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ONE PIECEはバトル漫画ではなかった
わたしは余暇をお家で過ごす、プロ並みのテクニックを持っている。…大きく出てすみません、何十巻にも渡る漫画の一気読みです。ゴールデンウィークなどの大型連休は願ってもない大大大チャンスだ。
単行本派のわたしは、普段は新刊とその前巻を発売日の度にちょっとずつ読み返すのが限度だ。おそらく本誌派の方々でも、通しで読む回数は少ないんじゃないか。
でも超大作って当初から起承転結が練りに練られていて、キャラクターや作品の個性を形作る、大作たらしめる何かがあって。じっくり読み返してこそ骨格がわかったりする。一旦読んで終わりなんて失礼だ。
(全然関係ないけど、電話口で「失礼ですが対応者のあなたのお名前を教えて…」って言ってくる人多いんですが全然失礼じゃないよね。むしろ相手から個人情報聞き出しながら名乗りもしなかったわたしの方が失礼だわっていつも思う)
今年のゴールデンウィークは、もう20年くらい少年ジャンプの看板を張り続けるあの有名作、ONE PIECEを読み返してきた。ONE PIECEって貯めて読むと本来の面白さが際立つよね。
とはいえ、HUNTER×HUNTER派(そんな派閥あるのか?)のわたしには、ONE PIECEは苦手要素が強かった。ルフィは考えなしで突っ込んで行くし、敵との戦いは基本ゴリ押しだし、島で出会う登場人物たちはどうぶつの森かよっていう口癖マンだしヒロインとばっか出会うし、たまには初期の宝箱マンみたいなオッサンの手助けもしてほしいわ…おっと失礼、これを機に、そんな苦手要素を少しでも受け入れることができたんですよ!
というわけで、以下ウォーターセブン編まで読み返した感想。
戦闘は一貫して決闘スタイル
ゴリ押しな戦闘が苦手だと先述したが、安直な感想だったなと思う。ONE PIECEの登場人物は、漢気がマックスまで振り切った海賊たちだ。決して押せば勝てると思っている訳ではなくて、連携技とか、後続に引き継ぐとかいう概念がないのだ。チーム戦は7vs7には絶対ならず、1vs1 ×7で行うのだ。麦わらたちの敵がいつも倫理にもとる奴らばかりでつい悪役だと思ってしまうが、そもそも海賊なのだからむしろ麦わらの一味含めた全員が悪役で、その上での信念やプライドの戦いなのだ。そう思うとしっくりきた。
(お陰で犬夜叉の無料一気読みで、かごめが横から瘴気払ったりするの見て「卑怯者!」と思いかけてしまったけど、そうじゃない。笑)
弱いんじゃない、戦闘員じゃないんだ
麦わらの一味は、ルフィが海賊になりたくて、ルフィが惚れ込んだ、価値観を共有できる人たちをより集めて構成されている。目的自体が海賊なのはルフィだけで、あとのメンバーはそれは手段にしか過ぎない。役割も別々だから仲良い一方でお互い不可侵だし、生き抜きさえできれば全員が強くある義務もない。サンジが強いので勘違いしてしまうが、強いのはあくまで付加価値なのだ。わたし修行シーンが大好きなので弱いメンバーにも研鑽を求めてしまうんですが、そういう契約じゃなかったんだよ。
ルフィという男
ルフィが無鉄砲な行動ばかりするのにイライラするのがONE PIECE。常識の思考回路では王になれないんだから仕方ない。…しかしそれも読み手の事情だったすまないONE PIECE。彼は必要なときは自分を省みる。アラバスタ編では同じ先導する者として彼なりにビビの判断を尊重していたし、時に学んでいた。ゴーイングメリー号の寿命を突きつけられた時は、大人の判断を下すことを覚えた。
ルフィにはモノローグが付かない。気持ちと行動が常にリンクしてるからだと思ってたけど、ああ見えて無口な男なだけだった。ルフィは他人の過去に興味を持たない。今、相手がどういう人間で、どういう関係が築けるかを大事にしてるからだ。思慮がないんじゃない。王たる気質は自称や周りの買いかぶりじゃなくて、懐の大きさにこんなにも現れているじゃないか。
トップダウンの組織
とはいえ、実際船員は無鉄砲に困ってはいる。しなくて良い争いに巻き込まれるし。まぁでもそれも冒険に繋がってるんだ、そんなルフィに惚れて付いてきているんだし。…トップダウンの組織にはそんなリスクが付きまとう。現実の中途半端な会社のトップと違うのは、船員に意思があれば尊重して、きちんと満足させる落とし所を与えて、自分が死にかけるリスクを負ってまで船員を守り抜くところ。ああ、自己啓発本で先人のミソばかり集めてないで、こういう物語から己に必要なものを読み取ってくれ!!
もしルフィが居なくなったらこの一味は解散するんだろうなと思う。船長のもとでこそ役割があるが、船長がいないならばそもそも各々目的は違うし、推進力がなくなる。
あとはまぁ、どうぶつの森かよとか、ジェンダーかよとか、伏線モロ出しかよとかは思うけど、単に好みじゃないだけではなくて、面白く読む能力と視点が読み手に欠けていたんだなぁと反省した。
これからはバトル漫画ではなく、漢気アドベンチャーとして読むことにした。あ〜、世界政府とかラフテルとか諸々諸々この先が気になりますなぁ〜。