サハラマラソン挑戦記vol.8
@marathondessables
2023.4.26
〜OverNight熱中症〜
【4th stage(OverNight stage)】
■距離:90km 累積D+1,330m
★224位/20:16:56★
■3rd Stage後
レース後は何もなければ穏やかである。
淡々と洗濯とシャワーを浴び、昼を食べて横になる。
◆この日のお昼は @yama_messi_yuka のサハラ飯
大豆とトマトのカレーを食べた。
疲れた身体にスパイスの利いたカレーは最高に美味しかった。
他のテントメイトの帰りを待つ。
すると、そこに歓迎できない来客がやってきた。
サンドストーム(砂嵐)である。
レース前、初日の夜とやってきた彼らは、またしてもやってきた。
レース中は暑さを紛らわしてくれる風も、ゴール後のテントで受けるとひとたまりもない。
サングラスが無ければ目も開けられず、穴という穴に砂が入り、せっかくシャワーを浴びた身体も砂まみれになる。
終いにはテントが壊れ、周囲の砂や石を持ってきて直したりと、レース以外での疲労も蓄積されてしまう。
サハラ砂漠という環境の中で、快適に休める場所などどこにも無かった。
■4th Stage start
4日目のオーバーナイトステージは90kmで制限時間35時間と、通常のウルトラマラソンでは考えられない時間制限となっている。
そもそもサハラマラソンは制限時間に寛容なところがあり、ゴール地点の制限時間も、最終CPを制限時間内に出ていれば、多少過ぎてもOKといった具合だ。
これもこの大会の人気の一つでもあり、高い完走率を維持している秘訣でもあると思う。
このOverNight Stageも同じく、あるCPまで辿り着けば、そこで一晩寝て過ごしても完走できてしまう(OverNightの意味が違ってくるが)Stageなのである。
また、3rd Stageまでの上位50人は他のランナーよりも3時間遅れてスタートとなる。
日本人で上位50位となっていたのは尾藤さんただ1人だった。
僕はといえば、2nd Stageでのメンタルブレイクの結果、3rd Stageまでで67位とかで後一歩及ばずであった。
しかし、見方を変えれば3時間先にスタートできるということは、3時間以上タイム差が発生しなければ、先にゴールして @tomomi_challenger のゴールシーンを撮ることができるということである。
前日の3rd Stageで苦手を切り捨てて走ったことで、自分らしい走りに気付くことができた僕は、これまでより少しだけ晴れた気持ちでスタートラインに立っていた。
■CP1 11.5km
この日は、上位50人がいないこともあり、自分の近くで走っていた選手がより身近にいるように感じられた。
CP1までは、 @marioret @osverflow@albertjorquera @trijavito ベッキーとグループを組んで走った。
そこまで多く言葉を交わしたわけではなかったが、彼らと走るのはとても心地が良かった。
彼らの優しさと明るさには感謝をしてもしきれない。
¡Gracias!
■CP2 25km
CP2までも同様にグループで走っていたのだが、CP2直前にトイレのためグループを離れて先を急いだ。
その時、トイレへの焦りもあったのと、どう言って伝えるべきか迷った挙句、何も伝えられないままグループを抜けてしまった。
その結果、その後も グループとは少し距離を空けて走ることになり、言葉がうまく通じないことによる心の壁を感じて、その後一緒に走ることができなかった。
また、CP2を出てから、トイレの回数が増え、下していることに気付く。
走ろうとしても腹痛がそれを遮る。トイレに行く。
なかなか思うように前に進めなかった。
■CP3 36.4km
CP3を出たあたりで11時を過ぎ次第に日差しが強くなってきた。
これまでは最長36kmで、 CP3=ゴールの距離だったため、ここから先は暑さという意味で未体験の世界だった。
マーキングすら見づらいだだっ広いコースを走る。
すると、珍しく雲が太陽にかかる。
日差しが遮られる。
これを好機と走る。走る。
すると、辺りに大会車両が走り始める。
上位50人のトップ集団が横を走り去る。
大会10連覇をモラビティ兄弟とその刺客ヤチョウ
砂漠の上をまるで普段の道と変わらない速さで走っていく。
彼らにとってはこの環境が日常。
この暑さも、砂も当たり前の彼らには本当にただのマラソン大会なのかもしれない。
次のCPは48.7km
GARMINは既に49kmを超えていた。
合流したマリオたちとCPはどこだと、辺りを見渡しながら進んでいく。
GARMINが50kmを超えてようやくCPが見えてきた。
レースの半分を終えたが、本当の闘いはこれからだった。。
■CP4 48.7km
到着したのは14時過ぎ。
まだまだ暑い時間帯は続く。
休むか、進むか。
次のCP5までは14.6kmと大会1長いコースだ。
CPのテントに入り考える。
まだ走れる。
砂漠の暑い時間帯は長い。
ここでいくら休んでも、暑さは変わらないだろう。
それならば、歩いてでもゆっくりでも進んだ方が得策だと思った。
CPを出て200m。
失敗した。
暑すぎる。
身体も心も、なかなか辿りつかないCP4までの道のりで疲弊していた。
しかし砂漠の200mはもう既に引き返したくない距離。
ゆっくりでも進もう。そう思って進んだ。
普段のCPであれば、2,3km走ればCPまで残り10kmを切り、精神的にも楽になってくる。
しかし、14.6kmという距離は、なかなかそれを許さない。
いつまでも残り10km以上あると、その意識が離れず精神的に負担が強くなった。
時計は15:30を回った。このコースのいやらしいところは、長いだけでなく深い砂地であったことだ。
嫌で苦手で諦めてきたコース、しかし暑さから逃れることはできない。
次第にふらふらと蛇行しながら歩くようになり、低い草の小さな日陰ですら恋しく、倒れ込むように上半身だけでも…と草陰に入って休んだ。
さらに進むと、大きめの岩が重なった場所があり、その岩に沿うように横たわり、しばし日差しから逃れた。
後ろから何人か選手が通り過ぎ、声をかけてくれる。
I'm OK.と腕を上げながら応える。
すると、フランス人のマックスがそばに寄ってきてくれ、「何か必要なものはないか」と聞いてくれた。
彼に励まされ起こされて、歩みを進めてみる。
「ポジティブなことを考えろ、大切な人や仲間のことを思い出せ」と励ましてくれる。
涙が出そうになる。
でも、それよりも先に「暑さ」「辛さ」が追い越してやってくる。
とてもマックスのペースについていけなかった。
「ありがとう、先に行って」と伝える。
「ゴールで待ってる」とマックス。
このCP4〜5の間、何度もリタイアを考えた。
リタイアしたらゴールシーン撮れるんじゃないか?と謎の思考が働いていた。
それでも、ここでやめたら本当に何も残らない。出ただけでリタイアになった自分を想像したらゾッとした。
ずっと完走できなかったことを後悔して生き続けることになるだろう、とそう思った。
そして、完走するための再チャレンジをするだろう、とも。
そんな再チャレンジはゴメンだった。
ならば、走り切るしかない。
次のCPまで残り5km、現地の人の仮宿なのか民家のような建物が見えてきた。
リタイアしたくない思いとは裏腹に、その時点の僕はもう動けない身体になっていた。
倒れ込むように建物の影に身を寄せる。
ザックをおろし、靴と靴下を脱ぎ、身体に水をかけて冷やす。
頭がぼーっとする。
太陽を見るたびに嫌気がさす。
横になり身体を休める。
横になっている間、何人もの人に声をかけられる。
みんなとても優しい。
でも誰1人この民家の陰で休もうとしない。
みんなとても強い。
しばらくして、1人民家の陰にやって来た。
@tomomi_challenger だった。
色んな意味で驚いた。
3時間のスタート時間の差があったはずが、60km手前で追いつかれることになろうとは。
リタイアしてゴールシーンをとか考えていた自分が馬鹿馬鹿しくなった。
リタイアしても間に合わなかったかもしれない。
そんなことを思いながら、 @tomomi_challengerもハンガーノックになりかけていたらしく、少し休みを取り、食事の準備をして去っていった。
結局僕は、18時までそこで身体を休めることになった。
ようやく暮れかけてきた太陽を背に、進み始める。
休んだおかげか、多少は動けるようになっていた。📸④
■CP5 63.3km
完全に日が暮れた頃、ようやくCP5に着いた。
僕はここでもう少し休もうと、テントで横になった。
「19時40分か・・」
20時には起きようと思って、軽く目を瞑ったら次の瞬間には21時になっていた。
しかし、ここまでの自分の身体の状況を見て、必要な休息だったと言い聞かせた。
ここからは完全に夜パート。
ヘッドライトを頼りに進んでいく。
熱中症は治ったようだったが、いまだにお腹は下していた。
走りに調子が出てきたと思うと、お腹の調子が悪くなる。
ちぐはぐな身体に、振り回された。
■CP6 73km
ここまで来て、ようやく暑さが和らいだ。
すでに日付は0時を回っている。
ゴールまで残り17kmでもう1箇所CPがある。
気持ち的にはかなり楽になった。
■CP7 83.9km📸⑦
ここまで来ればゴールまでは約6km
長かった道のりもようやく終わりを迎える。
前半から熱中症までが濃かっただけに、それ以降は辛抱強く進むだけだった。
あまり何を考えて走っていたかもわからない。
無事にこのOverNight Stageを終える。それだけを考えていたのかもしれない。
ゴールしたのは夜中3時過ぎ。
Finishラインは煌々と照らされ、爆音が鳴り響いていた。
こんなに長い90kmは後にも先にもないだろう。
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