(5)選択肢の文言を改変してDV「一切ない96.7%」と強調 【TBS報道特集が取り上げる「実子誘拐被害調査報告書」とは?】
8月24日の報道特集は「子供の連れ去り」とTBSが告知しています。
報道特集(JNN / TBSテレビ)
告知動画などによると、報道特集では、NPOキミトによる「実子誘拐被害調査報告書」も取り上げるようです。
今回の記事では、NPOキミトとマスコミにより、「実子誘拐被害調査報告書」がどのように利用されてきたのか検証します。
<これまでの記事>
NPOキミト代表「この調査は標本調査ではありません」
「実子誘拐被害調査報告書」は実施条件について不明点があり、サンプリング方法が示されていない等、SNSでも疑問が指摘されています。
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NPOキミトは、これらの指摘に対し、8月19日、「この調査は標本調査ではありません」と主張し、「実態を知るフィールドワーク的位置付け」と説明しています。
https://x.com/Megumi88Mori/status/1825320192320352518
https://x.com/Megumi88Mori/status/1825641954480369930
「サンプル数509」と記載されているが、標本調査ではない?
では、2月当時、NPOキミトは調査結果をどのように報告していたのでしょうか?
「実子誘拐被害を知るシンポジウム」の案内文書では、「サンプル数509」と記載されており、また、調査結果を「%」で示す等、定量調査として取り扱われています。
また、調査リリースについても、定量的な標本調査と思われる形式で示されています。
標本調査ではなく「実態を知るフィールドワーク的位置付け」なのであれば、定量的に評価することはミスリードですが、何ら注釈はなく、むしろグラフにより数値が強調されています。
選択肢の文言を改変してDV「一切ない96.7%」と強調
特に問題が大きいのは、2月26日、「実子誘拐被害を知るシンポジウム」で使用されたスライドです。「相手にDVをしていましたか?」との設問について、「一切ない96.7%」と強調しています。
この設問は、DVの範囲を極端に狭くとらえる選択肢が設計されており、深刻な被害(病院・精神障害・経済破綻など)、または、複合的かつ一方的かつ継続的な嫌がらせに該当しなければ、「上記のようなことは一切ない」との回答になります。
しかも、スライドでは、「上記のようなことは」との重要な文言を削除し、「一切ない96.7%」と表記しています。
(詳細はこちら)
さらに、「DVしていない96.7%」に改変
こちらの画像では、さらに単純化され、「DVしていない96.7%」に改変されています。
NPOキミトは、深刻な被害や、複合的かつ一方的かつ継続的な嫌がらせでなければ、DVでないという認識なのでしょうか。
(なお、ここでも本調査は定量調査として扱われており、定性調査としての分析結果は示されていません。また、小数点の桁数にバラツキがあることも特徴的です)
MBS 「実子誘拐被害調査報告書」に基づいて報道
MBSは3月20日の番組で、「実子誘拐被害調査報告書」を取り上げ、「NPO法人が今年1月にWEBで行ったアンケートによると、国内で少なくとも約500人が子どもの連れ去り被害を訴えているという」と報じています。
「実子誘拐被害調査」は、サンプリング方法、スクリーニング条件、「実子誘拐」の定義などが明らかにされていません。MBSは、「調査」結果を定量的に利用するにあたり、どのような取材・確認をしたのでしょうか?
報道特集は、この「調査報告書」をどのように取り上げるつもりなのか、TBSの対応が注目されます。