アイドルの話をしよう③
1990年代半ばに何があったのか
さて、アイドル遍歴第3弾となりました。1990年代後半の話をする前に言っておかねばならんのは、1994年にTM NETWORKが解散(プロジェクト終了)したことです。
1993年頃から小室哲哉はプロデュースワーク中心の制作にシフトしていたのですが、TM終了と時を同じくしてtrf、篠原涼子、H Jungle with t、自身も参加したglobeと立て続けにヒットを飛ばすことになります。いわゆる「小室ファミリー」全盛期が訪れ、チャートを席巻し、アイドルと呼ばれる皆さんの存在感はさらに薄れていきます。
小室哲哉のプロデュースワークは一方で「アイドル再生工場」的な意味合いがなきにしもあらずですが、ここでは華原朋美や安室奈美恵はアイドルという範疇からは外して考えます。小室ファミリーではないものの安室奈美恵フォロワーとも言えるSPEEDも然り。
1990年代後半のアイドル
さあ、お待ちかね!ここでモーニング娘。が登場。時期としては1997年の後半あたりでしょうかね。本当に久しぶりに、リアルタイムでちゃんと曲を聴いたアイドルさんでした。皆さんご存知のように、『ASAYAN』(テレ東)という番組の「女性ロックボーカリストオーディション」で落選した5人組。密着ドキュメンタリー的な演出で、視聴者としてはもう応援せざるを得ないという方向に持っていかれてしまいました。私も毎週、楽しみに『ASAYAN』を見ていた記憶があります。
インディーズで手売りした『愛の種』(←つんくは関わっていない)も、メジャーデビュー曲となった『モーニングコーヒー』(←こちらはつんくプロデュース)も曲としては「ふーん」って感じだったんですけど、2ndシングル『サマーナイトタウン』で我々は"つんく"(このときまだ♂は付いてなかった)さんのとてつもないポテンシャルに気づくことになります。
最初に聴いたとき「ええっ!カッコええやん!?」と衝撃を受けましたね~。既発曲がどちらかというと可愛らしい感じだったので、いい意味で裏切られたというか、つんく只者じゃねえなと。(一応、補足しておくとこのとき、ほとんどの視聴者はつんくを「シャ乱Q」というバンドのボーカルの人としてしか認識してませんからね)
さらに3rdシングル『抱いて!HOLD ON ME』でオリコン1位と、メジャーデビューした年で一気にブレイクを果たすわけです。『ASAYAN』では曲がリリースされるたびに、オリコン速報を発表して盛り上げていましたねー。
2ndも3rdも、福田明日香と安部なつみを軸にしたツインボーカルという感じの構成が良いですね。特にこの曲は1番と2番の間がラップ調になったり、落ちサビに飯田圭織のセリフ(「ねぇ笑って?」)が挟まってたり、福田のシャウト(?)的なのが入ってたりしてるのがギミックとして効果的。久しくアイドルさんの曲を聴いていなかったせいもあったと思うんですが、アイドルの曲としては新しかったなぁという印象があります。
そんな「モー娘。」ですが、この後、ゴマキが加入して、7thシングル『LOVEマシーン』でミリオンを達成するわけです。さすがにみんなが知ってるこの曲はね、ここでは置いといて……。実は私の好きな曲は5thシングル『真夏の光線』(1999年5月リリース)です。
ひとつ前のシングルを最後に福田が脱退して、安部(なっち)一本かぶりっぽくなってます。なにげにコーラスワークも良い。この曲、歌詞も明るくて実に往年のアイドルっぽい曲なんですよ。ちょっと3枚目の彼とのドライブってシチュエーションは、松田聖子の『Rock'n Rouge』や中山美穂の『派手!!!』を想起させます。ていうか狙っているのではなかろうか。
それにMVも明るい日差しの中、なっちはもちろんのこと、メンバーみんなかわいく撮れているんですよねー。夏だ!野外だ!アイドルだ!って感じで(笑)。そういう意味でもちょっと外せない一曲です。
モー娘。の登場で「アイドル冬の時代」は終わりを告げたと言っても良いでしょう。というか、モー娘。が「新しいアイドル」の姿として認知されたという言い方もできるかもしれませんね。
もう一人、鈴木あみも忘れがたい。モー娘。と同じく『ASAYAN』の「ボーカリストオーディション・ファイナル」を勝ち抜いたことで、小室哲哉プロデュースでデビューすることとなります。時期的には1998年の半ばになりますが、この頃には少しづつ小室ファミリーは衰退期に入っていて、彼女はTKプロデュースで最後にヒットしたアイドルと言えるでしょう。
彼女をアイドルというカテゴリーに入れていいのかどうか、やや迷いましたが、デビューのいきさつ、マーケティング展開等を考慮すると、一応アイドルということでいいだろうと。
その後、所属事務所と揉めたりしたからか、楽曲の動画も色々と権利関係でひっかかっているらしく、当時の映像が引っ張ってこれない。シングルのスポットCM集でお茶をにごそうと思います(汗)。
どうでしょう?アイドル的な要素もじゅうぶん感じられませんかね?
例の「ボーカリストオーディション・ファイナル」は視聴者投票だったんですが、実は私、鈴木あみ(オーディション時は鈴木亜美)に一票を投じているんですよ。そんなこともあって、ちょっと無下にできないんですよね。個人的に好きなのは8thシングルの『OUR DAYS』です。TKバラードの切なさが出てますね。サブスクにも入っているので良かったらご一聴ください。
さて、最後に忘れちゃいかんのは広末涼子です。1996年にNTTドコモのポケベルのCMで見たときに「誰だ!?この子!?」ってなったのは、私だけじゃなかった(※)。あっという間にスターダムを駆け上がっていくのは、皆さんご存知の通り。何しろ、その無邪気な雰囲気のせいか、やたらと親近感があったんですよね。距離がとても近い感じ。翌97年にはCDデビューを果たします。
1stシングル『MajiでKoiする5秒前』の作詞・作曲は竹内まりや、2ndシングル『大スキ!』の作詞・作曲は岡本真夜、4thシングル『summer sunset』の作詞・作曲は広瀬香美と錚々たる作家陣。まあね、どれもいい曲なんですわ。しかしながら、あんまり熱心に聴いた覚えがないのは、ヒロスエの場合、恋の曲があまりに眩しくてちょっと引くっていうか……。分かります?陰キャ発言で申し訳ないですけど。親近感があるっていうのがかえっていけなかったのか、恋するエピソードが生々しくなっちゃうっていうのか……。どこらへんに感情を持って行っていいのか戸惑うんですなー。
そんなわけで、歌詞的に恋愛要素の少ない3rdシングルを引っ張ってきます。作詞・作曲は原由子です。
自転車に乗ってるだけで画になるっていうね。まあ、無双してた頃のヒロスエの雰囲気がよく分かりますね。これですよ、日常に溶け込んでる感じね。これにみんなやられちゃったんだなぁ。
映像は、理想の「広末涼子」をステージ上に夢想するヒロスエという感じなんでしょうかね。歌詞が本人に寄り添ってる感じがします。最後の「果てしない夢 追いかけて」が効いてる。
時期がちょうど今にピッタリということで、6thシングルも貼っときましょう。卒業ソングです。作詞・作曲は2ndに続いて岡本真夜。
ヒロスエも高校を卒業するという時期にリリース(1999年2月)。岡本が本人に取材して書かれた詞のようですね。まあ、芸能の仕事が大変なのは言うまでもないですが、デビューしてすぐにブレイクして色々と辛いことも多かったはずで、彼女のイメージとは少し違う弱さを抱えた年頃の女の子の心情が、等身大の彼女の姿を垣間見せておるようで良いですねー。
映像は全体的にそれほど凝った感じではないんですが、デビュー時よりも大人びたヒロスエを上手く撮ってますね。特に、靴紐を結んですっと前を見るカットに胸を射抜かれます。
ちなみに、ヒロスエはオリジナルアルバムも2枚出してますが、2枚とも作家陣が豪華で聴き応えがあります。機会がありましたら、そちらもぜひ。
とまあ、こんな感じで20世紀を終えていくんですなー。世紀末にアイドル復権という感じにはなった気がしましたね。2000年代前半もモー娘。の快進撃は続き、主にハロプロが引っ張る展開ではありますが。残念ながら私は、ハロプロの展開には乗り切れずに早々に離脱することになります……。その話はまた次回。
今回も長々とお付き合いいただきありがとうございました。ではでは!
※改めて思い返すと、ポケベルのCMで見る前年にクレアラシルのCMとか見てたな?(一時ものすごいCMウォッチャーだったんです……) 既に広末涼子に注目していたのでした。だから、ポケベルのCM見たときは「広末涼子キター!!」って思った、というのが正確な記憶でしたので補訂しておきます。
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