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不妊症#13 理解し合えない夫と進むのだ

夫が帰ってきた。大きな手で頭をわしゃわしゃしながら、「大丈夫だよ」と何度も言ってくれた。

男女の温度差

夫は切り替えが早い。ひとしきり慰めたら、もう「次だね!頑張るぞ!」と言い出した。

明るく居てくれるのは、ありがたい。悲しみ合っても仕方がないし。ジェンダー的な男らしさで、強がってる部分もあるのだとも思う。
わかるのだが、自分の落ち込み具合とのギャップに、またひとつ悲しくなる。
これ以上、頑張るの…?

あなたは、ほぼ通院なしで事が進む。仕事もほぼ休まない。不調の度、お手洗いに行く度、変調が気にならない。自己注射や採卵に怯えることもない。

わたしは、タイミングを増やすこと、朝一番の採精、排卵周期だけでも接待のお酒を断ること、あなたの大変さがわからない。

長々と真夜中まで話し込んでしまった。
相手が何を頑張ったら、どれほど負担になるのか。対話と想像で補うしかできない。

結論、臓器が違う以上、見える景色は違う。男女の温度差を完全に埋めることは不可能。だからこそ、寄り添う努力は欠かしてはならない
理解できないことを、理解し合った。
夫婦は唯一無二の味方であり、共闘者なのだ。


避けたかった第二章、されど

選んだ道の先は、更なる深い暗闇。松明は尽きた。敵の声が遠くで響く。

All or nothing。選べるのは、極端な二択のみ。



5回目の妊娠判定までに、ゆっくり気持ちを整えようと思っていたら、人工授精前日になり、明日急遽返事をすることになった。わお!
次周期から体外受精なら、それに向けて生理周期や書類を整えなければならないという。


夫と、前夜の作戦会議を決行した。

我々は、準備をしてきた。
人は常に今が一番若い。調べようがない他の授かれない理由が見つかっても、早いほど対抗しやすい。

不安の根源は、うまく行かなかった体験。だが、それは世間からみたら小さな体験。囚われ続けて、大きなチャンスを逃すことの方が、怖い。
現治療が奏功しないのだから、次の段階へ進むのは妥当。

わたしたちは、ずっと、子どもが欲しいんだ。
やらない理由が見つからなかった。
来年の夏は、妊婦でいたい。


お婆さんが、すごいこっちを見て言ってくる。
そこに愛はあるんか?
あるに決まっとろう。大金払って、正常な臓器を狂わせてまで欲しい子ども、愛じゃなかったら何だよ。愚問だ。こっち見んな。


森が恐くて進めないのなら、木を見て行こう。
一つずつ不安を解消して、前を向くのだ。

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