斉藤幸子参考人 意見陳述①(衆議院法務委員会4月3日)
離婚後共同親権の導入を柱とした民法改正案について、4月3日、衆議院法務委員会で参考人質疑が行われました。
斉藤幸子参考人(#ちょっと待って共同親権プロジェクト チームリーダー)の意見陳述を、3回に分けて掲載します。
ぜひ、動画についてもご覧いただければと思います(0:26:55~)。
2024年4月3日 衆議院 法務委員会 (youtube.com)
参考人の斉藤と申します。
まずはじめに、DV被害者としてこの場に立つに当たり、顔を出さない遮蔽措置、ボイスチェンジャーで声を変えること、そしてインターネット審議中継で顔を映さないことなど、特段の配慮をくださった議員の皆さま、衆議院職員の皆さまに深く御礼を申し上げます。
こうした特別な措置が必要なのは、私が住所を秘匿して暮らし、夫がいつ居場所を突き止め、目の前に現れるか分からない恐怖と隣り合わせの毎日を送っているからに他なりません。
今この瞬間、ネットでは私がだれであるか犯人捜しのようなことが起こっているはずです。実際に、「離婚後共同親権に懸念がある」と発信している人に対して、共同親権を望む人たちがその人の名前や顔をSNS等で晒し、職場や実家に嫌がらせをしているということを知っています。
もし、私の身元がばれてしまったら、私と子どもは怯えながら、再び転居、転校、転職をしなければなりません。今日、この場に立つことはとても怖いです。…ですが、声を上げることができない日本中のたくさんのDV被害者の仲間たちの応援を受けて、勇気を振り絞って、国会という公(おおやけ)の場で想いを仲間の声も含めて伝えることに決めました。
私は、離婚後の子育てを両親そろってできることは理想的で素晴らしいことだと思います。そして、現時点でもできている人たちがたくさんいることを知っています。しかし、離婚後に協力し合えない人たちにも協力し合うことを強制しようというというのが今回の法改正です。DV・虐待を除外すると言われていますが、実際にDV被害を受けた者としては、現状の仕組みや社会の理解度を考えると、安心はできず、毎日不安な思いで子育てしています。
まず、私の経験をお話しします。
私は、入籍直後、夫よりも遅く帰宅したことを理由に殴られました。それからは殴る・蹴るはありませんでしたが、物を投げる・壊す・罵倒・監視・お金の制限・同意のない性行為といった暴力を受け続けました。
私は、「夫を怒らせてしまうのは自分の頑張りが足りないんだ」と思って、耐えながら過ごしました。妊娠が発覚したのちも、夫の暴力はやみませんでした。夫が暴れ、ぐちゃぐちゃになった家の中を、妊娠した大きなお腹で片付け続けました。このまま産んでいいのだろうか。不安でいっぱいでした。
里帰り出産をしましたが、その後、子どもに障害があることが分かりました。夫は私にこう言いました。「障害はお前のせいだ」。その後も、夫は子どもの前でも怒鳴り、育児は何もしませんでした。「このままでは、私が壊れる」「子どもを守れない」。そう感じ、里帰りのまま別居しました。
別居後、友人に恥を忍んで夫が怖いことを相談すると「それはDVだよ」と言われ、DVを知りました。同居していた頃は、自覚できませんでした。自覚していたとしても、自分を守るのに必死で、録音やメモを残せる状況ではありません。録音がバレたらそれだけで激怒され、暴力がエスカレートするからです。今になって、「DVの証拠を出せ」と言われても、できません。
その後、夫は面会交流調停を、私は離婚調停を申し立てましたが、夫が「面会できなければ離婚しない」と強く主張したので、家庭裁判所では面会交流の話ばかりが進みました。私は、手元にわずかに残っていた夫からの脅迫メールや、配偶者暴力相談支援センターの記録、子どもの主治医の意見書などを提出しました。そこにはこう記されています。「妻は配偶者によるストレスで重度の鬱であり、障がいのある子どもの監護に悪影響になるので、面会の負担を考慮すべき」「子どもは障がいの状態から、面会交流は控えるべきだ」
しかし、調停委員や裁判官は、それは「離婚事由で、面会できない理由になりませんね」といい、調査官も、「子どもに障害があっても、親がうつでも、面会には関係ない」とはっきり言っていました。さらに、「子どもを別居親に会わせないなら、親権は取れませんよ」、とも言われました。恐怖と不安、絶望感でいっぱいでした。私は子どもに無理をさせることはできないと訴え続け、争いました。面会交流を決めるだけで、高裁までいき、5年かかりました。弁護士費用や医療費など100万円以上かかりました。離婚は今もまだ成立していません。
離婚後共同親権導入の法案が成立し、施行されたなら、また子どものことで裁判の毎日でしょう。子どもを安心して育てたいだけなのに、別居親の同意を得るために裁判をし続けなければなりません。肉体的にも、精神的にも、経済的にも更に追い込まれます。弁護士費用が用意できなくなったら、夫の要求を拒否できる自信がありません。本来であれば、その時間・お金を子どもに費やしたいです。子どもの利益とは一体何なのでしょうか。
(続きはこちら)
<関連記事>