知床の原生林、スノーシューを履いて
知床の原生林をスノーシュー履いてのんびり歩いてみた。
去年は森の木の実などの食料が少なく、争奪戦がくり広げられていたのだそうな。森にはそういう周期があるそうで、実が多くみのる年と、みのらない年がある。
種をまいて子孫を残したい樹木にとって、自分だけが種をまいても動物に全て食べられてしまう。ならば、周りの多様な木々と同じ年に大量に種をまけばよいという戦略だろうと思う。
だが、そうとう苦いのだろう。
そんなことに構わず種をまく木もあった。
スノーシューを履いていると体が雪に埋もれない。
だから数メートル積もった雪の上を歩くことができる。
なので、森を、春や夏とは違う視点の高さから見ることができた。
そして、木々をなでる風の音も近い。
私が歩いているとき、風は時によって吹いたり止んだりした。
風で木が揺れる音が森の奥から近づいてきた。
なにかとてつもなく大きなものが近づいてきて、通り過ぎて行った。
面白いもんでして、近づいてくる風の全体像はつかめるのに、遠ざかる風でわかるのは自分の風下方向のことだけだった。
地面から吹きあがり、木々から落ちる粉雪によって視界は真っ白で、私は森に入るやいなや早速歓迎を受けた。
知床の原生林はかなり陽気な気質かもしれない。
場所によっては風が吹きっぱなし止みっぱなしであったりした。
風が強い場所では木が育てず、雪も風に流されるため草原になっていた。
現地の人いわく、冬が短くなっている、のだそうな。
「若い人は、じきに氷河期が来るから気にする必要はないって言う。」と嘆いていた。
私も、「数万年という単位で考えると”氷河期が来る”は正しい。だが、防ぎたいのは今後数十年で起こる大量絶滅だ。」
たぶん、これからは見るのも難しい冬の森の景色だった。
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