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ネオンの瞳
その人の瞳は煌めくネオンであった。夜の暗闇に街の騒々しさが目覚める時でも、その瞳が街の景色に溶けてしまうことはなかった。まるで街が引き立て役で、その人こそが主役であるかのように。
ガキの頃の記憶だ。街がまだ輝かしい夢の舞台であり、煌めく光に包まれていた頃。瓦礫の山と落伍者だけが取り残される前。
今にすれば、あの光は誘蛾灯であったのだと思う。アホなガキを誘い込み、碌でもない奴らが食い物にする。そのための光だ。そして俺はそういう碌でもない奴らを始末する仕事に就いていた。殺しなんかやってなんの夢が叶うのか、過去の自分に問いただしたいものだ。
「それで、話は受けてくれますか?」
感傷の原因が口を開いた。
アタッシュケースを持った、アンドロイドロボット。容姿はネオンの瞳の持ち主に酷似しているがその両眼は一般的なアンドロイドに用いられるものと大差ない。
「つまりお前はネオンの瞳の場所を知っている。そしてその瞳には重要な意味がある、と」
アンドロイドは無表情で答える。
「そのとおりですが、繰り返す必要がありますか?」
「あるんだ、俺にはな」
今さらそんな物を見つけてどうなるのかとは思うが、こいつが心底ムカつくことを除けば報酬も十分だ。
「まあ色々細かいことは気になるが…依頼は受ける。それで?目的地は?」
「あなたに依頼を持ちかけてるんです。大体わかるでしょう?」
"事故"によって街が壊れたあの日、中心部であった塔から俺だけがただ一人生きて帰った。
「塔か。ご存知の通り、アレに近づくほど予測不能な事態が起こる。急にアスファルトに沈んで死んだやつもいれば、幽霊に取り憑かれて死んだやつもいる。生きて往復できる保証はない。遺書は書いとけよ」
「えぇ、あなたが見殺しにした。と書いておきます。」
「本当に見殺しにするべきかどうか迷ってきたよ。」
俺は地図を広げると手頃な異常が頻発するポイントにマークを付けた。
【続く】