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続く不安 1
一旦おかしくなっていた親子関係も少しずつ修復して来たが、主人は違うところで一人苦しんでいた。再就職先では理想と現実の違いに苦しみ、自分の思うようなスタイルで仕事を出来ない事がストレスになっていたようで、生活の為に仕事に嫌々行くという毎日を送っていたようだ。そんな彼の気持ちに気付いていても、
「お仕事頑張って」
と笑顔で送り出す事した出来ないでいた。
「会社・・・行きたくないな」
こんな言葉を今まで一度も彼の口から聞いた事はなかったが、そんな彼に優しい言葉も掛けず、聞き流す事しか出来ない日々を過ごした。
彼が会社の健康診断で再検査通知を受けたのは、転職して1年後の冬で、再検査項目は大腸だった。早く検査に行くように彼に言っても、
「わかったわかった」
と言うばかりで、私の言う事を全く聞かない。主人の実家に連絡し、検査を受けるようにすすめてほしいとお願いする事で、漸く彼が再検査をしたのは3か月後だった。
「たかが、内視鏡の大腸検査」そんな風に口では言いながらも、検査当日の主人は落ち着かない様子なので私も付き添い、検査後の説明も一緒に受ける事にした。検査結果は、ポリープが数個あるようで説明を受け画像を見せてもらった。
「1つ大きいのがあるので、入院して取る事にしましょう」
と言われ、少し動揺しているように見えた。
1泊2日で大腸ポリープ切除の手術を受ける事になった当日、偶然にも同じ頃、実家の父も同じ大腸ポリープ切除手術をしていた。母と同じような気持ちで無事終わり、何もないことを願いながら待っていたのだろう。無事終了し、元気な顔で病室に戻ってきた主人の顔を見て、ここ数年で随分年齢を重ねたように感じた。彼が帰り際に、
「ありがとう」
と言ってくれた言葉は、ここ数年の色んな思いからくれた言葉のように思えた。お互いの存在を認め合い、彼に1番言ってほしかった言葉だったのかもしれない。健康が取り柄の彼が入院する事になり、彼の中でも何か少し変わってきているように感じる日になった。
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