![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/170001313/rectangle_large_type_2_84e3977555ab8d7dd81823926daabbdc.png?width=1200)
パンの中には(1)
ある日の帰り道、小さなパン屋を見つけた。
「こんなパン屋があったんだ。」
そう思いながら店の前を通り過ぎようとしたが、パン屋から漂ってくる良い香りに釣られて、つい足を止めてしまった。夕方の16時。この時間はお腹が空いていなくても、何か食べたくなってしまう。私は美味しい香りのするお店の中に足を踏み入れた。
小さなお店の中には、よく見かける美味しそうな手作りパンが並んでいた。丸くてツヤツヤしたパン、チーズやハムが乗った食欲をそそるパン。おやつパン、おかずパン、食パン、フランスパン。たくさんのパンが並んでいて、ついつい全部トレーに載せてしまいたくなった。そんな衝動を抑えながら、パンを選ぶ。
その時、気の良さそうな女性店主が鉄の盆に新しく焼き上げたパンを載せて、厨房から出てきた。
「クリームパン、出来立てですよ。」
そう言われると、今まで迷っていたものよりも、そちらの方が良さそうな気がした。私は出来立てのクリームパンを2つトレーに乗せて、レジに進んだ。店主が紙袋にパンを入れて手渡してくれた。袋越しにまだ出来立ての暖かさを感じた。
「早く家に帰って、コーヒーと一緒にこのパンを食べたい。」
暖かなクリームパンを小脇に抱えて、足早に家に帰った。