見出し画像

サンダルウッド(白檀)について


先日開催した、香道×アロマテラピーのレッスン。

香りはサンダルウッドをテーマにしました。サンダルウッドと白檀は、呼び名は違いますが、同じビャクダン科の常緑高木のことです。お香や香木として使う場合は、白檀と呼び、アロマテラピーなどで使うエッセンシャルオイルをサンダルウッドと言ったりします。日本人に馴染みのある、高貴な香りです。日本の香り文化については、少し前に書いたnoteがあるので、興味がある方はこちらを読んでみてください。


サンダルウッドの歴史はとても長く、日本の香り文化が始まった6世紀ごろよりも遥かに昔です。世界ではいにしえから、植物とその香りは儀式や医療、美容や癒しなどに使われてきました。紀元前3000年頃、古代エジプトでは、神事に香りが欠かせませんでした。主に宗教儀式で香りが使われ、神殿では香りのある植物が焚かれ、その芳しい煙(香煙)が天に上り、煙を通して神々と繋がれる、魂が天に導かれると信じ、祈りを捧げていました。

古代エジプトでは、 日の出・正午・日没にそれぞれ1日3回、違う香りが焚かれていました。
朝はフランキンセンス・昼はミルラ・夜はキフィとういうブレンドされた香りが使われていました。今でも馴染みのあるものだらけですね。


薫香には代表的なものだと、ミルラ(没薬)やフランキンセンス(乳香)などが使われ、それ以外の用途では、クレオパトラの愛したローズやミント、もちろんサンダルウッドも使われてきました。旧約聖書の中にも度々、香木や香料の話は登場します。サンダルウッドはシバの女王がソロモン王に献上したものとして、記載があります。王族など、身分の高い人々だけが使うことができるものだったのが良く分かります。

神秘的です!

香水を表す「Perfume」はラテン語のPer(通しての意)と、Fumum(煙)に由来しています。なので「香り」というのは、とても神秘的で、スピリチュアルな使われ方もします。浄化の意味を持ったり、身体に作用するだけでなく、私たちの心や魂にまで働きかける、というような側面から、1つ1つの香りや植物の特性によって意味を持ち、使われることが昨今でもあります。ギリシャ神話の中でも、エッセンシャルオイルとして使われている植物の話が、出てきます。


冥界王ハデスを誘惑した妖精メンタが、正妻ペルセポネ妃の怒りで 、ペパーミントに変身させられた話はギリシャ神話の中でも有名です。なぜペパーミントだったかとうと、実がなく、身体を冷やして妊娠できない・ 道端で踏まれる雑草(愛人)などの意味があるからだそう。ペパーミントの冷却作用と妊娠中は使用を避けるべきという注意事項とも繋がっていきます。昔の人は怖いです。ひどすぎるし怖すぎます。笑


女神さまの名前をもじったものが、植物の学名になっていたりして面白いので、これについてはまた次回、書きたいと思います。

サンダルウッドの産地として1番有名なのは、インドです。特にマイソール産のものは香りがとっても良いです。インドでも古代エジプトと同じく、宗教儀式でサンダルウッドを含む香木が、使われてきました。仏教やヒンドゥー教の寺院で焚かれ、死者を来世に運ぶとして用いられてきました。私もインドへ行った時、バラナシのガンジス川のほとりで、サンダルウッドを混ぜた薪を使い死体を燃やしている光景を目にしたのを憶えています。

インドのガンジス川で死体を燃やしている様子。

紀元前3000年頃のインドやスリランカでは「アーユルヴェーダ」が誕生し、その中でもサンダルウッドは使われてきました。アーユルヴェーダとは「Ayus(生命)」と「Veda(科学)」を組み合わせた造語で「生命科学」という意味があります。医学だけでなく、宇宙観・自然観を説く哲学でもあり、病気の患部だけを治すことを目的としていません。原理が西洋医学とは異なり、ホリスティックで、予防医学的な使われ方をするので、アロマテラピーと同じです。アーユルヴェーダでは、サンダルウッドの木をすり潰し、ペースト状にしたものを身体に塗ったりします。美肌や火傷、しみなどに作用するそうです。

白檀を粉砕してペースト状にしたもの。肌にもとても良いです。

その後、9世紀ごろに蒸留器が発明され、エッセンシャルオイルが徐々に抽出できるようになり、20世紀なってから、アロマテラピーとして使われるようになりました。そんな歴史の長いサンダルウッドは、今は絶滅危惧種です。香りも成分も良いため、無計画に伐採をし続けた結果、入手が困難になっています。これはサンダルウッドに限った問題ではなく、環境破壊が問題となっている現代において、植物の力を取り入れた生活をしていくには、今よりももっと長い目で、自然を大切にしていくというのが重要だと思います。サンダルウッドは、成長するまでに30~50年ほどかかりますので、どれたけ希少なものか、お分かりいただけるかと思います。対策としてオーストラリア産のサンダルウッドを使うことが増えていますが、香りが全然違う、というのは香り界では有名な話です。

収油率も低く、高級なエッセンシャルオイルです。


ベースノートなので、香り立ちは強くありませんが、ウッディで優しくまろやかで、少し爽やかさも感じる香りです。主な主成分はサンタロールというものです。これには、殺菌作用、利尿作用の薬効成分があると言われ、むくみの改善。薬用にも広く利用され、気分の薬として胸のつかえをとり、爽快感を与え、精神的なストレスや不安症などをやわらげます。

このサンタロールの凄いところは、化学合成できないということです。その為、他の植物や香料にはサンタロールがありません。サンダルウッドでしか味わえない深いリラクゼーション作用があるため、人気なんですよね。

サンダルウッドは男性フェロモンを感じる香り、とも言われています。男性の汗に含まれている成分と似た香りの成分が含まれているので、女性にとっては催淫作用があります。男性がつけていると、好きなってしまうかもしれないらしです。香料のホワイトムスクと混ぜると、「男性向けモテ香水」の出来上がりです。私の尊敬する恩師のN先生曰く、昔アメリカでサンダルウッドとホワイトムスクを混ぜた香水が発売され、女性がホイホイついて行ってしまう為、発売中止になったのだとか。(事実らしいです。気になります!笑)


先生は何故か私に、毎回この件について「実験してきてよ」と頼むので、心の中で笑ってしまいます。私にとっては、そんな思い出深い会話を思い出させてくれる香りでもあります。私は、サンダルウッドにはベチバーや、ローズなどを合わせるのが好きです。女性にも男性にも好かれる、良い香りです。

ヨガや瞑想にもお勧めで、心が落ち着く香りです。夜眠れない時にもぜひ、使ってみてください。

長くなりましたが、サンダルウッドについて、お読み頂き有難うございました♪そして、今回のレッスンにお越し下さった皆様、有難うございました!


いいなと思ったら応援しよう!