1週間で覚えるメディカルハーブ30種 その5
おはようございます。アロマテラピーと手しごとのカノワです。
フィトオーセンティックプロダクトの仕事をしながらアロマやハーブの記事を書いたり、アロマクラフトの提案をしたりしています。
こちらのチャンネルでは、「香りのある暮らしをもっと楽しく」をテーマに、暮らしに取り入れやすいアロマ・ハーブクラフトや石けん作りなど、様々なアイデアを提案しています。
さて、本日もハーバルセラピストで学ぶ、30種類のメディカルハーブをご紹介していきたいと思います。
本日の1つ目は
「バレリアン」になります。
バレリアンの学名はValeriana officinalis(バレリアナ・オフィキナリス)
和名はセイヨウカノコソウとなります。漢字で書くと、西洋鹿の子草、となります。鹿の子模様の鹿の子ですね。
使用部位は根部で、
科名はスイカズラ科の植物です。以前はオミナエシ科となっていたので
文献によってはオミナエシ科となっているものもあると思います。
属名のValerianaは、この植物の原産地であるローマの地方名が語源となっているそうです。
また種小名のofficinalisは「薬用の」が語源でしたよね。
ヒポクラテスの時代から「神様がくれた睡眠薬」として、不眠に用いられ、現在でも世界各地で神経性の睡眠障害に役立てられています。
パッションフラワーが中途覚醒に使用されることが多いのに対し、バレリアンは入眠困難に使用されることが多いです。
バレリアンの根の強烈な匂いは、イソ吉草酸です。人間には強烈な悪臭に感じられますが、猫にとっては大好きな匂いなのだそうです。
また就寝前だけでなく、不安や緊張を和らげる目的で日中に使用することも可能です。また、筋肉の緊張やこりをほぐす働きがあるので、緊張による腹痛や胃痛の緩和に役立ちます。
バレリアンはティーやサプリメントともに、アロマバスやマッサージやオイルトリートメントなどアロマ精油との併用も効果的といわれています。
おさらいになります。
■バレリアンはスイカズラ科の植物で
学名はValeriana officinalis、和名はセイヨウカノコソウ
使用部位は根部です。
主要な成分は、精油の酢酸ボルニルなど、バレボトリエイト。
バレボトリエイトは3種の複合体になります。
となります。
作用については、鎮静・鎮痙
となります。
適用症は、不眠、神経障害
となります。
安全性はクラス1、相互作用はクラスBで、
鎮静作用を増強させることが推測されるため、
バルビツレート、ベンゾジアゼビンおよび他の鎮静剤の利用者には
注意が必要となっています。
バレリアンのキーワードをおさえておきます。
安眠ハーブ。強力な精神安定ハーブ。イソ吉草酸で「臭い」ハーブ。
相互作用がクラスBで、
鎮静作用の増強から、鎮静剤の利用者には
注意が必要となっています。
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本日の2つ目は
「フェンネル」になります。
学名は、Foeniculum vulgare(フォエニクルム・ウルガレ)
和名はウイキョウです。
セリ科の植物で使用部位は果実、となります。
属名のFoeniculum(フォエニクルム)は干し草のFonum(フェヌム)というラテン語に由来します。
また種小名のvulgare(ウルガレ)はラテン語の「vulgāris」に由来しています。この語は「一般的な」「大衆的な」という意味を持ちます。
植物学や動物学においては、「vulgare」はしばしば、ある種の特定の植物や動物が一般的に広く分布していることを示すために使用されるそうです。
茴香、は草かんむりに回るの「回」という字に香るという字を書きますが、これは、5世紀ごろの中国、陶弘景は「本草経集註」に臭くなりかけた肉に、少し入れて煮ると臭気が消え、また臭くなったお味噌に粉末にしたフェンネルを加えると香りがよくなるとされ、そのため、香りを戻すものの意味で「茴香」といわれたそうです。
さて、そんなフェンネルですが、古くから料理用ハーブとしても用いられてきました。魚料理と相性がいいので、「魚のハーブ」とも呼ばれているそうです。消化を促すとともに駆風作用によって鼓腸(胃や腸内に空気がたまる状態)や疝痛(腹部や骨盤部に生じる強い痛み)を改善します。
さらに鎮痙作用と去痰作用をもつため咳などにも用いられます。いずれの場合もフェンネルの甘い風味を生かして、フェンネルシロップやフェンネルハニーとして小児向けなどにも活用することが可能です。
また、女性ホルモンとにたエストロゲン様作用により、母乳の分泌をうながしたり、生理痛を和らげてくれる効果もあるそうです。
おさらいになります。
■フェンネルはセリ科の植物で
学名はFoeniculum vulgare、和名はウイキョウ。
使用部位は果実となります。
主要な成分は、
精油のトランスアネトール、フェンコン、エストラゴール、
脂肪酸のリノール酸、フラボノイドのクエルセチン・ケンフェロール、
フラボノイド配糖体のルチン、となります。
クエルセチンの配糖体がルチン、でしたね。
また、トランスアネトールはホルモン様作用、エストラゴールは肝毒性があることも注意点です。
作用については、消化亢進、駆風、去痰となります。
適用症は鼓腸、疝痛、上気道カタルとなります。上気道カタルは、上気道(鼻、のど、喉など)の炎症や粘膜の腫れのことです。
安全性はクラス1、相互作用はクラスAとなっています。
フェンネルのキーワードをおさえておきます。
芳香性健胃ハーブ。おなかと呼吸器のハーブ。セリ科で精油のトランスアネトール、フェンコン、エストラゴール。鼓腸、疝痛、上気道カタル
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3つ目のハーブは
「クランベリー」になります。
クランベリーの学名は Vaccinium macrocarpon(ワッキニクム・マクロカルボン)。和名はオオミノツルコケモモ。
ツツジ科の植物で、使用部位は果実です。
属名のVaccinium(ワッキニクム)はラテン語の牡牛、vacca(ワッカ)の形容詞、vaccinus(こげ茶の牛色の)が語源といわれています。
また種小名のmacrocarpon(マクロカルボン)ですが、こちらはギリシア語の「大きい」を意味するmakros(マクロス)、同じくギリシア語の「果実」を意味するkarpos(カルポス)で、大きな果実がなることからきているとのことです。
クランベリーの赤い果実を絞ったジュースは、古くから膀胱炎や尿道炎などの泌尿器系の感染症や、尿路結石、ビタミンC欠乏症、赤痢などの予防に用いられてきました。この作用のメカニズムは、クランベリージュースを飲むことによって、成分に含まれるキナ酸が腸管で吸収され、肝臓で代謝されて馬尿酸と呼ばれる物質になり、尿として排出されます。尿が酸性化するため、大腸菌が減ることと、菌が泌尿器の粘膜に付着することを防ぐことによるものと考えられています。
高齢者の尿臭の軽減の目的などにも活用されています。
クランベリーの色素成分であるアントシアニンには眼精疲労にも有効で、アルブチンの成分には美白効果として、シミやそばかすの予防にも有効です。
アメリカでは主に、ジュースに用いられ、商業用として栽培されていますが、砂糖が大量に点火されている場合が多いので、メディカルハーブとしてはパウダー剤やカプセル剤で使用します。
おさらいになります。
■クランベリーはコケモモ科の植物で
学名はVaccinum macrocarpon、和名はオオミノツルコケモモ。
使用部位は果実です。
主要な成分は、植物酸のキナ酸、クエン酸、リンゴ酸、プロアントシアニジン、果糖、ビタミンCとなります。植物酸があるのですっぱいのと、プロアントシアニジンが赤い色の色素成分でしたね。
作用については、尿の酸性化や尿路への細菌の付着抑制、となります。
適用症は、膀胱炎、尿道炎、尿臭となります。
安全性はクラス1、相互作用はクラスAとなっています。
クランベリーのキーワードをおさえておきます。
泌尿器科ハーブ。キナ酸で尿を酸性化。プロアントシアニジンが赤色に。植物酸がすっぱさに。
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本日の4つ目は
「スギナ」になります。
学名は Equisetum arvense(エクイセトゥム・アルウェンセ)
和名はホーステール。
トクサ科の植物で、使用部位は葉茎です。
学名もややこしいし、ホーステール、もあまり耳慣れないかもしれないですが、スギナの胞子茎はつくし、なんですね。
こう話すとぐっと親近感がわいてきませんか。
実はスギナをお庭に植えられているご家庭もよく見かけます。
さて、そんなスギナですが、学名、ややこしいですよね。。
属名のEquisetum、エクイセトゥム、は、ラテン語の馬を意味するequus(エクウス)、ごわごわした毛を意味するseta(セタ)の合成語を語源とします。細い枝が段々にたくさん輪生するスギナの形を馬の毛に例えられたと言われます。これを知ると別名のホーステールがなるほど、と覚えられそうですよね。
また種小名のarvenseですが、こちらは、耕地を意味するarva、そして〜ensisで産地を指すそうなので、つまり「可耕地の」耕すことができる土地の、からきています。
スギナは、中国の最も有名な薬草辞典「本草綱目」にも薬草として記載されています。
古くから緩和な利尿剤として、また、外傷後の浮腫に用いられてきました。
膀胱炎や尿道炎などの泌尿器系の感染症や前立腺肥大症の予防や治療に活用されてきました。
最大の特徴はケイ素を最も多く含むこと。ケイ素はカルシウムとともに骨や歯、それに髪や爪などを健やかに保つはたらきをしています。コラーゲンやエラスチンなどの結合組織の強化にも役立ち、髪の毛に潤いをあたえて、爪のトラブル改善、体内で骨や軟骨、葉の発育などに役立ちます。外用では、スギナ風呂や湿布などを抗炎症剤として用い、リウマチや通風、関節炎、局所の止血、治りにくい傷の回復を促します。
近年では骨密度を高めるのにも効果的とされているスギナですが、
線のようなシンプルな形が、人間の骨格を連想させることから、スギナをよく煮出して内用・外用することで骨・腱・靭帯を強化できるという特徴表示もあります。
おさらいになります。
■スギナはトクサ科の植物で
学名はEquisetum arvense、和名はホーステール
使用部位は葉茎部です。
主要な成分は、ミネラル(主にケイ素)、フラボノイドのクエルセチン、アルカロイドのパルストリンとなります。
作用については、ケイ素からの利尿作用、またケイ素の補給
となります。
適用症は、泌尿器系の感染症、浮腫、外用で難治性の外傷
となります。
安全性はクラス2dで腎臓疾患のある人への使用禁止、相互作用はクラスAとなっています。
スギナのキーワードをおさえておきます。
ケイ素を含む利尿ハーブ。泌尿器系の感染症や浮腫に。フラボノイドのクエルセチンとアルカロイドのパルストリン。クラス2dで腎臓疾患のある人は使用禁止。
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本日の5つ目は
「パッションフラワー」になります。
学名はPassiflora incarnata(パッシフロラ・インカルナタ)
和名はチャボトケイソウで、
トケイソウ科の植物で、使用部位は地上部の全草です。
属名のPassiflora(パッシフロラ)はラテン語のpatior(パティオル)、受ける、と
florus(フロールス)花の、との合成語からきています。
キリストが受けた受難の象徴があるとされる花、なのですね。
また種小名のincarnata(インカルナタ)は、ラテン語の肉にする、という意の「incarno」を語源としています。
日本ではパッションフラワーの花の形を時計に見立てて、「トケイソウ」と名付けられましたが
ヨーロッパでは、この花の中央部がキリストが処刑された際に被っていた冠に似ていることから「キリストの受難の花」と呼ばれました。
「植物性の精神安定剤(トランキライザー)」として知られ、精神的な緊張やそれに伴って起きる頭痛、高血圧、精神不安、不安の改善に役立ちます。作用が穏やかであるため、小児や老人、更年期の女性などへも安心して用いることができます。
パッションフラワーは、そこまで味がおいしくないので、シングルでの使用より、リンデンやレモンバーム、バレリアン、ジャーマンカモミールなどの鎮静系のハーブとのブレンドが効果的です。またホーソンとのブレンドでは、穏やかな強心剤として使用されます。精神的な疲労が重なって眠れないとき、緊張が続いた日の就寝前のティーとして、穏やかな香りを楽しみながらの飲用がおすすめです。
先ほどのバレリアンの時にもご紹介しましたが、バレリアンが入眠困難に用いられるのに対し、パッションフラワーは中途覚醒に用いられることが多いです。
■パッションフラワーはトケイソウ科の植物で
学名はPassiflora incarnata、和名はチャボトケイソウ。
使用部位は地上部の全草です。
主要な成分は、フラボノイドのアピゲニン、フラボノイド配糖体のビテキシン、アルカロイドのハルマン・ハルモールとなります。
となります。
作用については、中枢系の鎮静・鎮痙となります。
アルカロイドのハルマン・ハルモールからの中枢系、フラボノイドのアピゲニン、フラボノイド配糖体のビテキシンからの鎮静・鎮痙となりますね。
適用症は、精神不安・神経症・不眠・高血圧となります。
安全性はクラス1、相互作用はクラスAとなっています。
パッションフラワーのキーワードをおさえておきます。
植物性の精神安定剤(トランキライザー)。アルカロイドハーブ。
アルカロイドのハルマン、ハルモールで脳の中からリラックス。
フラボノイドのアピゲニン、フラボノイド配糖体のビテキシンからの鎮静・鎮痙。
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以上、メディカルハーブ5種をご紹介いたしました。
今回は、
安眠ハーブ、イソ吉草酸のバレリアン、
アルカロイドハーブ・中枢系の鎮静・鎮痙のパッションフラワー。
セリ科のお腹と呼吸器ハーブのフェンネル
泌尿器科ハーブのクランベリーは植物酸のキナ酸、プロアントシアニジンの赤い色素。
ケイ素の利尿ハーブ、スギナでした。
今回は、それぞれ別の科名で作用もそれぞれでしたが
いずれも個性のあるハーブでしたね。
今回の5つのハーブでクラス指定があるものは、
バレリアン相互作用がクラスBで、鎮静作用の増強から、鎮静剤の利用者には注意が必要。
スギナの安全性がクラス2dで腎臓疾患のある人への使用禁止の2点でした。
学名も覚えにくいものもありましたが
何度も聞いて、覚えてもらえると嬉しいです。
それでは、今日もよい1日を♪
参考文献
ハーバルセラピストテキスト(JAMHA)
ハーバルセラピスト認定試験 対策問題集(BABジャパン)
ハーブ学名語源辞典(東京等出版)