にたどり着いた。
今日が終われば、明日は見送るだけ。
クラスメイトでも、彼女でもなくなる。
「じゃあ......またね......」
自分の手が咄嗟に奈央の手を取った。
「はな......」
離れたくない。そう言いかけては口を噤んだ。
「○○。」
奈央が僕の顔を捉える。
「ありがとう」
「......こちらこそ、ありがとう。」
「またね......!」
「うん、また!」
翌日、電車に乗った奈央と扉の前でお別れした。
動き出した電車を追いかけて走ったものの、到底追いつかない。
そこからは奈央のいない青春を味わうことになった。
なにか1つ抜け落ちたような感覚。
その感覚は大学生になっても抜けることは無かった。
そんな大学2年生を迎えた春のある日、彩から連絡が来た。
「同窓会、行く?」
真っ先に浮かぶのは奈央の事。
「行く。」
とだけ返事をしてその日は眠りについた。
同窓会の日になると、いつもより少しだけおしゃれをして家を出る。
「○○、いい事と悪い事どっちから聞きたい?」
道中に彩に言われたので
「悪い方」
と言った。
「悪い方は、同窓会は嘘ってこと。」
「は......?」
「んで、いい方は......」
彩は何事も無かったかのように話を続けようとるので止めた。
「ちょっ、ちょっと......!ほんとなの?」
「うん、ほんと。」
20歳になっても彩の幼い顔で言われると責める気になれない。
「それでいい方は?」
「まぁ、そんな焦んないでよ。」
笑顔でいう彩に少しムカついた。
「同窓会は無いけど、奈央にも同じ事言ってるの。」
「どういう意味か分かる?」
「......!」
僕はあの小さな公園に向かって走り出した。
なんとなく奈央が居る気がして。
「もう......2人とも変わんないなぁ。」
「はぁ......はぁ......」
公園に着いたけど、そこに奈央の姿は無かった。
なんとなくいる気がしたという第六感だったのにとてつもない喪失感に襲われる。
「......」
「だーれだっ。」
背後から聞こえたのは今1番聞きたかった人の声。
「......なお?」
「せいか~い」
「奈央......!」
後ろを振り向いてすぐに奈央を抱きしめた。
「ちょっ......久しぶりだから恥ずかしいよ......。」
「ご、ごめん......」
しっかりと奈央のことを見ると少ししか経ってないのに大人びていて可愛さと綺麗さを両立させている。
写ルンですをポケットから出し、シャッターを切ろうとした。
「○○、撮らないの?」
奈央からそう言われたが、撮ることをやめた。
「フィルムを使い切っちゃったら、奈央との思い出が切れちゃう気がして......」
奈央が驚いた顔で僕に問う。
「それって......告白......?」
「あ、えっと......そう受けとって貰っても構いません......」
そんなつもり無かったのに、告白みたいになってしまって舞っている桜のように頬を染める僕。
「私も○○との思い出、もっともっと作りたいな。」
「それって......」
「私も○○のこと......好き......離れても○○のことばっか考えちゃって......」
見た目は少し大人っぽくなっても、中身は変わらない奈央のままで安心したのはここだけの話。
「奈央、はいこれ。」
僕が差し出したのはピンク色の薔薇1輪。
「これは......?」
「改めて......」
「好きです、付き合ってください。」
「お願いします......!」
白のワンピースにピンクの薔薇が映えている。
「好きだよ、奈央。」
「私も○○のこと大好き......!」
2人の再会を桜が祝福するように花びらが舞った。
僕達の人生のフィルムを重ね合わせると浮かび上がる空白。
それを感じさせないくらい、長いフィルムにすればいい。
僕と奈央の物語は、まだまだ始まったばかりだ。
fin......
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