トパーズ~番外編?~Part2
まえがきのまえがき
こちらは「トパーズ~虹と共に~」の番外編(お遊び)となっております。
ネタバレも含みますので、もし、もしも、お読みでない方は本編から覗いていただけるととっても嬉しいです。
≪智香、告白される≫
智香 『紗弥加ー!聞いて、聞いてー!』
紗弥加『おはよ、智香。
どうしたの、朝からそんなに興奮しちゃって』
智香 『あっ、おはよ。本当は昨日、
電話しようかと思ったんだけど、直接言いたくって♪』
紗弥加『で、何でそんなに興奮してるわけ?』
智香 『やってきましたっっ、私の時代が!
見よ、これを!』
そう言って智香は自慢気に鞄から封筒を取り出し紗弥加の前でヒラヒラとしてみせた。
紗弥加『もしかしてそれって……?』
智香 『そう!ラ・ブ・レ・タ・アー!』
その封筒を紗弥加に手渡し、仁王立ちになり、自慢気に言った。
智香 『まぁ、ジェイやレノンみたいに超イケメンって
訳じゃないんだけど〜♪
おっと、話しはここまで。
今日、紗弥加の家に行ってから話すぅ♪
紗弥加の家にお泊まりの前日にこんなコトが
起こるなんて運命感じるわぁ♪』
紗弥加『えーっ、今教えてくれないの?ズルーイ』
その夜、紗弥加の家に久々に泊まりに来た智香は少し頬を赤らめながらあらましを話し始めた。
智香の家の近所に公園がある。そこに時々やって来る男の子がいる。見かけた時は一緒に遊んであげていた。
智香 『タケルって子なんだけど、
その子のお父さんがいつも迎えにくるの。
話を聞いてると、どうやら離婚して父子家庭みたいなの』
涼 『まぁ、そんな小さい子を男手一つで育ててるなんて偉いわぁ』
響 『で、どんな人なの?』
智香 『なんか、物腰柔らかで、優しい感じ。
そりゃぁ、ジェイやレノン程の超イケメンじゃないんだけどー♪』
紗弥加『もしかして、その人からもらったの?』
智香 『そう!そうなのよ!』
レノン『なんて書いてあるの?それ』
智香は封筒を開け、中に入ってある便箋を取り出し机の上に広げてみせた。
「智香 さま
好きです。明後日、いつもの公園に来てください。 」
とシンプルな文面で書かれていた。
智香 『ねー!』
ジェイ『明日はみんな休み………だよな?』
紗弥加『もしかして……』
ジェイ
レノン『行くに決まってる!』
響
涼
ジェイ『サーヤも行くんだよ』
ジェイは紗弥加を引き寄せ頬にキスをした。
紗弥加『…………やっぱり』
〜そして、当日〜
お祭り好きな面々はワクワクしながら会話の内容が聞こえる距離にある木陰に隠れてジッと息を潜めて見守っていた。暫くすると智香に近づいてくる人影が二つ。
響 『レノンより随分と劣るけど、ジェイよりはイイ男じゃない?』
ジェイ『何をー?! いっぺん死ね、バカ響!
サーヤは俺の方があいつよりも俄然イイ男だと思うだろ?』
そう言って紗弥加の腰を引き寄せて耳元にキスをした。
紗弥加『もう、ジェイ!』
真っ赤になりながらジェイを叩くと紗弥加はまた智香に視線を戻した。
父 『智香ちゃん、来てくれてありがとう』
智香 『いえいえ、そんな……』
智香は真っ赤になりながら両手を振りながら答えている。
父 『すみません。突然あんな手紙で驚かれたでしょう。
歳も違いすぎますし……』
智香 『は……はい。びっくりしちゃいましたけど……。
でも、お……お気持ちはとても嬉しかったです』
父 『そう言っていただけると書いた甲斐があります』
そう言い終わったところでタケルがすっと前に出てきた。
タケル『智香、俺がおっきくなったらお嫁さんになってくれよ?』
智香 『…………………は?』
父 『タケルがどうしてもあなたに手紙を書いてくれと言うもので……。
子供の戯言と思い、これからもたまに遊んでやってください』
タケル『じゃあ、またなー!
す……好きだぞ、智香♪』
そう言うとタケルの父は智香に頭を下げタケルと手を繋いで帰っていった。
智香 『…………………』
紗弥加
ジェイ
レノン『……………プッ』
響
涼
木陰に隠れていた5人は顔を見合せ、一斉に立ち上がって呆然と立ち竦む智香を尻目に大笑いし始めた。
智香 『えぇぇぇぇぇぇ!?』
悲痛な(?)叫び声が辺り一面に響き渡った。
紗弥加『よ……よかったじゃない。将来有望か……も……』
ジェイ『いいもの見せてもらったよ』
レノン『可愛いボーイフレンドだな』
響 『かっこよかったわぁ、タケル♪』
涼 『いい男になるわよ、何年後かには』
各自、智香にそう言いい終えると踵を返して笑いを堪えながら去っていった。
智香 『ひどい!紗弥加まで!』
そう叫ぶと智香は逃げ出した5人の後を猛ダッシュで追いかけた。
その後、嘆き散らす智香は5人全員にスイーツを奢ってもらい、ジェイとレノンに抱き締めて慰めてもらい、また目をハートにしたのは言うまでもない……。
〜おしまい〜
≪ジェイのラブラブ大作戦2≫
紗弥加『遅いなぁ……。』
紗弥加は映画館のエントランスで呟いていた。何故かというと、それは数日前にさかのぼる……。
ジェイ『なぁ、サーヤ。今度の休みにこれ、行かない?』
そう言ってジェイが差し出したのは映画のチケット。紗弥加が予告編をテレビで流れる度にくぎ付けになって見ている今大人気の映画。ファンタジーちっくな内容だが、ストーリーもよく作られていると業界でも評判がいい。
紗弥加『これって私が観たいって行ってたやつだよね。
嬉しい〜♪ありがとう。』
ジェイ『お礼はココに欲しいなぁ、サーヤ?』
ニヤリと妖艶な笑みを浮かべ、人差し指で自分の唇を指すジェイ。
紗弥加『………………。そ……、それより、大丈夫なの?
こんなに人が集まる場所に行ったりして。
それともレノンや響ちゃん達も来るの?』
ジェイ『シッ!2人だけで行こう? たまにはデートもいいだろ?
別にバレても俺はかまわないし♪』
と腰を引き寄せて耳元にキスをするジェイに真っ赤になりながらも紗弥加は『わかった』と承諾をした。まもなく上映が始まるとアナウンスが告げているのにジェイの姿は見当たらない。
紗弥加『仕事がおしてるのかな……。
せっかくの指定席だし、入ってきたらわかるよね。』
紗弥加は意を決してパンフレットとジュースを持って扉を開け中へと入っていった。紗弥加の左のシートはまだ空いたまま。来たらすぐに座れるようにと通路側の席を空けておいた。予告が始まり、本編が始まろうとしたその時、紗弥加の左に座ろうとする人影が……。紗弥加は囁くようにその人影に言った。
紗弥加『あの……。ココには連れが座るんです。』
そんな紗弥加の言葉に耳も貸さず座る人影。その人影は背もスラリと高かった。どうしようかと考えを巡らせているとその人影は紗弥加の耳元に顔を近づけてきた。
紗弥加『な……何す……!!』
人影 『俺だよ、サーヤ。お待たせ。』
紗弥加『ジェイ!』
ジェイ『俺を待ってるサーヤ、可愛かったよ。』
と耳元にキスをした。
紗弥加『来てたの?ずっと待ってたのに……。ヒドイ!』
ジェイ『人混みに囲まれると困るだろ?
俺はいいけど、サーヤに何かあったら困るからね。
さぁ、始まるよ?』
ジェイは紗弥加の手に優しく、守るように自分の手を乗せた。映画が終わるまでその手は繋がれたままでジェイは密かに幸せを噛み締めていた。映画も終わり、案の定、紗弥加は最後は目を真っ赤にしながらエンドロールを見つめていた。そんな紗弥加の肩を優しく引き寄せ、
ジェイ『どこかで美味しいもの食べて帰ろう。
2人で食べに行くなんてめったにないからね♪』
と囁いた。
そう、ことごとくレノンと響に邪魔をされ、2人きりでゆっくり食事に行ったこともない。だか、今日はレノンも響も仕事があり地方へ行っている。前もって密かに調べあげ、今日という日を選んだのだから……。心の中でガッツポーズをしながら映画館を出て何を食べようかと相談しながら歩く。
ジェイ(これ、これだよ。ここまでの道のり、長かった〜♪)
喜びを噛み締めるジェイだった……。
『ジェーイ!』
ジェイ(後ろから誰かが呼ぶ声がするのは気のせいか……?)
恐る恐る振り向くとソコには智香がいた。
紗弥加『あっ、智香。せっかくだし、智香も一緒にご飯食べよ。』
智香 『わぁい♪』
そう言って智香は大喜び。そして、横を向いてボソッと呟いた。
智香 『本当だった〜♪』
ジェイ『……な……何が?』
不思議がるジェイの耳元に智香は囁いた。
智香 『昨日ね、響ちゃんがこの辺ウロウロしてたら
ジェイに美味しいもの食べさせてもらえるよ♪
ってメールもらったの♪』
ジェイ『…………………』
3人は洒落たレストランで食事をした。智香は終始目をキラキラ輝かせ、目をハートにしていた。そして美味しいものをご馳走になり智香は大満足。紗弥加も楽しそうにしているのを見てジェイもそれなりに満足して過ごしたのだが、ジェイが響に対して殺意を抱いたのは言うまでもない……。
ジェイと紗弥加の甘い生活はまだまだ遠そうである……。
ジェイの苦悩は続く、永遠に……?
〜おしまい〜
≪やっぱり仲良し?≫
響 『遅いわねぇ……』
響はとあるショッピングセンターの前にいた。道行く人達はチラチラと響を見ながら過ぎていく。
響 『私を待たせるなんていい度胸してるじゃないの』
顔は穏やかさを保ちながらブツブツ言っていると、向こうから響に向かって歩いてくる人影があった。
ジェイ『悪い、待ったか?』
響 『少しだけね。とりあえず、どこ行く?』
ジェイ『どうする? 夕食まではまだ時間もあるしな……』
響 『じゃぁ、せっかくだし、
このショッピングセンター行ってみようよ♪』
そう言うと響はジェイの腕を掴んで中へと入っていった。客達は遠巻きに集まり、ジェイと響を見て小声で奇声をあげたり、デジカメや、携帯で2人を撮ったりしていた。
店員 『こちらの色か、こちらの色になりますが?』
ジェイ・響『こっち!』
2人は同じ色の方を指差した。そうして2人は顔を見合わせてご機嫌に購入した。
ジェイ『時間も時間だし、夕食にするか』
響 『そうね、そうしましょ♪』
2人仲良く腕を組みながらお洒落なレストランへと入っていった。
響 『前から気になってたんだよね〜♪ このレストラン♪』
ジェイ『美味しいらしいぞ、ここ』
響 『楽しみ〜♪』
店員に席まで案内され、しばらくすると店員が注文を聞きに来た。
店員 『お客様、メインはお肉とお魚、どちらになさいますか?』
ジェイ・響 『お肉♪』
店員 『かしこまりました』
食事が運ばれ、2人は料理に舌鼓うち、話しに花を咲かせながら楽しい一時を送り、店を後にした。
ジェイ『まだ時間も早いし、ちょっと飲んで帰るか?』
響 『そうねえ……。まだこんな時間だしね、行こう♪』
ジェイ『飲みすぎるなよ?お前は弱いんだから』
響 『…………………。わ……わかってるってば』
ジェイはそっと響の肩を抱き、お洒落なバーへと向かった。
バーテン『いらっしゃいませ。何をお飲みになりますか?』
ジェイ・響 『マルガリータ』
バーテン『かしこまりました』
ジェイ『あんまり飲みすぎるなよ?』
響 『わかってるってば』
その後も何杯か頼み、バーテンもたまに会話に入ったりしながら楽しい一時を過ごし、店を後にした。店を出て、ふと2人の視線が絡み合う。2人の間に暫くの沈黙が流れた。ジェイの手が響の頬をそっと撫でる。
ジェイ『響、少し顔が熱いな。飲ませすぎたか?』
響 『少しだけね』
そう言って響は自分の頬に置かれたジェイの手にそっと自分の手を重ねた。見つめ合う2人はそうなるのが自然の流れの様にお互いの距離が縮まっていった。お互いの唇が引き寄せられるかの様に近づいていく……。そっと瞳を閉じる響を見つめながらジェイは両手で響の頬を包み込んだ。
スタッフ『終了でーす!』
その声と同時に2人はパッと体を離した。
ジェイ『なんで俺となんだよ! レノンがいるだろうが!』
響 『それはこっちのセリフよ!』
スタッフ『レノンさんと響さんとじゃ当たり前すぎるじゃないですか。
読者からジェイさんと響さんでって要望が多かったんです。』
実は某雑誌で好評の読者からの要望で選ばれた男と女が「デートをするとしたら?」という人気のコーナーがあり、それにジェイと響が選ばれたのだ。
スタッフ『お疲れ様でした。お二人って仲いいんですね』
ジェイ・響 『…………………』
紗弥加『お帰り、どうだった?今日の撮影。』
ジェイ『俺はサーヤとがいいな。
スタッフが響と仲がいいんですね、とか言うしさ』
響 『私だってあんたじゃなくレノンがいいのにー、ねっ、レノン♪』
涼 『ケーキあるわよ♪ みんな、どれにする?』
ジェイ・響 『モンブラン!』
涼 『一つづつしかないんだから、どっちか譲りなさい。』
ジェイ・響 『えぇぇぇぇ!』
紗弥加『やっぱり、仲いいね♪ 息もぴったりだし』
ジェイ・響 『どこが!』
何かと息が合う(?)2人はやっぱり実は仲がいいと思った紗弥加であった。
〜おしまい〜
≪もしも~が刑事だったら?(カップル編)その1≫
ジェイ『やぁ、君、今日も可愛いね』
婦警A『え〜♪も〜♪うまいですね〜。
あっ、ストーカーされていると訴えている女の子が今、
取り調べ室にいますので宜しくお願いします』
ジェイ『はぁ〜い♪』
ジェイは生活安全課の刑事で、検挙率も人気もピカ一の敏腕刑事だ。
――コン、コン
ジェイ『入るよー』
そう言って取り調べ室のドアを開けて入っていった。部屋に入ると婦警が先に話を聞いていた。
婦警B『お疲れ様です。彼女なんですが、
さっきからずっとストーカーにあっていると
言い張ってまして……』
ジェイ『ふ〜ん、そうなんだ。
じゃぁ、代わるよ。君たち、少しだけ部屋から出てて』
本来なら調書を書く人間と取り調べは2人の一組の計3人でするのが普通なのだが、女性相手の場合、内緒でジェイと2人だけで話をする。たまにジェイ会いたさで嘘を言ってやって来る女性がいたりするからだ。
婦警B 警官A『30分ほどしたら戻りますから、宜しくお願いします』
ジェイ『はい、は〜い』
ジェイはまた今回も嘘かもしれないな………とうんざりしながら目の前に座る女の子の後ろ姿を見つめた。ジェイは婦警Bから調書を受けとり、ざっと目を通す。
ジェイ『紗弥加って名前なんだね。サーヤって呼んでもいいかな?』
そう言って紗弥加の前に座った。
ジェイ『ストーカーにあってるらしいけど、どんな風にあってるのかな?
悲しいことに証拠がないと警察は動けないんだよ』
紗弥加『……………。本当に……嘘じゃないんです……。……』
そう言うとポロポロと泣き出してしまった。
――ズキューンッッ!
ジェイの心臓が撃ち抜かれた。ジェイの好みのど真ん中だったのだ。
ジェイ『君をそんなに悲しませる奴がいるわけだ。
誰か怪しい人とか、毎日必ず不自然に会う人とかいなかった?』
紗弥加『そういえば……』
紗弥加は以前、店で商品を見ていた時に急に馴れ馴れしく肩を抱かれて話しかけられたと言う。それ以来、何回かチラッとその人らしき人物を色んな所で見かけるらしいのだ。
ジェイ『なにぃぃぃぃ! どんな顔してたか思い出せる?』
案外器用なジェイは直ぐ様似顔絵を書いた。
――バンッッ!
勢いよく取り調べ室のドアを開け、似顔絵を見せ、その場にいる全員に聞こえるように言った。
ジェイ『いいか、こいつを早く見つけてこい!
今すぐにだ!わかったらさっさとコピーして行けー!』
ジェイの一言でその場にいた全員が出ていった。
ジェイ『サーヤ、すぐに君に怖い思いをさせた奴が来るからね。
心配しなくていいよ?』
紗弥加『はぁ……』
紗弥加は今までずっと嘘つき扱いされていただけに何がなんだかわからず、ついていけなかった。そんな戸惑いをみせる紗弥加を見つめながらジェイはますます可愛いと思っていた。
ジェイ『今日から安心して眠れるからね。
君みたいに可愛い子を不安にさせるような奴は許せないからね』
紗弥加『はぁ……』
しばらくするとその人物が連れて来られた。
ジェイ『サーヤ、この男かい?』
紗弥加は少し恐怖を感じ、震えながら頷いた。
ストーカー『紗弥加ちゃん、何故だ? 僕達は恋人同士じゃないか。
いつも君を見守ってあげてるだろ?』
そう言ってストーカーは紗弥加に手を伸ばした。
手が伸びて来ると同時に紗弥加は顔を左右に振り、瞳に涙を溜めて震えた。ジェイはそんな紗弥加の肩をそっと抱きよせ、
ジェイ『妄想も甚だしいな!そういう奴を俺たちの中ではアリセ病と言うんだ』
(アリセ(………なにぃぃぃぃ!?))
ストーカーに怒鳴りつけた。そうしてストーカーを取り調べしてみると、実はまだ他にも余罪がたくさん出てきてジェイの検挙率にかなり貢献した。
その後、紗弥加に猛アタックをかけ晴れてお付き合いが始まるのだが、
ある意味、ジェイもストーカーに近いかも?と紗弥加が密かに思っていたとは知る由もなく、毎日浮かれるジェイの検挙率はますます磨きがかかったらしい……。
〜おしまい〜
≪もしも~が刑事だったら?(カップル編)その2≫
響 『ねぇ、お兄さん、ちょっと〜、
いつまで私をこんなところで待たせるわけ?』
響は結婚詐欺師(通称・アカサギ)である。ちょっとしたドジを踏んでしまいお縄頂戴となり、只今取り調べ室にいる。
警官A『もう少しですから』
響 『ねぇ、お兄さん、
お兄さんも私が詐欺なんて酷いことしたなんて思ってるわけ?』
そう言って、響は警官が座っている前にある机に腰掛け、足を組み、妖艶な笑みを浮かべ警官の顎を指でなぞった。
警官A『いえ、その……、一応、届け出が……』
響 『届け出なんてどうでもいいのよ。
お兄さんがどう思ってるか聞いてるの』
警官との距離を更に縮めて微笑みながら言った。
警官A『あの……その……』
真っ赤になりながら口ごもる警官。
???『もうそのくらいにしてやってくれないかい?アカサギさん。
新人君が困ってるだろ?』
響 『いつまで待たせるつもりだったのよ! 早く帰してよ!』
響は怒鳴りながら勢いよく振り向いた。
響 『………………。あ……あの……、お名前は?』
???『あぁ、すまないね。今回、担当するレノンです。』
響 『レノン…………』
レノン『何故ここにいるかわかるよね?』
響 『はい……』
レノン『この調書に書かれてあることで間違いないかい?』
響 『はい……』
レノン『…………………』
響 『はい………』
響はレノンを見つめ続けただ返事をしているだけだった。そう、響は刑事のレノンに一目惚れしてしまったのだ。さっきまで妖艶な笑みを浮かべていた響とは全く違い、目を輝かせレノンを見つめ続けていた。
レノン『響さん?』
響 『はい……』
まったく響は聞いている様子はなく、レノンは「はぁ〜」と大きくため息をついた。
バンッッ――!!
レノンは調書で机を叩いた。その音に響はハッと我に返った。
レノン『響さん? 話をしてもいいかな?
ちゃんと償えば帰れるんだからね』
響 『はいっ! 償います!』
そうして、洗いざらい全て正直に話し、詐欺仲間達の名前と所在まで吐き、目をハートにしながらレノンに手錠をかけられた。
刑務所ではこれまた見事な優等生振りで、予定よりも早く出所することができた。そして、スキップをしながらニコニコと迷うことなく進んで行く。
そう、愛する人の元へ……。
響 『待っててね。レノン。今、あなたの元に行きますからね〜♪』
〜とある署内〜
――ゾクッ
ジェイ『どうした? レノン。身震いなんかして。風邪か?』
レノン『いや……。なんか悪寒がしてさ……』
ジェイ『気をつけろよ?』
レノン『あぁ…………』
首を傾げながら何か不安を感じるレノンだった。そう、「響」という嵐が待ち受けているのだから……。
〜おしまい〜
≪もしもジェイと紗弥加が医者と患者だったら≫
窓から暖かい陽射しが柔らかく真っ白なシーツを暖めている。その陽射しを眩しそうに見つめる少女がいた。
涼 『紗弥加、少し散歩にでましょうか』
紗弥加『うん、そうだね……』
涼と話をしながら病院の中庭へと進んでいく。中庭に大きな楠木があり、その下に白いベンチが一つ。そのベンチに座り、静かに時間を過ごすのが紗弥加のお気に入りだった。
ジェイ『やぁ、君みたいなナースに看病してもらえたら、
すぐに治っちゃうね』
看護婦A『もぅ、ジェイ先生ってば〜♪』
ジェイ『お婆ちゃん、今日は一段と綺麗ですね。
医者がこんなこと言っちゃダメだけど、
退院するなんて淋しいね。』
老婆 『嫌ですよ〜、こんな年寄りからかっちゃぁ♪』
ジェイは世界的にも名医と名高い外科医である。
レノン『お前は医者になったのが間違いじゃないのか?』
響 『ホントよ、あんたみたいな医者が名医なんて世の中間違ってるわ』
レノンはこれまた名医と名高い内科医で、響は若いながらこの大病院の内科の婦長をしている優秀なナースである。
ジェイ『響、だまれ!
お前みたいなレノン病が婦長なこの病院の未来も心配だ。
レノンが優秀なのは当たり前だがな』
響 『なんですって〜!』
そんないつもの光景をレノンは静かに微笑みながら見つめていた。まだまだ続く2人の掛け合いを無視しながらレノンはスタスタと中庭へと歩いていった。
レノン『やぁ、元気かい?』
紗弥加『あっ、レノン先生。元気ですよ。
こうやってここでのんびり過ごすと落ち着くんです』
ジェイ『だまれ、響! ……………………。』
響 『どうしちゃったのよ、急に黙り込んじゃって』
ジェイ『……あの子は?』
響 『あぁ、あの子。
紗弥加って言ってね、入院中で、レノンが担当医なの。』
ジェイ『紗弥加……、さ……やか、サー……ヤ』
ジェイはレノンと話ながら紗弥加が時折見せる笑顔に釘付けになっていた。
響 『ジェイ? …………お〜い、馬鹿ジェイ?』
響が目の前で手を左右に振りジェイに話しかけるが、まったく耳に入っていないようだった。話しかける響を無視しながら、引き寄せられるかの様に中庭へと進んでいく。
レノン『ジェイ!どうした、ボーッとして?』
ジェイ『やぁ、初めまして。レノンが担当医なんだってね』
レノン『紗弥加、コイツは俺の親友で、
外科医をやってるジェイって言うんだよ』
紗弥加『こんにちは。紗弥加です』
紗弥加はニコッと微笑み、ジェイに挨拶をした。
――アウトーッッ!
ジェイは紗弥加の笑顔に完全にノックアウトされた。それからと言うもの外科のジェイは毎日の様に内科に顔を出し、紗弥加に会いに行った。
ジェイ『サーヤ、今日も元気かい?』
紗弥加『ジェイ先生。今日も内科に何か用事ですか?
大変ですね、お医者さんって』
ジェイ『まぁね、君の笑顔を見ると疲れなんかブッ飛んじゃうけどね』
紗弥加『お上手ですね』
クスクスと紗弥加は笑った。
――ピンポンパンポーン♪
『外科のジェイ先生、外科のジェイ先生、
今すぐ外科にお戻りくださいッッ(怒)』
――ピンポンパンポーン♪
紗弥加『呼ばれてますよ。お忙しいんですね』
ジェイ『サーヤ、明日、あの樹の下のベンチで待っていてくれないか?』
紗弥加『? あの……明日は……』
ジェイは紗弥加の返事を聞く前に踵を返し、心の中で大きく舌打ちをしながら自分を呼び出すアナウンスに腹を立たせながら戻っていった。それでも紗弥加と明日、樹の下のベンチで待ち合わせの約束をしたことで大満足だった。
涼 『行きましょうか』
――ブルッ
涼 『紗弥加、どうしたの? 身震いしちゃって。
せっかく治ったんだから無理しないでよ』
紗弥加『違うの……。なんか急に変な悪寒がしただけ。
大丈夫だよ、行こ』
紗弥加は昨日、ジェイに退院することを言いそびれてしまったのだが、レノンから聞いているだろうと思い、レノンに一礼をして涼と元気に家路についた。そんなこととになっているとはまったく想像していないジェイは花束を手にワクワクしながら楠木の下のベンチに座っていた。
響に馬鹿にされるまで……。
その後、レノンから真実を知り、紗弥加に猛アタックをかけ、紗弥加はあの日の変な悪寒はこのコトだったのかも……。
とジェイの猛アタックに困った日常を送ったのは言うまでもない……。
〜おしまい〜
≪響の不幸は蜜の味?≫
響 『ウフフ〜♪』
響は鼻歌混じりで家の扉を開けて通りに出た。久々にレノンと休みがあい、デート気分を味わいたくてレノンにねだって待ち合わせをすることにしたのだ。
響 (たまにはこんなシチュエーションも素敵よね〜♪)
――ニャァ〜
響 『……………………』
目の前を一匹の黒猫が通り過ぎた。
響 『黒猫が前を通るとよくないって言わない!?』
不吉な言い伝えを思いだし、そんなことはないはず! と頭を振ってそんな考えを頭から弾き出し、また歩き始めた。そして、タクシーにでも乗ろうと思い、大通りまで歩みを急がせた。
――ガシャンッ
響 『……………………』
響の歩く少し前にいきなり植木鉢が落ちてきたのだ。
響 『はぁ!? 誰よ、危ないじゃない!』
と植木鉢が落ちてきた先を見上げると初老の男性らしき人物がペコペコと頭を下げている。
響(お年寄りだもの、手元が滑ることもあるわよね……)
と思い直し、にこやかに微笑み初老の男性に手を振り、
響 『大丈夫ですよ』
と言って大通りへ急いだ。なかなかタクシーが捕まらず、少し苛ついていると、ようやく空きタクシーを見つけたのでさっと手を挙げた。タクシーが目の前に停まり、乗り込もうとした瞬間……。
――ドンッ
響 『……………………』
響は弾き飛ばされ、猛ダッシュで走ってきたサラリーマンらしき男性がタクシーに乗って走り去ってしまった。
響(なんなのよ!さっきからー!!)
先ほどよりも更にイライラしながらもレノンが待っていると思うと顔の筋肉が緩む。
響(急がなくっちゃ♪)
しょうがないのでバスに乗ることにした。あまりバスに乗ることのない響はバスに乗って驚いた。結構混んでいたのだ。座る場所もなく仕方なくつり革に捕まり、目的地に着くのを待った。
――ピンポーン
バス停が近づく度にベルが鳴らされすべてのバス停に停まる。たまに誰も降りず、乗ってこないバス停もあった。
響(誰よ! 間違いなら間違いって白状すればいいのにっ!)
目的地に着き、降りようと乗降口に移動して、料金をボックスに入れ、バスから道路へと足を運んだ。
――ポキッ
響 『……………………』
響が履いていたヒールが折れている。
響(はぁ? 呪われてるの?)
しょうがないのでバス停から一番近くにたまたまあった靴の修理をしている店を見つけて修理してもらった。腕時計を見ると既に待ち合わせの時間になっていた。
響(レノンとの待ち合わせだけは絶対に先に着きたいのに〜)
響は待ち合わせよりも早く着いてレノンの姿を見つけて自分まで近づいてくるのを見るのが大好きで、必ず待ち合わせ時間の10分前から待つのだ。修理店を後にして小走りになりながらレノンの待つ場所へと急いだ。
――ガシッ
後ろからいきなり腕を捕まれ、びっくりして振り返るといかにも怪しげと言わんばかりの装いをした占い師のおじさんがいた。
占い師『今日のあなたは不吉な影が見えますぞ……』
そう一言だけ言うといつのまにか雑踏の中に消えてしまった。
響(気持ち悪い、そんなわけないじゃない、レノンとデートなのに♪)
と身震いをして、気を取り直し、先を急いだ。ようやくたどり着いた時にはもう既に待ち合わせ時間に15分も遅れている。
レノン『珍しいね、響が遅刻なんて。
でもたまにはこうやって俺が待つのも新鮮でよかったよ。
さっ、行こうか』
と優しく響の背中に手を回した。
響(やっぱりレノンは最高よね〜♪)
と先ほどまで見舞われていた不幸の数々などすっかり忘れて上機嫌でレノンと雑踏の中に消えていった。
黒猫 ←実はジェイが知人に借りてきて、
わざと響の前にやった。
植木鉢 ←ジェイが初老の男性の振りをして
わざとぶつからない距離に落とした。
タクシー ←ジェイがサラリーマンを装い
わざと乗った。
バスの中 ←ジェイが毎回バス停が近づく度に
押していた。
ヒール ←ジェイが昨夜皆が寝静まった後、
キコキコと切れ目を入れた。
占い師 ←ジェイが占い師を装った。
日頃、紗弥加とのデートを邪魔ばかりされているので、仕返しをしたのだ。そんなこととはまったく気づかず響はレノンとのデートに瞳をキラキラと輝かせ、ジェイが少しうっぷんが晴れ、上機嫌になったことは知るよしもない……。
〜おしまい〜
≪座談会 ~智香の呟き~≫
響 『ちょっと、ちょっと! どういうことよ!
ジェイが違う作品にゲスト出演って!
何気にヒイキじゃないの!?』
ジェイ『俺だけじゃないだろ。歳のせいで記憶力が乏しくなったのか?
まっ、しょうがないじゃん♪
何って言っても本編で主役はってたんだから。
まっ、お前には一生無理だな。レノン病のバカ響』
響 『レノンはいいのっ♪ だって素敵すぎるんだもの。
っていうか、歳は余計よッッ!
馬鹿アリセよりは若いし、あの女はもう馬鹿を通り越して
ボケ老人に近いわよ。一緒にしないでよ』
(アリセ(なにぃぃぃぃぃぃ!?))
ジェイ『負け犬の遠吠えは見苦しいぞ、バカ響』
響 『なんですって〜! あっ、待ちなさい!』
ジェイは捨て台詞(?)を置いて勝ち誇った表情で仕事に出かけていった。そんなジェイの後ろ姿に地団駄を踏みながら悔しがっている響の傍に紗弥加や涼、智香がやって来た。
紗弥加『どうしたの?響ちゃん。
ジェイはなんか勝ち誇った顔で出かけていったけど……』
涼 『あんた達は仲良くするってことを知らないの?
まったく……』
智香 『何? 何?
っていうか、久々の出番じゃない? 私♪
みなさ〜ん、お元気でしたかぁ? 忘れてませんよね〜?
私のコト♪』
紗弥加『智香……、誰に言ってるの?』
涼 『ま……まさか……。
智香、あなた、まさかアリセ病にかかったんじゃ……』
(アリセ(……………………))
響 『なかなか馬鹿アリセが私達の話を書かないと思ってたら
ちゃっかり新作に馬鹿ジェイをゲスト出演させちゃってんのよ!
これってヒイキじゃない!?』
紗弥加『ジェイだけじゃなくってレノンも出てたよ?』
響 『レノンはいいのよ。だって、さ・す・が!
っていう感じの役回りだったじゃなぁい♪
またまた惚れ直しちゃったわぁ〜♪』
響は遠くを見つめながら瞳をキラキラと輝かせていた。
涼 『まぁ、確かに少しズルい気もするわよね』
響 『でしょっ! あの馬鹿アリセってばうまく話が
作れなかったから苦し紛れに出したのよ、きっと』
(アリセ(ドキッッ……( ̄▽ ̄;))
涼 『あのアリセならあり得る話よね……』
紗弥加『うん……確かに……。
ラストまでもっていくのにかなり話作りを悩んでたみたいだしね』
智香 『ちょっと待って! ジェイとレノンってばゲスト出演してたの?』
響 『そうよ。レノンがまた素敵でね〜。
なのにジェイのお馬鹿まででちゃって!
あの勝ち誇った顔を思い出したらまた腹が立ってきたわ!』
また怒りが沸騰し始めた響の隣で智香がみんなに聞こえるか聞こえないかという声で何か言い出していた。
智香 『――ブツブツ…………。……ジェイとレノンはゲスト出演……。
紗弥加は本編で主役……。響ちゃんは結構この番外編で出てる……』
紗弥加『どうしたの? ブツブツ呟き始めて……』
智香 『ねぇ…………』
紗弥加
響 『ん?』
涼
智香 『紗弥加は本編で主役だったよねぇ?』
紗弥加『まぁ……一応……』
智香 『響ちゃんは本編でも結婚式っていう華を飾ったし、
この番外編でも結構、でてるよねぇ』
響 『ま……まぁ、言われてみればそう……かな』
涼 『確かにそうよねぇ、2人はいい役どこ……』
涼が話が終わるか終わらないかの瀬戸際に智香の瞳がギラリと鋭く光った。
智香 『涼さんはバレンタインにちなんだ話で
1人主役はったじゃないっっ』
涼 『――――!! (そ……そうだったわ……)』
智香 『また私だけじゃないのぉぉぉぉ!!』
3人はどうも雲行きが悪くなって来ているのに気づき、智香の後ろからコソッと部屋を後にした。
智香 『どうよこれってぇぇ!』
と思いっきり怒り顔で振り向くとまた間がいいんだか悪いんだか仕事から帰ってきたレノンが立っていた。
レノン『どうしたの?』
訊ねたが最後、レノンはコンコンと愚痴を聞かされた。
レノン『智香にもいいことあるよ、きっと』
そう言って優しく抱き締め、背中をトントンと優しく撫でた。
智香 『うん……気長に待つ……』
いつものごとく目はハートになり、宙を見てどこか遠いところへと行っていた。
〜コソッと物陰から様子を伺う3人〜
紗弥加 響 涼『やっぱりそうなるんだ……』
と3人がため息をつきながらもにこやかに部屋を後にしたということは智香は知らないのであった……。
〜おしまい〜
≪似た者同士?≫
ジェイはウキウキしながらとある場所で立っていた。
紗弥加からこの場所で待ってて。
と言われたからだ。
ジェイ『少し早く着きすぎたな。
でも、珍しいよな。紗弥加から誘ってくるなんて♪』
ふとその珍しい行動に不安がよぎった。
ジェイ『………………まさか……。そんなことないか♪
俺達、ラブラブだし♪』
と頭を横切った不安を押し退けて紗弥加が来るのをウキウキ気分で待った。
〜待つこと数分〜
紗弥加の姿が前方に見え始めた。
ジェイ『おっ、来た来た』
紗弥加に手を振り、自分の居場所をアピールした。
紗弥加『ごめんね、待った?』
ジェイ『いや、ちょっと仕事が早く終わったから早く着いただけだよ。
さっ、美味しいものでも食べに行こう』
紗弥加『う……うん』
心なしか紗弥加の表情に陰りを見たような気もしたが、邪魔の入らないデートにそんな考えも吹っ飛び、紗弥加の肩を優しく抱きながら夕食を食べに行った。
ジェイ『そろそろ帰ろうか?』
紗弥加『う……うん』
ジェイ『どうした? なんか今日は元気ないような感じがするけど……』
紗弥加『そ……そんなことないよ』
ジェイ『そうか? ならいいけど……』
とは言うもののやっぱり紗弥加の表情はどこか影を落としているような気がするジェイ。
ジェイ『何か心配ごとでもあるのか?
素直に吐き出しちゃえば楽になるぞ?』
紗弥加『う……うん。あのね、じ……実は……』
紗弥加は少しすまなげな表情をして上目遣いでジェイに告げた……。
響 『早く出て来ないかなぁ〜♪』
響はレノンの方が仕事が遅く終わるので、現場まで行って驚かそうとレノンが出てくるのを待っていた。
響 『もうそろそろ出てくるはずなんだけど……』
――ガヤガヤ……
仕事が終わったようで、中から話をしながら出てくる人達の中にレノンを探した。
響 『あっ、いた♪ レノ〜ン♪』
手を振り、瞳をキラキラと輝かせながらレノンの傍へと駆けていった。
レノン『響……。仕事終わるの早かったね。
まさか迎えに来てるとは思わなかったよ……』
響 『どこかで夕食でも食べて帰りましょっ♪
涼さんにはもう連絡してあるから』
レノン『そうだね……そうしようか……』
どこかレノンの口調がいつもと違うような気もしたが、そんなことよりもレノンと夕食を食べに行くことで頭の中はそのことだけで心はウキウキだった。
響 『美味しかった〜♪
まだ少し時間も早いし、ちょっとお酒でも飲みに行っちゃう?』
レノン『いや……明日は仕事が早いから……』
響 『――――?』
響はレノンがやっぱりどこか歯切れが悪いような気がした。
響 『レノン?何か心配ごとでもあるの? 私じゃ役にたたないかも
知れないけど、聞くだけでもできるわよ?
話すだけでも楽になることもあるし……』
レノン『大丈夫だよ……』
響 『今日はなんだかずっと変だもの。
レノンの悩みは私の悩みでもあるわ!
だから隠し事はしないで?』
レノン『そう……だね……。実はさ……』
響はどんなことでも愛するレノンの力になってみせるわ! と意気込みを隠しながら平静を装ってレノンが話始めるのを待った。
紗弥加『この間ね、響ちゃんとモデル仲間の人と偶然学校の帰りに
会ったの……。でね……その中の一人がね……』
ジェイ(なんだ、そんなことで悩んでたのか……。
断り方がわからないんだな。そんなところがやっぱり可愛いな)
ジェイはそう思いながら
ジェイ『サーヤ、そんなに悩むことないんだよ。
好きな人がいるから……って
はっきり言ってやったらいいんだから。逆に変に傷つけないように
って考えると相手も余計に傷つくよ』
紗弥加『そっか……。そうだよね……』
紗弥加は下げていた頭を上げ、
紗弥加『ジェイ、私、その人と付き合うことにしたの。
だからジェイとはまた家族みたいな関係に戻りたいの。
じゃっ、私、彼と会う約束があるから』
吹っ切れたかのように晴れ晴れとした笑顔で紗弥加はジェイに別れを告げて走り去っていった。
ジェイ『……………………。えぇぇぇぇぇぇぇ!?
バカ響ぃぃぃぃ! 絶対に殺してやるッ!!!』
レノン『実はさ……』
レノンがゆっくりと切り出す話を一言一句聞き逃すまいと響はレノンを見つめながら真剣な眼差しで見つめた。
レノン『実はさ、この間、ジェイと久々に飲みに行ったら……。
たまたま昔俺達と一緒に仕事をしたことのあるモデルの子に
会ってさ……』
響 (ははぁん、レノンってばその子に告白されちゃったのね♪
おあいにくさまね♪)
響は少し勝ち誇ったような気分になり、上機嫌でレノンに言った。
響 『レノン、レノンがそんなに気に病むことないのよ。
もう、優しすぎるんだから。スパッと振ってやればいいのよ。
その方が相手もすっきりするんだし』
レノン『………………。
ごめん、響。実はあの日からその子が気になって仕方がないんだ。
悪いんだけど、別れてくれ。
じゃぁ、今からその子を誘って飲みに行くよ』
爽やかすぎる笑顔で響に別れを告げて颯爽と去っていった。
響 『……………………。うそぉぉぉぉぉぉぉ!レノーーーーーン!
馬鹿ジェイ! 許さないんだからぁぁぁぁ!』
――――ジリリリリ……
――ガバッ!
ジェイ『――! はぁ、夢か……』
――――ピピピピッ……
――ガバッ!
響 『――! よかった……夢なのね……』
〜所変わってダイニング〜
ジェイ『サーヤ、それ取って』
響 『紗弥加、それ取って』
紗弥加『はい、どうぞ』
ジェイ『俺が先だっ!』
響 『私が先よ!』
ジェイと響の間で火花がバチバチと音を立て、飛び散っていた。
紗弥加『ねぇ、なんか、いつもに増してあの2人の間に
火花が散ってない?』
レノン『本当だね……。
いつもは何だかんだ言ってもジャレてるって感じだしね』
涼 『どこかでなんか悪いものでも食べたのかしら……』
ジェイと響の壮絶なバトルを見ながら、原因が偶然にも夢見が悪かったとは知らない紗弥加、レノン、涼の3人は頭を悩ませていた。
涼 『やっぱり、似た者同士ってことかしら……』
そんな涼の一言に「やっぱり仲がいい」と3人が納得していたのをジェイと響はつゆ知らず、バトルを繰り広げていた……。
〜おしまい〜
≪とある男の悲劇≫
――これは、ジェイが日本に来て間もない頃のお話……。ご機嫌に鼻歌なんぞを歌いながら学校から帰ってきていた。
ジェイ(今日もたくさんラブレターをもらっちゃったぜ
俺ってやっぱりモテモテ♪)
行きかう人々もまだ中学生のジェイにため息をつきながら横を通り過ぎていく。そんな状況を楽しみながら歩いていた。
男 『そこの君、芸能人になってモテモテの人生を送る気はない?』
ジェイ『…………』
男 『君の家ってどこ?』
ジェイ『俺んち? そこだけど?』
男は家を確認するとジェイに見られないようにニヤリと笑った。
男 『芸能界に興味ない? モテモテの人生を送れるよ?
とりあえず、おじさんと一緒に事務所にきてみない?』
ジェイ『…………、芸能界に入らなくても十分モテてるから。
それに、俺、もう事務所と契約してるし』
男 『小さい事務所なんじゃない? 君のこと、見たことないなぁ』
――――――プチン……。
ジェイ『俺達の事務所を馬鹿にするなッ!』
ジェイの大きな声とともに男は地面に崩れるように倒れこんだ。
ジェイ『おじさんさ、モテないだろ。
じゃぁな、警察にも家族にもこのことは黙っといてやるよ』
そう言うとジェイはヒラヒラと手を振りながら去って行った。
男の急所を思いっきりジェイに蹴り上げられたその男は行きかう人々に好奇の視線を浴びせられながらも、数分間そこから身動きの取れない状態が続いたのは言うまでもない……。
〜続く〜
レノンは学校からの帰り道、バスを降り、事務所への道のりをテクテクと歩いていた。
男 『ねぇ、そこの君、どこ行くの?』
レノン『…………』
男 『どこかいいところのご子息みたいに上品だね。
おじさんさぁ、困ってるんだよねぇ……』
レノン『へぇ……』
男 『ちょっと一緒に来ておじさんの悩みを
聞いてくれないかなぁ?』
レノン『…………、おじさんの悩みを聞いてあげたところで
俺では何の解決もしてあげられないと思うけど?』
男 『君、いいところのおぼっちゃまだろ?』
レノン『…………』
男 『おじさんの話を聞いて可哀想に思ってくれたら
ご両親に伝えてくれればいいんだけどなぁ』
レノン『…………、俺を誘拐したらきっとおじさん、
普通に世間を歩けなくなると思うよ?』
男 『えっっ?』
レノン『昔もいたんだぁ、俺を誘拐しようとした人。
その人、今もこの世にまだいることはいるけど、
あれって生きてるって言うのかなぁ?』
男 『それってどういう意味かな……』
レノン『そのままの意味だけど?』
男 『…………』
レノン『どうする? 一緒に行こうか? 話を聞きに――――』
男はあれやこれやといろいろと想像し始め、身震いをした。
レノン『おじさん?』
男 『…………』
硬直している男をしり目にレノンは颯爽とその場を去って行った。
〜続く〜
ランドセルを背負い、颯爽と歩く美少女がいた。その美少女をじっと舐めるように見つめる男がいた。
男 『お譲ちゃん、君みたいに綺麗な女の子、初めて見たよ。
おじさんと一緒にパフェでも食べない?』
美少女『…………』
男 『お譲ちゃんはパフェ嫌いかい?』
その美少女は背負っていたランドセルを肩からはずし、思いっきり振り上げ、男にめがけて振り下ろした。
美少女『人をお譲ちゃん、お譲ちゃんって失礼にもほどがあるわ。
私には響って名前があるのよ!
それに私が綺麗なのは当り前よ!
いつか出会う運命の人のために毎日磨きを
かけてるんだからっっ!』
思いっきり殴られた肩をなでながら男は体制を立て直そうとした。
男 『響ちゃんか。それは失礼をしたね。響ちゃん、おじさ……』
――――ボコッッ!
今度はランドセルを体制を立て直そうと前かがみになっている男の顔めがけて振り上げた。男はそのまま今度はのけぞる形になってしまった。
響 『私があんたなんかについて行くわけないじゃない。
寝言は寝てから言いなさい!』
響のランドセルが見事鼻にヒットした男はポタポタと流れる鼻血を抑えながら響の肩を掴もうと手を伸ばした。
響 『キャァァァァァァ!!』
響の叫び声と共に人が集まり始めた。男の周りに人だかりができ始め、慌てふためく男をしり目にその場をそっと去って行った。
響 『せっかくお気に入りのランドセルだったのに、
汚れちゃったじゃない。許せないわ。弁償させればよかった』
男を殴った個所を丁寧に何度も拭き、拭いたハンカチを公園のゴミ箱に投げ捨てた。
響 『このハンカチもお気に入りだったのに……。
もう2、3発殴ってやればよかった』
響はそう言うと家へと向かう道をテクテクと歩き始めた。
男はというと、鼻を抑えながら人込みをかき分け、その場を走り去って行ったらしい……。
〜続く〜
男 『お嬢ちゃん、何してるの?』
紗弥加『…………』
紗弥加は家から目と鼻の先にある公園でたまたま遊んでいた。
男 『お嬢ちゃん、お家はどこ?』
紗弥加『……あ……あそこ……』
紗弥加の指す方向にある家を男はじっと見つめ、フッと笑みがこぼれた。その笑顔を見た紗弥加は恐くて身動きも出来ず、固まったままになってしまった。
男 『お嬢ちゃん、可愛いねぇ。お名前は?』
紗弥加『…………』
男 『オジチャンと美味しいケーキでも食べない?』
紗弥加『……い……いらない……』
男 『じゃぁさ、オジチャンと楽しい所へ遊びに行こうよ』
そう言うといかにも怪しそうなその男は紗弥加の手を掴んだ。紗弥加は手を掴まれ、涙が瞳を潤ませた。
男 『あれ? オジチャンは怖くないよ〜?
お嬢ちゃんのパパとママのお友達だからね〜』
紗弥加の表情に少し明るさが増したのを男は見逃さなかった。
男 『お嬢ちゃんのパパとママからお嬢ちゃんに渡して欲しいって
頼まれてたものがあるんだ。一緒に行くかな?』
紗弥加『……うん』
男は紗弥加の手を引き歩き始めた。
――――バシッッ!
???『何してんのよ!』
男の背後から持っていた大根を思いっきり殴り付けた。
紗弥加『あっ、谷原パパ。
このオジチャンがね……、パパとママから紗弥加にって
頼まれたものがあるんだって』
涼は紗弥加の腕を掴むと、サッと自分の背後に隠すように回らせた。そして涼はキッと男を睨み付け、大根で殴られ、頭を抱えてうずくまる男に買い物袋でバシ、バシと殴り付けた。
涼 『誰か〜! 誘拐犯よ〜! 警察呼んでちょうだぁい!』
数分後、買い物袋に入っていた玉子やら、野菜やら、牛乳やら……、とにかく入っていた食材まみれになり、異様な出で立ちと、異臭を撒き散らしながらその男は警官に連行されていった……。
〜後日談〜
どうやらその男は昔、ジェイ、レノン、響にも声をかけ、撃沈していることが判明した。
この男にとってこの面々は鬼門だったらしい…………。
〜おしまい〜
あとがき
初めて私の作品に起こしになられた方、初めまして。
何かでお読みいただいた方、またお会いしましたね。
お読みいただきありがとうございました。
なんだかんだと調子に乗って第2弾も公開する運びとなりました。
このパロディシリーズは思いついたら書くという感じで進めていけたらな……と思っております。
お読みいただき、こんなパターンの時はどうなんだろう?
というリクエストがございましたら、お気軽にコメント等くださると励みになります。
この先、どこかでまた違う作品でお会いできることを心よりお待ちしてます。
ではでは、また(^▽^)/