不妊症⑥開通の儀〜手術・FT〜
手術を待つ間は、狙った日付でちゃんと生理が来るか終わるかと、無知からくる無数の疑問とで、不安が増幅した。
もらったパンフレットだけではよくわからなかったので、病院や学会系の解説記事とYouTube動画を見漁った。
増えた情報を整理すると、安心できた。
ネットにはまたまた痛くないって書いてあるし、術中は静脈麻酔で意識ないし、大したことないだろう。きっと、あるある手術だよ!
自分に言い聞かせた。でも、やっぱり怖くなって前夜は夫をクッションにして泣いた。
手術当日。
幸い、スケジュール通りに予定の日を迎えることができた。
緊張の朝。病院に着くと、来賓かのようにすぐにベッドに案内され、点滴を繋がれ、暇になってしまった。
身動きが取れないので、考え事しかすることがない。
今日は記憶上初の点滴で、刺すの失敗されちゃったなぁ。ちょうど先週、看護師の姉に「あんたの血管はイヤだわ」と言われ、血管に好き嫌いとかないわって笑った。でもこの調子じゃあ、看護師さんに嫌がられる血管問題は将来切実になるかもなぁ。子宮がん検診も乳がん検診も他もちゃんと受けて、人生の刺され回数を減らす努力をしよう。
周りのベッドにいる人たちが何人か、呼ばれて行っては、運ばれ帰ってくる。体外受精の採卵かなぁ。採卵ってやっぱ大変なのかなぁ。
…とにかく暇だった。
良くないことを考えそうだったので、ベッドをずり上がってスマホを取り、決死の思いで、夫に行ってきますとLINEした。そしたらすぐに返ってきたメッセージが軽いノリで、余計情緒不安定になった。
共感能力の低い野郎め、これじゃ呼吸器がやられて肺炎のリスクが高まるやろが!(?)
こんな風に思考の無駄遣いをしつつ、30分以上は待っただろうか。やっと呼び出しがかかった。
わたしは点滴を繋がれたまま、歩いて手術室に向かった。
鎮座する手術台
いかにも、砕石位になれよ、さぁさぁ!と言いたげな台が目の前に現れた。当たり前だが、しっかりと手術室だった。あんな優美なクリニックの奥に、こんな the 医療な空間があったなんて知らなかったぜ。
誘導されるがままに寝転がり、指示された通りの体勢をとる。点滴じゃないフリーダム片腕には血圧計を巻かれ、両腕ガッツリホールドとなってしまう。
看護師さんが力を抜くように合図してくれる。
ああ、緊張していたのか。
そして、どさくさに紛れるように医師の挨拶があり、流れるように準備が整った。
繋がれた点滴バッグは、既に静脈麻酔に変わっている。
「ピリピリするかもしれないですが、すぐに効いてきますからね」
本当にピリピリするな〜と思う間に、フッと意識を失ったのがわかった。さようなら世界…。
目が覚めたら、身体が縮んでしまっていた。
間違えた。ただ腹が痛かっただけです。
ただ腹が痛いという思いだけで目が覚めました。生理痛を2-3倍にしたようなひどい痛みでした。
どうやら、ここは初めにいたベッドだ。
今運ばれたところ?運ばれた衝撃で今起きたんよね??ねぇ手術は無事終わったんですか???
気になることは沢山湧いてくるけどとにかく腹が痛すぎて、謎の解明よりまずは唸らせてもらっちゃおう!ゔぅぅん…ゔぅぅん…
初めに来た看護師さんにはスルースキルを炸裂され、次にやって来た看護師さんが「痛み止め入れてるから、30分くらいで効いてくると思いますよ」と教えてくれた。
手術前は、同じベッドでお布団被ってのんきにぬくぬくしていたのに、今は血の気が引いたみたいに寒かった。
点滴が終わるまで、1時間は寝ていただろうか。
痛みが落ち着いてきたら、お腹が空いてきた。そういえば昨日の晩以降絶食で、何も飲み食いしていない。ご飯食べたい。
看護師さんに調子を聞かれたので、そう言ってみたら、笑ってくれた。早く帰れるようにと点滴の様子を見て、頓服のロキソニンを持ってきて飲ませてくれた。
立ち上がれるようになっていた。
弱っているときは、優しさが染みる。
仮に小中学生で同じ体験をしてたら、わたしも看護師になってたかもやなぁと、またまた思った。
着替えてやっとこさ待合室に戻ると、もう人はまばらだった。そういえばと時計を見ると、病院に来てから丸4時間も過ぎていた。
手術が終わってすぐに目覚めたわけではなかったのか。
手術はなんとか成功。
医師から告げられ、ほっとした。
めちゃ硬かったらしい。手術中もだいぶと痛がっていたとのこと。記憶はないけど、静脈麻酔って痛み感じるんだなぁ。
そして簡単に今後の説明を受けて、今日の診察は終了。
ポケっとした頭でも、なんとか要点は理解できた。明日からまたタイミングの日々。改めてよろしくお願いしますの気持ちでいっぱいだった。
帰り、ふらふら吸い込まれて、最寄りのチェーンのカフェに入った。
この時食べたサンドイッチと温かい紅茶が、最高においしかった。