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サハラマラソン挑戦記vol.9

@marathondessables
2023.4.28
〜僕が走る理由②〜

【5th stage(Marathon stage)】
■距離:42.2km 累積D+560m
★25位/4:16:56★

■スタート前
MDSは全部で6stage7日間で行われる。
しかし、勝敗を決めるタイムは5thSTAGEまでの合計タイムで、
最終日の6thSTAGEはチャリティーステージと言って、勝敗には無関係のファンランだ。

つまり今日がレースの最終日、勝敗を決する最後のレースだ。

そして、この5thSTAGEも上位200位は他の選手よりも1時間遅くスタートする。
4thSTAGEの順位は200位を超えた僕だったが、トータルでは200位以内だったようで、後発組となった。

日本人でも後発組は複数人いて、先発隊を見送った後、準備に取り掛かった。📸③

サハラ用に買った @raidlight_japan のザックはすでに限界を迎えていて、ジッパーは崩壊して、閉めることができなくなっていた。
砂漠の砂を噛み過ぎたせいか、汗で濡れても洗うことすらできずにもろくなってしまったのか・・・。
安全ピンで最低限の口を閉める。📸④

改めてスタートゲートに向かう。
上位200人しかいないと言っても、最前列で並んでいると1,000人も200人もよくわからない。
それでも、レース最終日という緊張感がそこにはあった。

@tomomi_challenger にとっても同じく最終日だった。
彼女は前日の4thSTAGEまでで総合3位。
TOP1,2との差はかなりあるものの、ステージレースでは何が起こるかわからない。
それは最終日でも変わらない。
「今日はGoProを封印する」
2年前の大会同様に最終日はGoProでの撮影を止めて走ることに集中する。
表彰台、さらにその先の順位に向けて彼女も本気だった。

それを聞いて、この最終日に自分のできること、それは何か。
「追えるところまで、 @tomomi_challenger を追って、撮影すること」
それ以外になかった。

自信はなかった。
4thSTAGEまでの自分の走り、砂漠との相性、蓄積した疲労。
全てが最後まで追い撮りできない理由になり得た。

それでも、今日が最終日だった。
最後まで追い撮りすることを伝えることはできなかったが、心の中で誓った。
「自分のレースがどうなろうとも力尽きるまで追いかけよう」と。

■最後の号砲
最終日、TOP200人がスタートする。
自分にとって勝負は序盤だった。
どこまでこの足がもつかわからない、そんな状況で撮影をするには、元気なうちの序盤しかなかった。

右手にiPhone,左手にGoProを構えて�YouTube用、Instagram投稿用、リール用
少しでも素材を増やすために、前後左右と走り回った。

この先で追いかけられなくなったとしても、、そう思いながら
全力で追いかけ、撮影を続けた。

CP1手前から、先発組の日本人選手を見かけて声をかける。
お互いを励まし合う。

日本人以外の選手にもみなに声をかけて進んでいく。
声をかけ、かけてもらうことで元気がもらえる。
そうして少しずつ進んでいった。

■CP1 13.7km
CP1では、多くの日本人と会うことができた。
テントメイトの @rena_desert @ask.jam
みなから声をかけてもらうことでさらに、元気をもらう。

@tomomi_challenger のCP通過はとてつもなく早く、撮影して、水入れてとやっているとあっという間に置いていかれる。笑

それでも焦らず、追いかけていく。

その後も日本人はじめ各国の選手に声をかけながら追い撮りをしていく。
「気持ち良い」
サハラを走り続けて6日目にして初めて思った。

両手にカメラを構えて、選手を鼓舞しながら撮影をする。

もしかしたら、それは後発隊として、先発隊を追い抜きながら
声をかけるという精神的優位による気持ち良さもあったかもしれない。

それでも、砂漠を走って楽しいと感じられたのは、
この時の自分にとって、とても大きな変化だった。

■CP2 25.8km
CP2を出てからは、先発隊の姿もまばらになり、さらに深い砂地のコースが続いた。
自分にとって、このサハラで苦しむことになったきっかけでもある深い砂地も、
撮影の前では敵ではなかった。
むしろ「砂漠らしい絶好の撮影スポット」と平坦で何も無いだだっ広いコースよりも
撮影のしがいがあって、楽しかった。

目的意識の違いでこんなにも変わるのかと自分で自分に驚いていた。

そして、CP3手前で前をいく総合2位の女性の後ろ姿を捉える。

球磨川100mileやハセツネ30Kで見た、 @tomomi_challenger の真骨頂
「勝負所での爆発力」に火が点く音が聞こえた気がした。

当然、追い撮りのことなどお構いなし。

みるみる迫っていく。

あっという間に追いつき、追い越していく。
このSTAGE2位に浮上する。
僕はただそれについていく。

■CP3 34.9km
ここのCP通過は、他のどの選手よりも速いのでは無いかと
思わせるほどの高速で通過していき、あっという間に見えなくなっていった。

僕はもうほとんど限界が近づいていた。

むしろ「よくここまでついて来ることができた」と自分を褒めたいくらいだった。

総合2位の女性に追いつかれ、先を越される。

水を入れて、一息つく。
小さくだが辛うじて、 @tomomi_challenger は見えていた。
選択肢は一つしかなかった。
心を決めてCPを出る。

まずは、総合2位の女性に追いつく。

後ろを着かれないようにと、加速して引き離す。

残り、6km辺りで追いつく。

CP3以降、ほとんど砂利のような砂道でそれほど走りづらいコースではなかった。
それでも @tomomi_challenger には2位浮上のための加速で疲労が見えていた。

■Finish
「ゴールシーンを撮影する」そのためにはただ追い撮りしているだけではダメだった。
ゴールを先に通過して、ゴールの先からゴールのシーンを撮影する。
残り1km、最後の加速をする。

こんなスピードがまだ自分の中に残っていたのかと、
これまでのレースでの走りが恥ずかしくなった。
ずっと、こんな調子で走り続けられたら良かったのに。

それは今だから言えることで、レース初日の自分には届かなかった。

でも、今この瞬間に @tomomi_challenger と共に走り、撮影し、ゴールが見えている。

最後の最後、ようやく役目を果たすことができる
と全力で走りながら目には涙が溜まっていた。

自分のゴールもそこそこにGoProを構える。
そこには、 Finish直前の @tomomi が迫っていた。

自分のゴールはどうでも良かった。
この6日間のレースでいろんなことがあり過ぎて、
結果よりもこの経験に価値がある、そう思っていた。

@tomom はゴール後、僕に
「本当にありがとう」
そう言ってくれた。

最後の最後まで役目を果たせなかった僕に
そう声をかけてくれた。

僕にはそれが嬉しく、そして悔しく
その場にいた誰よりも大きな声をあげて泣いた。

そして、そのシーンが @tomomi_challenger よりも良い感じに
大会公式アカウントのリールで取り上げられた。(なんか、ゴメンナサイ笑)

■MDSを終えて
1.世界が広がった。
それは、単純に初のヨーロッパ・アフリカ滞在という経験を通して、広く感じていた世界を身近に感じられるようになった。
そして、それは場所というよりも世界、海外の人との繋がりを持つことで世界を身近に感じられるのだと思った。
また、レースにおいてもステージレースという新しいジャンルの経験は、これからのレースを迎えるにあたって主にメンタル面で生きてくると思った(成長してれば笑)。

2.自分を知った。
自分が何に対して頑張ることができて、力を発揮できるのか、それを知ることができた良い機会だった。
走り始めたきっかけは、トライアスロンでの5kmのランがキツ過ぎたことだったが笑、レースに対する自分への目標を立てて走ること、それはとても大切なことだ。
でも、自分にとって最も走って良かったと思える瞬間は、誰かのために走り、その誰かにその走りを記録として届けることなのだと思った。

登山を始めた時も、その記録を形に残してみんなで共有する、それが僕の楽しみだった。

走ることは数字の記録でしか残らないことが多い。
でもその数字には、その人の頑張りや苦しみ、そして喜び、たくさんの思いが詰まっている。
そして、それが大会であればその走るコースには、運営やコースディレクター、ボランティア、たくさんの方の思いが詰まっている。

僕が走りながら撮影するのは、写真では残せない臨場感や雰囲気を少しでもリアルに届けたいと思うからだ。

今回、 @tomomi_challenger のYouTubeで、今大会の動画の編集を担当した。
僕がレース中に撮影できたのは最終日だけだったが、
それでも、その記録を形に残して、6/20現在50万回を超える回数、再生してもらっている。
ほとんど編集しただけとはいえ、多くの人に届けることができて、また「元気をもらった」など前向きなコメントがたくさん来ていることは本当に嬉しい。

自分の動画で「誰かを幸せに」なんて大それたことは思っていない。
僕は単純に撮った人の思い出に形として残ればそれで良い。
(最近そうはいかなくなっているけれど、、笑)

人は何かに残さなければあっという間に忘れてしまう。
こうして、挑戦記として残しているのもそのためかもしれない。
(いや、こんな長い文章は後で振り返ることはないだろう笑)

映像は思い出を掘り起こす一番簡単な方法だと思う、だから僕は動画を撮る。

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