【242日目】家庭内ロンリー
February 11 2012, 3:48 PM by gowagowagorio
9月29日(木)
昨夜遅くまで起きていたのがたたったのか、目覚めると既に8時を周っている。
いつもは、ナツモを寝かしつける時に「ポリポリしてー」と言われナツモと一緒にベッドに乗って寝転がると、自然と眠くなる。今はその必要がないため、全然眠くならないのだ。
それにしても、普段ならミノリが6時半頃に目覚めて僕の顔をぺちぺち叩いて起こしてくるとうのに、今日はどうしたというのだろう?部屋にミノリの気配はない。
ベッドを抜け出してリビングに行くと、ミノリはエリサに遊んでもらっていた。どうやら食事ももう済ませたようである。この4日間でミノリは学習したのだろう。ダメ親父の起きる気配がなかったら、自力でリビングへ向かえばより早く朝食にありつけるという事を。
少なくとも昨日までは、僕が起きるまで、空腹を訴えてグズグズ言っていたのだ。一昨夜といい、今朝といい、ミノリはどんどん自立していく。
やるな。僕は感心しながら食卓に着く。
すると、ミノリが大層嬉しそうにエリサの腕を離れ、全力で僕の足下へ這い寄ってくる。そうかそうか、特別何かをしてやらなくても、そばにいるだけで、お前は俺の事を慕ってくれるのだな。同じ時間、同じ空間を共有するというのは大切な事なんだな、と、一人納得してトーストに噛り付いていると、とたんに足下のミノリが不機嫌な声で唸り出した。
「ゔゔゔ、ゔゔゔ」
そこで僕は気が付いた。なんてことはない。コイツは父親を慕って来たわけではなく、僕が食べているトーストをせしめようとやって来たのだ。
もう朝食は済ませただろうに。仕方がないのでトーストの耳をちぎってはミノリに差し出す。
僕の足元に座り込んだミノリは、僕の手から嬉しそうにそれを受け取ると、むしゃむしゃと頬張る。ミノリはある程度満足すると、シャカシャカとエリサの元へ這い戻っていった。
食卓に取り残された僕はその背中を唖然としながら見送る。やっぱり猫みたいなヤツである。
−−
朝食後、ミノリを入浴させる。
シャンプーをするとき、シャワーで頭からバシャバシャお湯をかけると泣くのだが、構わずかけ続ける。今のうちから鍛えておけば、早く水に慣れるかも知れないからだ。
ナツモが同じぐらいの頃、やはり同じ事を考えてバシャバシャお湯をかけていたが、ナツモの場合は、毎回ほとんど死んでしまいそうな声で絶叫していたものだ。
それでも無理矢理頭を洗えているうちは良かったが、やがて言葉を発して自己主張ができるようになってからはもっと大変で、ほんの半年前までは頭を洗う事自体を拒否されて苦労した。
ミノリはシャワーをかけてもそこまで泣き叫ばないので、もしかしたらナツモよりかは水に慣れるのは早いかも知れない。
入浴後、既にとろんとした眠そうな目のミノリを胸に抱く。
ミノリのクセなのだろう、抱っこされると必ず僕のTシャツの胸ぐらを両手で掴み思い切り引っ張って来る。そして何故か一生懸命Tシャツの中を覗き込む。僕の身体ならフロ場で沢山見ているだろうに。
おかげで僕の持っているTシャツはほぼ全て、襟元がだらしなく伸びてしまっている。困った物だ。
ミノリが寝てしまうと、バックパックを背負って自転車で街へ繰り出し、スターバックスで日記を書いたり、本を読んだりして過ごす。
この4日間で、ミノリの世話に関しての分担が自然と出来上がってきた。朝食を与え、入浴を済ませ、朝寝をさせるところまでが僕の担当、午後はエリサの担当という風に。どちらかが言い出して決めたと言う訳ではない。まるで海岸の地形が形作られるように、自然とそうなったのである。負担のバランスは明らかにエリサに偏っているのだけれども。
有閑ムッシュ的生活は優雅なものだが、ほんの4日でさすがに飽きてきた。
どうせミノリの世話をエリサに頼っているのだから僕はそれに甘えるなら思い切って何処かに遠出でもすればいいのだろうが、何故かそういう気分にもなれない。自由すぎる時間を一人持て余している。
日本にいるアキコとナツモから、もっとスカイプがあるかとも思ったが、そうでもなく、今日も夕方、申し訳程度に一言話して終わりである。