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とうとうマドンナ彼女との関係がバレました。
あつさを肌で感じる朝のグラウンド。
カラーコーンを1つ、また1つと躱していく。
最後のカラーコーンを躱して、シュートをゴールに突き刺した。
ボールを拾い直した瞬間、後ろから声をかけられた。
「わ......!」
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「......見えてたよ、なぎ。」
「もう......つまんないの」
自分の朝練が終わったのか、人がまだ来ない時間帯に彼女が向日葵の香りとともにやってきた。
夏服もとても似合っていて可愛らしい。
「ごめんって、許してよ」
お詫びの気持ちを込めてそっと頭を撫でると、嬉しさが隠せないのか少しにやにやしはじめた。
「しかたないなぁ......」
許してくれたみたいで俺から少し離れると、ぺたぺたと俺の体を触り始めた。
「なぎ......?」
「な、なんでもない......!」
そのままひらひらと手を振り教室へと向かっていった。
俺はカラーコーンを片付け、上機嫌のまま部室へと戻って行った。
・・・
昼休みに入り、俺は何故かひっそりと廊下を歩いていた。
「○○くーん、どこー?」
岡本が前のように一緒にご飯を食べようとしているのだろう。
それをはやめに勘づいた俺は息を殺して逃げていた。
そのまま近づいてくる気配に頭を悩ませていると、突然横の美術室の扉が開く。
「○○君、こっち!」
背に腹はかえられないので声の方へ逃げると、そのまま扉の鍵を閉めた。
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「ふぅ......助かったよ」
深呼吸をして顔を上げると、そこには一ノ瀬さんとな...井上さんが2人でご飯を食べていた。
井上さんの方を見ると、とても驚いた表情で必死に他人のフリをしようとしているのが分かる。
「えっと......なんで2人はここに?」
「和が作品区切り悪いからってちょっとだけ続きやってたら、先生がここ使ってていいよって」
「そうなんだ、俺もここにいていいかな?」
「いいよね、和!」
「う、うん......」
俺は2人が座る机の対面に座ってお弁当を広げた。
一ノ瀬さんも可愛くて同じ部活の人達からもかなり人気があるためか、少しばかり緊張してしまう。
それを井上さんに感じ取られたのか、凄い勢いで机の下で足を踏まれた。
「いっ......!」
「どうしたの?」
「な、なんでもないよ、あはは......」
普段はサバサバしてるように見えたり、ツンツンしてるように見えるけどちゃんと嫉妬もしてくるしそこが可愛らしい。
にやける気持ちを抑えていると、一ノ瀬さんから声をかけられた。
「姫奈ちゃん、凄いね」
「あはは......」
正直どう転んでも井上さんの前でこの話は得策じゃない。
机の下で俺の右足に足絡ませてきてるし。
見られたらどうするんだ、とは嫉妬してるのが嬉しくて言えなかった。
「○○君は好きな人とかいないの?」
隠れてイチャイチャしてるところに、一ノ瀬さんからの突然の右ストレート。
井上さんの方をチラッと見ると、面白そうにこちらを見ていた。
「なんでよ」
笑いながら誤魔化そうとすると、逃げられないように退路を塞がれる。
「○○君かっこいいし、気になるなぁ」
その言葉を聞いた瞬間、瞬時に俺の足にかかとが突き刺さった。
「いっっ......!」
「い......?」
「な、なんでもないよ」
和の方を見ると、凄い勢いで睨んできている。
あまりのオーラに凄みさえ感じた。
「い......って、もしかして和とか?」
笑いながら爆弾を投下する一ノ瀬さん。
こちらも少しだけ気持ちを零す。
「可愛いとは思うよ、みんな言ってるし」
「......」
真っ直ぐ和の方を見て言ったからか、思ったよりガチ照れされた。
「あらら......みくは邪魔みたいだね。先教室戻ってるね!」
そう言って教室へと戻ってしまった。
「ちょっと○○......!」
一ノ瀬さんが居なくなった後すぐに、和が席を立ってこちらに向かってきた。
「なに」
笑いながら言うと、そのまま正面からあたたかさを感じる。
「なに、我慢できなくなった?」
「......○○がわるいもん」
そう言うので頭を撫でてやると、少し抱きつく力が強くなった。
「甘えんぼめ」
「......うるさい」
すっかり気を抜いてしまって、イチャイチャモードに入る。
すると突然、美術室の扉が空いた。
「やっとしっぽ出してくれたね」
扉の方を見ると、ニヤニヤしている一ノ瀬さん。
俺たちは冷や汗を書きながらスっと離れて目を合わせた。
「......」
和の方を見ると、首を横に振っている。
俺もその意見に賛成し、一ノ瀬さんも含めて机に座り直した。
「その......俺たち......」
俺たちの口から伝えようとした瞬間、一ノ瀬さんのありえない言葉に遮られた。
「付き合ってるんだよね?知ってたよ。」
俺たちはまた目を合わせて驚きを隠せずにいた。
「最初に見たのは映画館、さっちゃんは気づいてなかったけどね」
まさかバレていたとは。
本当に驚きを隠せない。
「あとは今日の朝もかな、和に昨日好きな人にはボディタッチがいいよって言ったらすぐやるんだもん。可愛かったな~」
顔を真っ赤にして俯く和。
俺がやってたことも見られてると思うとかなり恥ずかしい。
「でもって、さっきまでのこと。和は結構嫉妬するタイプなんだね」
ずっとニヤニヤしてる一ノ瀬さんと顔が赤い俺たち。
とにかく、俺たちは一ノ瀬さんにお願いしなければならない。
「他の人には言わないで貰えると助かるんだけど......」
「いいけど、ひとつだけお願いがあるの」
ニヤニヤしながらのお願いなんて悪い予感しかしない。
和の方を見ると、不安そうに俺のワイシャツを引っ張っていた。
「ちゅーしてるとこ見たい!」
頭の中にははてながいっぱいで、一ノ瀬さんが何を言っているのか分からない。
「和、一ノ瀬さんって変な人なの......?」
「うん......」
ヒソヒソと2人で話していると、一ノ瀬さんがまくし立ててくる。
「はやく!見たい!」
1度深く深呼吸をして、和と対面する。
和も最初こそ戸惑いがあったものの、こちらを向いて少し背伸びをした。
「なぎ......いいの......?」
「恥ずかしいんだからはやくして......」
目を閉じる和の顎を持ち、そっと口付けする。
一ノ瀬さんからは悲鳴に近いような歓声が聞こえた。
「......」
少し潤んだ瞳で見つめてくる和から目が離せない。
あまりにも綺麗で思わず見とれてしまった。
「なんかいってよ......はずかしいじゃん......」
「ご、ごめん......」
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すると2人だけの空気感を突如引き裂く声。
「いいもの見せてもらっちゃった、じゃあおじゃま虫はいなくなりまーす!」
一ノ瀬さんは満足そうにスマホを握りしめてどこかへと歩いていった。
「ご、ごはん食べないと......!」
「そ、そうだね......!」
・・・
部活も終わり、自主練の時間。
いつも通り弓道場に着くと、和が矢を放っていた。
「......」
さっきのことがあったからか、口にしか目がいかない。
和にいることがバレてない間に心を落ち着かせねば。
そう思って正座していると、さっそくいることに気づかれた。
「さっきからこっち見てるのバレてるから」
「......集中してるから邪魔しちゃいけないかなって」
そう言うと和がこちらに向かって歩いてくる。
「練習はもういいの?」
「うん、感覚もいいしこのまま終わった方が明日に繋がりそう」
「そっか」
すると袴姿のままこちらに近づいて俺を立たせると、後ろから抱きついてきた。
「なぎ......?」
いつもは正面からなのに、少し珍しい。
「おーい、甘えんぼ。甘えたくなっちゃった?」
「その......○○の顔見たら恥ずかしくて......」
その発言にこちらまで恥ずかしくなって、訳の分からない提案をしてしまう。
「正面からハグしよーよ、和はどうせ埋もれるんだし」
すると和は離れてからムッとこちらを睨み、しっかりと顔を赤くしたところで隠れるように抱きついてきた。
「人にバレるって恥ずかしいね」
「......うん」
しばらく心地よい無言が続いた後、長い髪の中からひょこっと顔を出している耳が目に入る。
空気感を変えるためにいたずらしてやろいと思い、耳を人差し指で優しくなぞる。
「ひゃっ......!ばか!」
「いてっ......」
軽く突き飛ばされて尻もちをつくと、和はうっすら涙目でこちらを見ていた。
「もう......ぱか、いじわる。」
「ごめんって、ほら。ん。」
「ん......あったかい......」
和が○○の胸に頬を擦り付ける度に向日葵のような香りが弓道場に広がる。
顔を出し始めた月も、水晶のように輝いて2人の未来を照らしていた......