不妊症#10 「お腹に、おるんか?」 家族との付き合い方
いつも稚拙なnoteを読んでくださり、ありがとうございます。もう少し書いて現在に追いついたら、一旦通常のnoteに戻って、オタクの話や、ぼやぼやした話がしたいと思っていますので、お気をつけください!
最後のお見舞いは突然に
生理が来て、今週期の妊活スケジュールが出た。通院の合間にアイドルちゃんの遠方ツアー参戦すっぞ!!!!!現地には色々親戚が住んでいるから、ちょうど泊まれるし。
ということで、一般販売最終日の23時、滑り込みで座席を購入。うーん、最後列。しょっぱいが…推せるように推すがモットーだから、良いんだ…!
当日は、よく晴れていた。
現地に着いてすぐ、ショッピングモールの隅のベンチでお昼の残りの揚げパンをかじっていたら、お母さんからラインが来た。
「おじいちゃん、よくないみたい。
お母さんたち、今すぐお見舞い向かうから。」
90歳を超えたおじいちゃん、最近は入退院を繰り返してすごく痩せてしまっていた。
…わたし今来た都市な、めっちゃおじいちゃんの家の近くやねん。あまりにも到着してすぐの連絡やからびっくりしたけど、おじいちゃんもすぐ着いたらびっくりするやろ。今から行くわ…!!
急展開に動揺しながら、もう一度電車に乗り込んだ。さよなら、ライブ会場。あばよ、一万円…。
えらい早かったな。
ベッドに寝転がったおじいちゃんは驚いていた。
おじいちゃんは、入れ歯ももう噛み合わなくて、声を出すだけでしんどくなってしまうみたいだった。何度も手を握って、体をさすって過ごした。
夜になり、さて帰ろうかと、一緒に来ていたお姉ちゃんと挨拶に行ったときだった。
「お腹に、おるんか?」
おじいちゃんは、途切れ途切れに、絞り出すように喋りかけてきた。
そうか、今日のわたしはゆったりワンピースを着ている。結婚してもう2年以上過ぎているし、気にならないはずないよな。
おじいちゃんが、もう、いつか、というのはわかっていた。だから、ひ孫を見せるのが叶わないなら、いつ産まれる予定だよと、ずっと伝えたかったんだ。でも、それも、もう。
数日のうちにという日にも、わたしは希望の言葉を持ちえなかった。
今、確実に、この孫の腹には誰も何も居やしないのだ。あなたの娘の子は成長したよ、子孫は続くよと、伝えられない。
「ううん、今頑張ってるところだよ」
わたしも、振り絞らないと答えられなかった。
おじいちゃんとの会話は、この二言がほとんど最後。おじいちゃんがこの返事に何を思ったのかは、もう知りようがない。
返事はこんなだったけど、びっくりしたけど、今となっては、伝える機会をくれたのがありがたかったと思う。
翌日、へとへとになって帰宅した。
そんな気分ではなかったが、夫にタイミング取りましょうと伝えたら、さすがに今日は寝なさいと諭された。
この周期は、もともと連休と被っており、人工授精もお休み。休息も必要と自分に言い聞かせて過ごした。
不妊のこと、誰に打ち明けるか?
おじいちゃんは、近年稀に見る豪速直球で聞いてくれたが、誰もがそうストレートに聞ける話題でもない。「子どもいますか?」にいいえと答えるだけで「すみません」と気を遣われてしまうくらいに。
わたしは「隠してないから、聞かれたら答える。または、支障が出るなら自ら伝える」の方針にしている。
だから、親しい友人、女きょうだいには、治療が始まる前に伝えた。静脈麻酔が怖いから言いふらすの意と、不妊症は身近だよの啓発の意も込めて。
その中で、子だくさんの姉に話す気にはなれなかったのだが、おじいちゃんの爆弾発言に居合わせたのと、妊娠の経過を知ってる分話が伝わるのとで、結局は一番色々と喋ってしまった。
両親は両家とも迫ってくるようなタイプではなかったので迷ったが、NGワードがあるとお互い気になるし、帰省がタイミング取りに影響するのもあって、夫婦それぞれ母親に会うときに、通院のことを伝えた。
結果的には、親に伝えた後はかなり気が楽になった。今までは会う度に、勝手にプレッシャーを感じていたから。実際に起きた変化といえば、実母が前よりたくさん「体に気をつけや」と言ってくれるようになったくらいで、帰省しろとも言われないし、何とも優しい世界だった。わたしは周りに恵まれている。
聞かれたくないけど、聞かれるとすっきりする。
わたしは話すことで、この現状を許されたかったのかもしれない。