人類の数だけ希望に生きよ(完成させないストーリー)
以前、私は、作品にこそしなかったものの、ある転生もののストーリーを考えた。
『人は平等に出来ている』
『だから生きなさい』
そんな神の声がして、暗闇は眩い光とともに晴れてゆく。
私は、神の腕の中にいた。
私を抱いた神を、人は崇め、跪(ひざまず)いている。
神は教えてくれた。
『人類の数だけ、人は転生する。他の者の心と体を転々とし、何度も他人としての人生を歩み、最後のひとりまで生き抜くことができた者は、神となる』
「その時、あなたはどうなるのですか?」
私の質問に、神は苦笑した。
『……神とは人生を全て終えた者のこと。新たなる神が生まれた後、前代の神には幸福が訪れる』
「幸福……」
それが、どのような幸福なのかと尋ねる前に、私の意識は、物心ついた少女になっていた。
……と言うストーリーだ。
主人公は少女として生まれ、あらゆる人生を歩み切ると、少年として生を終える。
再び目覚めると、女神になっており、その腕の中には、幸せそうに微笑む赤子がいた。
赤子は男の子で、その男の子こそが、前代の神というお話。
前代の神にとっての幸福とは、同じ苦しみを知り、同じ幸福を求めた者と、家族と共に生きることだった。
女神になった主人公は、震えるような幸福に、赤子となった前代の神を、壊れそうなほど抱きしめ、しゃがみこむ。
声にならない愛おしさを胸に抱き、女神として初めて抱いた感情は、「どんなに苦しくても生きられた」ことへの喜びと、前世で離ればなれになった恋人を想う気持ちだった。
愛するべき人とは、ひとりではない。
生きていくために、ひとりではいられない。
感じたことのない苦しみを理解するのは難しい。
だけど、感じたからこそ、臆病にもなった。
だから、すべての者を愛そう。
そして、その初めの人は、この腕の中の神様だと。
ふたりの微笑みで、このストーリーはハッピーエンドでした。
この作品には思い入れがありますが、あえてイメージを壊さないために、小説にはしません。
だけど、もしこの言葉たちだけでも感想をくださる方がいらっしゃいましたら、宜しくお願いします。