電車の中の鶯(2)
僕はいつも「普通」でありたい願っている。
地元の中堅私立大学を卒業し、地元の企業に勤めて3年。
見た目が良いわけではないのだが、
周りに不快感を抱かせないように、
身だしなみは整えているつもりだ。
自分でも特出するところのない、
普通の人間だと思っているのだが、
電車に乗ると、その思いは覆される。
「クスクス」
女子高生の笑い声が聞こえてくる。
聞こえるか聞こえないかの微妙な声で
僕の耳の中を独占する。
「あの人、気持ち悪くない?」
「あの人、変だよね?」
そう陰口を言われているような気がする。
背筋に笑い声が絡みつく。
〝ああまただ。何かおかしいって思われているんだ。〟
そう思って、僕は彼女たちを見ないようにして
車窓の外に目をやる。
彼女たちの声に聞き耳を立てている自分から目を逸らすように。
早く、早く、早く…
この監獄から逃げ出したい。
早くここから出してくれ…
「あなたの肩をお借りしてよろしいかしら?」
その時、耳元でとても綺麗な声がした。
ふと声をした方を振り向くとそこには、
とても綺麗な緑色の小さな鶯(うぐいす)が2羽飛んでいた。
私は彼女たちの綺麗な声と姿に圧倒されて、
二つ返事で「どうぞ」と言ってしまった。
鶯の彼女たちは少し会釈をしてから、僕の両肩に軽やかにとまった。
重さをほとんど感じないくらい軽い。
そして、彼女たちは僕の耳元でおしゃべりを始めた。