私の旅のこだわり。北海道を歩く。
今年20年ぶりにふるさと札幌に帰ってきた。
不思議なもので、幼い頃、日常的に目にしていた光景のひとつひとつが、いとおしくて懐かしくて、いまだに胸の奥が締め付けられる。
懐かしの札幌の奥座敷定山渓に行った時もそうであった。
私の旅のこだわり。特に私の現在の北海道旅行に対するこだわりと言えるかもしれないが、
「子供の頃に足を運んだ場所に、大人になってから1人でもう一回行ってみる!」ということであろう。
昔は親に連れられて行った場所で、当時は、もうちょっと買い物できるところに行きたいなとか、派手な遊園地に行きたいなとかそんな子供らしい感想を抱いていたような場所でも、
大人になって、改めて自分の力で1人で行ってみると新鮮な驚きの数々。懐かしさもありながらも、まるで初めての場所であるかのような感慨がそこにあるのだ。
昔ながらの温泉地である定山渓に岩戸観音堂なる御堂がある事は知らなかった。
実はこの観音堂、地元民ですら見落としていたと言う人もいる位である。
小樽と定山渓をつなぐ道路工事の安全祈願などを兼ねて設けられた御堂であるが、
実はその御堂の奥のほうに30メートル続く謎のトンネルがあると言うことをご存知であろうか。
長いトンネルは暗く静かで圧倒されるが三十三体の観音様が祀られており、荘厳な気持ちになる。
薄暗いトンネルをどんどん進むと探検隊気分に。
ワクワクする。
一体一体仏像の顔が違う。ほっこりする幼さすらある。
このトンネルはすべて手彫り。人力のすさまじさを感じざるをえない。
定山渓温泉はかつては修学旅行などでは定番中の定番スポットであった。しかしやはり東日本大震災やコロナなどで何度か打撃を受け、そのたんびに立ち上がっている。
現在では愛犬と泊まれる宿なども増えており、またインバウンドの需要も目を見張るものがあるそうである。
そのような進化を遂げながらも、全く変わらない古くからの温泉街の良さというものがそこにはある。
私はまず懐かしさが先に来たが、このような観音堂があることに幼い頃は全く気づくことがなかった。
大人になって紆余曲折を経験し、また書物をいっぱい読んで様々な知識を得た今の自分にとっては
一つ一つの光景が非常に新鮮で新しい。
この観音堂のトンネルを歩くだけでもとんでもない冒険心に目覚めてしまう。
北海道に限らない。皆さんぜひ子供の頃にかつて行っていた場所に1人で足を運んでみて欲しい。
1人と言うのが味噌である。
誰かと行くと、食べ物であったり会話であったり、場合によっては人の噂話などに心が持っていかれてしまう可能性もある。
どうぞ1人で心を落ち着かせて、その場所そのものの空気感を思いっきり吸ってみて欲しい。
これが私の旅のこだわりである。