アーマード・コア ナインブレイカーにおけるFCS性能
今回はPS2用タイトルのアーマード・コアシリーズより「アーマード・コア
ナインブレイカー」(以下、ACNB)におけるFCSパーツの性能を書いていこうと思います。
ちなみにN系と一括りにされる「アーマード・コア ネクサス」および「アーマード・コア ラストレイヴン」でのデータ採取は行っていないので、そちらで活用したい場合はあくまで参考程度に留めておいてください。
武装タイプの組み合わせによる各FCS性能
アーマード・コア(以下、AC)のアセンブルを行う上で、武装のロックサイトとロック距離を決定するパーツが「FCS」と呼ばれるものです。
一般的にロックオンサイトの広さを表す「サイトタイプ」と呼ばれるものは武装側に依存し「広角」「標準」「特殊」「遠距離」の全4種で、最終的なロックサイトの広さとロック可能距離は「FCSとサイトタイプ」の組み合わせで決定されます。
今回は組み合わせによって変化する「FCSサイズ」「FCSサイズの面積」
「最大ロック距離」のデータを掲載しています。
・FCSサイズ
以上のパーツ類を用いることで、全14種類となる
各サイト角条件を作り出し撮影したものを掲載しています。
・FCSサイズ面積
撮影した画像より、サイト角のラインを基準にピクセル数を測定して縦:横の数値をもとに面積を大まかに算出しています。
大まかにというのもACのFCSサイト角は完全な四角ではなく四隅が欠けた
多角形状のため、数値については四角形と捉えた計算を行っています。
なお「FUGEN」「KOKUH」「CR-F73H」「MONJU」の4種は縦長、横長
形状のため、他のパーツとの単純比較にはなりませんが参考値として掲載
しています。
・最大ロック距離
以上の通り、各サイトタイプ及び装備箇所より「最大ロック距離」をもつ
武装類を抜き出し「FCSサイズ」でも行った全14種類の条件下で測定を行っています。
なお「最大ロック距離」は、水平状態と高低差がある状態で数値が大きく
変動し簡単ながら図解すると
この様に具体的な実例「図A」と関係を簡潔に示した「図B」の二つを持って
説明されます。
簡単に言ってしまえば、水平時と高低差時のデータをもとに図形を描くと
ほぼ二等辺三角形の形が成り立ち、高低差がある状態での最大射程は水平時
の√2倍となり、ほぼ1.4倍の数値が得られる形となります。
つまり今回の例で説明すると水平時の最大ロックオン距離が「距離:300」である場合、高低差がある状態では1.4倍の「距離:424」という距離まで
ロックオン可能になります。
さらに言えば、ここで発生するロックオン距離延長はFCS、武装双方の最大射程を超えてロックオンも可能となっていますが、FCS側はともかく武装の場合は表記されてる最大射程=攻撃判定の消失地点でもあるので、限界を超えた距離から攻撃できる訳ではないことに注意が必要です。
幾つかあいまいな書き方をしましたが、その理由は内部処理の数値と実際に
ゲーム内で表記される数値に違いがあり、小数点以下の切り捨て及び四捨五入が行わるため、計算値と実測値でズレが発生するためです。
そのため例として内部で「100.4」と「100.5」という数値が発生した場合
前者は小数点以下の切り捨てで「100」と表記されますが、後者は四捨五入で「101」と表記されます。
FCSパラメータ(パーツリスト順)
MF01-MUREX
MF02-VOLUITE
CR-F69
MF03-VOLUTE2
FUGEN
KOKUH
MF04-COWRY
MIROKU
MF05-LIMPET
CR-F73H
CR-F75D
CR-F82D2
CR-F91DSN
MONJU
FCSパラメータのタイプ別比較
さて、先にパーツリスト順でFCS性能を個別に掲載しましたが今度は
FCSタイプの組み合わせ=武装の組み合わせを固定した状態で各FCSごとに
どのような性能差があるか比較をしていきます。
客観的にデータ比較が出来るよう、測定データからサイト面積と最大ロック距離をグラフ化して比較したものを掲載しています。
・広角サイトタイプ
・標準サイトタイプ
・特殊サイトタイプ
・遠距離サイトタイプ
・広角x広角サイトタイプ
・広角x標準サイトタイプ
・広角x特殊サイトタイプ
・広角x遠距離サイトタイプ
・標準x標準サイトタイプ
・標準x特殊サイトタイプ
・標準x遠距離サイトタイプ
・特殊x特殊サイトタイプ
・特殊x遠距離サイトタイプ
・遠距離x遠距離サイトタイプ
・CR-WA69MG(武器腕マシンガン)使用時の追加検証
手持ち武装での広角タイプ最大の射程を持っているのは、マシンガンタイプ「CR-WH79M2 射程距離:380」となっていますが、武器腕カテゴリで見ると同じくマシンガンタイプ「CR-WA69MG 射程距離:385」が広角タイプ内最大の射程を持っていることが分かりましたので追加検証しました。
検証に使用したFCSは「広角サイトタイプ」で数値がカンストしていた
・MF02-VOLUTE
・KOKUH
・CR-F73H
・CR-F75D
・CR-F82D2
・CR-F91DSN
・MONJU
以上、7種のパーツに対して測定を行っています。
FCSパラメータの考察
さて、今回は「FCSサイトサイズ」と「最大ロック距離」に焦点を当てて
測定したデータを元にFCSパーツの性能を紹介してきました。
上で示した画像は初期パーツでもある「MF01-MUREX」のパラメータですが
この中で今回得られたデータを元に以下の
・ロック可能最大or平均距離
・サイト並列能力
について、いくつか考察をしたいと思います。
・ロック可能最大or平均距離
一見するとこのパラメータは「武装側の最大射程」を数値分引き出せると
思いがちですが、実際には各サイトタイプごとに限界値が設定されてるのが
測定データから見て取れるかと思います。
また最大射程の数値について疑問を持たれたかもしれませんが、例えば
MF01-MUREXを例に出すと「最大ロック可能距離:555」のはずが最も距離を引き出せる「CR-WR73RS」装備時の射程が「距離:554」となってますが
これは水平状態で出せる最大射程が一律「表記されたデータより-1」された
数値となっているためで、他のFCSでも同じ現象が確認できます。
「平均距離」については、シングルトリガー時(左手に銃器類を持たない)に
全4種のサイトタイプで出せる「最大ロック距離の平均」で、先の仕様と
同じく表記された数値より-1した値が実測値として出ます。
・最大ロック距離の算出
まずACNBにおけるロックオン距離決定のプロセスですが、参照されるデータが二つ存在しており
・FCS側のサイトタイプ別に設定された最大ロック距離
・武装側の射程距離
この内、数値の低い方を優先して採用されます。
更にダブルトリガー時はFCS内に設定された「サイト並列処理能力」の数値がFCS側のサイトタイプ別に設定された最大ロック距離に作用して上記のプロセスで最終的なロック距離が決定されます。
「サイト並列処理能力」は表記された数値を%に変換して計算に使用し
例えば「サイト並列処理能力:80」のFCSがあった場合、適応されると
サイトタイプ別の最大ロック距離が80%の値になるということになります。
ロック距離の決定プロセスとして上記の画像を例に説明します。
条件は下記の通りとなっており
・FCS:MONJU 最大ロック可能距離:535 サイト並列処理能力:83
・武装:CR-WH79M2 サイトタイプ:広角 射程距離:380
シングルトリガー時は先に述べたように表記された値より-1された値が実測値となるので、武装の射程距離である379(380)が発揮できています。
さて、ダブルトリガー時は「ロック距離:365」となっていますが先のシングルトリガーでの結果を基準にそのまま「サイト並列処理能力」を当てはめてしまうと
379 * 0.83 = 314.57
という計算結果になってしまい、この事から単純にシングルトリガー基準や武装の射程距離に「サイト並列処理能力」が作用しているわけではないことが見て取れるかと思います。
そこで、ダブルトリガーでの結果をもとに逆算を行うと
365 / 0.83 = 439.76
という結果が得られ、この結果をもとにロック距離決定のプロセスをシミュレートしていくと
・シングルトリガー時
FCS側の設定値:439.76 武装側の射程距離:379
・ダブルトリガー時
FCS側の設定値:439.76 * 0.83 = 365 武装側の射程距離:379
この様な条件となり、シングルトリガー時はFCS側>武装側の関係が成り立つので武装側基準のロック距離が採用され、ダブルトリガー時はFCS側<武装側の関係が成り立つためFCS側基準のロック距離となり、武装側より少ないロック距離が採用されています。
・異なる射程の武装を組み合わせたロック距離
※2023.3.6に加筆修正
今度は異なる射程が適応される組み合わせの例としてFCSに「CR-F69」を
使用した際「CR-WR73RS」と「CR-WH79M2」による遠距離x広角サイトの場合におけるロック距離になります。
今回の要素を一つずつ抜き出していくと
・右手武装「CR-WR73RS」の射程距離:1190(1189)
・左手武装「CR-WH79M2」の射程距離:380(379)
・FCSの設定値(広角):209
・FCSの設定値(遠距離):405
・並列処理されたFCSの設定値(広角x遠距離):267
この様に5点の要素が組み合って最終的なロックオン距離が決定されますが
これがどう作用しているかというと
・右手側
武装の射程距離>FCS設定値(遠距離)>並列処理された設定値(広角x遠距離)
よって「並列処理されたFCS設定値(広角x遠距離)」が適応されている
・左手側
武装の射程距離>並列処理された設定値(広角x遠距離)>FCS設定値(広角)
よって「FCS設定値(広角)」が適応されている
という図式が成り立ちます。
今度は武装条件を変えず、FCSのみを「CR-F75D」に変更して同様に測定を行ってみます。
画像1の通り、右手武装「CR-WR73RS」は並列処理能力の影響を受けて「ロック距離:827」でロックオンが成立しますが、画像2、画像3の通り
左手武装「CR-WH79M2」の射程距離を満たす「ロック距離:379」で
ロックオンが成立しています。
このロック距離決定プロセスと要素を抜き出すと
・左手武装「CR-WH79M2」の射程距離:380(379)
・並列処理されたFCSの設定値(広角x遠距離):827
・FCSの設定値(広角):384~(FCS設定値を満たす武装がないため)
並列処理された設定値(広角x遠距離)>FCS設定値(広角)>武装の射程距離
という構図になるため「CR-F69」の時と違い、武装の射程距離基準でロックオン距離の決定が行われています。
最後にFCSを「CR-F75D」そのままに武装だけ両方ともハンドガンの
「CR-WH01HP」に変えたダブルトリガー構成にします。
「CR-WH01HP」は表記された性能だと「射程距離:254」なので、実測値だと「ロック距離:253」が最大射程となり、並列処理の影響を受けず武装側の射程距離基準でダブルトリガーが成立しています。
以上のことから、ACNBにおけるロック距離決定のメカニズムはシングルトリガーもダブルトリガーも同じルールが適応されており、そこには「FCS側のサイトタイプ別設定値」「武装側の射程距離」を基準にダブルトリガー時は「並列処理されたFCS側のサイトタイプ別設定値」も加味して最終的に
最も数値が少ない要素が採用されて決定に至ります。
・並列処理能力によるFCSサイズ面積
FCSサイズにおける「並列処理能力」の取り扱いは、ロックオン距離の時とは大きく違い、ダブルトリガー時に必ず適応される要素となります。
一例としてFCS「CR-F69」を用いて広角サイトによるシングルトリガー、ダブルトリガー時のサイト面積を表示させています。
実測によるピクセル換算での比率、面積は以下の通りになり
・広角サイト:685 x 814 = 557,590 [px]
・広角x広角サイト:602 x 710 = 427,420 [px]
「CR-F69」の「並列処理能力」は87であることから、サイト面積の計算は
同種のダブルトリガーなため、単純計算でシングルトリガー時の数値に
「並列処理能力」の値を%にして乗算すれば求められそうですが、実際には
( 685 * 814 ) * 0.87 = 485,103.3 [px]
となってしまい計算結果が合いませんが、これは計算方法が間違っており
正しくはx軸とy軸双方に並列処理の値を適応させねばならず、再計算すると
( 685 * 0.87 ) * ( 814 * 0.87 ) = 422,039.87 [px]
この様に近似値が求まり、x軸とy軸の値も比較するとほぼ数値通りに
減衰してるのが見て取れます。
今度は広角x特殊タイプで組み合わせた状態ですが、この場合は双方の
サイトタイプより、xy軸ごとに平均値を算出してから「並列処理能力」を
乗算することで近似値が求まります。
実測値
・広角サイト:685 x 814 = 557,590 [px]
・特殊サイト:459 x 561 = 257,499 [px]
・広角x特殊サイト:502 x 601 = 301,702 [px]
計算値
・x軸:( ( 685 + 459 ) / 2 ) * 0.87 = 497.64 [px]
・y軸:( ( 814 + 561 ) / 2 ) * 0.87 = 598.13 [px]
最後に
元々ACNBにおける、FCSサイトサイズのデータを作るのが目的だったものが
いつの間にかロックオン距離調査まで手が伸びてしまい、このような結果となりました。
さらには高低差によるロック距離延長の調査にまで至り、これ以上は収拾がつかなくなるため内容を元のサイトサイズとロックオン距離周りに絞ってデータ採取を行った結果ですが、それでもこの内容でありここまで見て頂いた方には感謝の念に堪えません。
今回のデータ公開に辺り、元々は自分の資料用に作成していたこともあり
第三者からみて客観的な比較がしやすいよう工夫を入れてみましたが如何だったでしょうか。
アーマードコアシリーズも10年目(2023.3.5現在)を迎える本年にシリーズ最新作がアナウンスされており、界隈も大いに活気づいていますが私も何らかの形でシリーズには関わっていきたいと思っています。
それでは( 'Θ')