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彼女の誕生日をみんなでお祝いしました
夏を感じる7月後半。
「茉央の誕生日どうしようかな......」
茉央の誕生日が迫ってきていて、何をしようか考えていると当の本人から声をかけられた。
「何調べてるん?」
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「な、何も?」
「ふーん、まぁええわ。」
考えてもなかなかいい案が思い浮かばず、メンバーに連絡してみる。
すると、仕事の合間に話し合うこととなった。
事務所の空き部屋に入ると、咲月といろはが待っていた。
「あ、きたきた。」
「やっほー」
2人ともかなりリラックスしてるみたいで、ぐでっとしていた。
「その......彼女の誕生日ってどうしたらいいかわかんなくて......」
恐る恐る口を開くと、2人は声を揃えてこう言った。
「○○が考えて選んだものならなんでも嬉しいと思うよ」
少しアバウトな答えにちょっと悩んでしまう。
「サプライズは手伝うから、物は自分で選ぶんだよ?」
咲月はこういう所しっかりしてるので、とても助かる。
「うん、ありがとう。」
2人との話を終え、部屋から出たところで茉央とばったり会ってしまった。
「○○、そこで何してたん?」
「べ、別に何も......」
「ほんまに?」
「ほ、ほんとだから!」
俺は茉央から逃げるように仕事へと戻った。
家に帰ってからも茉央に出来るだけバレないようにネットを探したり、誤魔化したり。
7月27日にはサプライズは大方決まり、プレゼントを買いに行くだけとなった。
・・・
最近、明らかに○○が素っ気ない。
何を聞いても変な感じだし、茉央のことを避けてる気もする。
いつもは優しい○○からしたら考えられない。
他のメンバーとはコミュニケーションをよく取っているし、なんならいつもより多いくらい。
「なんかしてしもたかな......」
自分の行動を振り返ると、わがままや○○の優しさに甘えていたところが心に引っかかる。
○○も仕事で疲れているのに、それを考えずに甘えてしまっていたのかもしれない。
そんな自分が嫌になって、瞳から涙がこぼれた。
「嫌われちゃったんかな......」
誕生日前日。
目星をつけたプレゼントを買いに、仕事の合間に咲月と行く約束をしていた。
仕事前に咲月と会えたので、声をかけた。
「おはよ、休憩なのにごめんね」
「いいよ、その代わり手繋いで行こ?」
「行く時に暑くなかったらね」
こちらの事務仕事が終わり、スマホを確認すると咲月の方の仕事が押してることが分かった。
「入りずらいけど......一人で行くか......」
部屋を出て、通路の角を曲がると見知った顔が目に入る。
軽く会釈すると、その人はこちらに向かって歩いてきた。
「あ、中西さん」
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「○○君、おはよ」
あまり面と向かって話したことが無いので、少し緊張する。
「あ、そうだ。誕生日プレゼントありがとね」
「いえいえ、むしろなかなかお話出来なくてすいません。」
「ううん、それよりどっかに行くの?」
中西さんに誕生日プレゼントを買いに行くことを説明すると、だんだん口角が上がり始めた。
「ふーん、お姉さんが一緒に行ってあげよっか?」
柔らかい雰囲気とコテっと横に倒された首、自然と上目遣いになる身長。
「お、お願いします......」
事務所を出て、2人で電車に揺られること数分。
俺たちはお目当てのお店に着いた。
「何かいけないことしてるみたいだね?」
中西さんの言葉に、心臓が跳ねる。
「そう思わないようにしてたのに、そう思っちゃうのでやめてください。」
茉央へのプレゼントを無事に買い、事務所へ戻るとまだ時間があったので中西さんと話すことになった。
「明日、よろしくお願いしますね。」
「うん、みんな集まれるなんてびっくりだよ」
「ふぅ......」
明日のことを考えると少し緊張する。
深呼吸をすると、横からの視線を感じた。
「緊張してるの?」
「はい、彼女の誕生日なんてはじめてなので......」
「私に出来ることがあったら言ってね、○○君より幾分かお姉さんだから」
「あ、じゃあ1つお願いがあります」
緊張を和らげるため、半分は自分が見たいということもあり普段は言いづらいお願いをしてみる。
「この前のミュージカルの時の内股やってくださいよ」
少し半笑いでお願いすると、キメ顔で中西さんは応えてくれた。
「あっはっはっ」
「もう、なまいき.....!」
・・・
誕生日当日の朝、隣で眠る茉央を起こし、朝ごはんを食べる前に外へと散歩に連れ出した。
「○○......その......」
「ついてきて。」
何故かよそよそしい茉央の手を引いて、カフェへと歩く。
汗の出る前に数分でカフェにたどり着いた。
カフェには目をつくオシロイバナが置いてあって、その日の誕生花を置いてある。
「カフェオレ1つお願いします。茉央は?」
「私もカフェオレでお願いします。」
どう考えてもよそよそしいというか、目を合わせてくれない。
「茉央、どうしたの?」
「その......ごめんな......?」
誕生日の朝に何も言わなかったからか。
はたまたなにか悪い事をしたか。
頭の中であらゆる可能性を考える。
「もしかして......中西さんとお出かけしたこと......?」
「なんやそれ、知らんねんけど......やっぱりそうなんや......」
もう頭の中にはハテナがいっぱいで訳が分からなくなった。
「どういうこと?」
「茉央のこと......嫌いになったん......?」
ぽろぽろと涙を流しながら言ってくる茉央に、申し訳なさを感じる。
「最近素っ気ないし......隠し事されるし......」
「茉央。」
俺は茉央の目をしっかり捉えて周りの視線を確認し、茉央の唇を奪った。
「そ、外やのに......」
先程とは打って変わって頬を染める茉央。
それに畳み掛けるように俺は思いを伝える。
「不安にさせてたよね、ごめん。でも茉央が1番なのはこれまでもこれからも変わんないから。」
「うん......まおもごめんな......?」
到着したカフェオレを飲みながら、心地よい時間を過ごす。
ゆったり話せることも久しぶりなので、進捗状況などを話して改めて茉央の凄さを感じた。
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「こうやってる時間が幸せでええな」
茉央がそう言った瞬間に、俺のスマホが震えた。
「茉央、そろそろ帰らない?」
「ええけど......もうちょっといたいなぁ......なんて......」
「また来ればいいよ、今日は特別な日なんだから。」
茉央は頭にハテナを浮かべているようで、誕生日を忘れるなんてあるか?と少し笑いそうになった。
玄関に着くと、茉央にバレないように連絡を送り準備が整った。
「茉央、開けて。」
「え、怖いねんけど......」
茉央が恐る恐る扉を開けると、10個のクラッカーが鳴り響いた。
「茉央!誕生日おめでとー!!!」
「え......びっくりした......!」
5期生10人が集まって、みんなで茉央を祝う。
たまたまスケジュールが空いて、声をかけたらみんな快く集まってくれた。
そんなみんなの優しさには感謝しかない。
「まお......嬉しい......みんなありがと......!」
「ほら、はやく食べよ!」
咲月といろはに手を引かれて、茉央は輪の中に連れていかれた。
俺はその画を写真に収めて、プレゼントを部屋から取ってきた。
みんなが作ってくれたご飯を食べて、梨やみかんなどの入ったフルーツタルトを食べてゲームをして。
明らかに収集がつかないくらいうるさくなったり、5期生の雰囲気の素晴らしさを改めて感じた。
俺のこともちゃんと輪の中に入れてくれて、一緒に楽しむことが出来た。
「じゃあそろそろ......」
そう言ってみんなが荷物を取り出した。
「茉央、改めてお誕生日おめでとう!!」
「わぁ~!ありがと!!」
みんなが一斉にプレゼントを渡し、1つずつ丁寧に茉央は受けとっていく。
俺はプレゼントを出しそびれたので、いったん見守ることに。
「みんなほんまにありがとう......茉央もう泣いてまうわ......」
「まだ一人残ってるでしょ?」
ニヤニヤしながら咲月がこちらを指さしてきて、一斉に視線が集まる。
「○○......」
俺は綺麗に包まれた箱取り出し、茉央にプレゼントした。
「開けてもええ?」
「いいよ」
茉央が包装を綺麗に剥がし、箱を開けるとそこには指輪が入っていた。
「これ......指輪......」
指輪を見た瞬間、茉央の顔が赤くなり固まった。
「あれ、嫌だった......?」
そう聞くと首を横にブンブン振り違うことを体全体で表してくる。
「結婚ってこと......?」
赤い顔で俯きながら聞く茉央に、思わずびっくりした。
「そ、それはまた今度でだから!今回は普通にプレゼントです......」
「そ、そっか......また今度......」
嬉しそうに指輪を左手の薬指に自然とつける茉央。
周りからは黄色い歓声が上がる。
「誓いのキスはー?」
美空が大声で言い出すと、みんなが口を揃えてキスを求めてくる。
「キース!キース!」
「ちょ、ちょっと!」
茉央の方を見ると、目をつぶってだんだん近づいてくる。
もうやるしかないかと心を決めて、茉央の唇を奪った。
「きゃー!!!」
黄色い歓声と、恥ずかしがるふたり。
はじめて祝う彼女の誕生日は黄色い声援に包まれて、世界中のどこよりも幸せな日になっていった......
キスの動画が5期生の中で出回るのは、また別のお話。
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To be continued......