たわいもない僕らの日常
「ねぇ本当に私でいいの?」
ふとそんなことを聞いてみた。
「そんなこと聞かないでも分かるでしょ」
君は目を逸らしてそう言った。
「ねぇ。どうして僕のことがそんなに好きなの?」
君は唐突に尋ねた。
「あなたがあなただからだよ」
私はまっすぐに目を見て答えた。
こんな何でもない日に唐突に始まる会話が好きだ。
聞かなくても分かるようなことを聞いてみたい日があるらしい。僕らには。
「お酒買ったらグラスがもらえるんだって。
思わず2つ買っちゃったよ」
涙の絵文字付きで送られてきた通知に、開く前から幸せが溢れ出す。
「今日のおつまみ、お寿司買っちゃった
割引だったしいいよね」
画面越しに見えないはずのはにかんだ顔が見えた気がして、何だか少しほっこりとした。
お揃いの冷えたグラスの中で、静かに溶ける氷が音を立てる。
君の好きな愛の詩が優しく2人の距離を彩る。
ふと目があって、愛おしくなって、それを隠しきれない顔を見た君がケタケタと幸せそうに君が笑う。
少し小さなダイニングテーブルの向こう側が、今夜は少しだけいじらしくなった。
1人じゃ広い1LDKの部屋が、今では愛で満たされている。
これが、僕らの何でもない日常。
そして今日も夜が開ける。
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