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episode2.「私、ハゲました。」その時母は、、、

10円太郎(10円ハゲ)との共同生活が始まって半月がたった頃、わたしは母と人生2度目のホノルルマラソンに行くことになっていた。

ホノルルマラソンは母の夢であり、日々を前向きに過ごす原動力にもなっていると思う。
もちろん、それはわたしも同じで、この日を今か今かと心待ちにしていた。
そんなホノルルマラソン直前に巻き起こったハゲ騒動。

わたしは母には言わないつもりだった。
いつか10円太郎がわたしのもとからいなくなったら、「あの時実は、、、」くらいな感じでネタとして話せばいいと思っていた。
だてに娘を29年やってきた訳ではない。わたしには分かる。もしそれを言ったら、きっと母は心配して涙を流すだろう。

だから言わない。つもりだったのに。

その頃、10円太郎はちょうど絶好調の脱毛期を迎えていた。
(500円太郎に改名してもよかったかな、)

昔、お人形のメルちゃんの髪の毛をこれでもかってくらいいじり倒していたのと同じように、鏡に向かってこうでもないああでもないと、どうにか10円太郎が見えないように隠すevery morning。
(最近英語の勉強を始めたせいか、それともさっきラップバトルの映像を見たせいか、、、)
家でひとりだと朝からそんな葛藤もできるが、ハワイで母と4泊となると隠し切れるかどうか、、、
いや、隠し切れるかどうかじゃない、隠すんだ、
と意気込んで関西空港で母と合流。ハワイへと飛び立った。

しかし空港でも飛行機でも、ふいに母に背後を取られるとソワソワしてしまう。
絶対にバックポジションを取られてはならない。
ミッションインポッシブルの開始だ。まるでレスリング選手のように機敏な動きで母を交わした。

でも、、、今まで気にしたことがなかったが日常生活で相手にバックポジションを取られる場面は結構ある。
例えば1番厄介なのは下りのエスカレーター。
あれでバックポジションを取られた日にゃ、カンカンカーン!一発KOだ。 
あんなに後頭部を無防備に相手に晒してしまうポジションはない。

そんなこんなで無事ハワイに到着した時には気疲れでヘロヘロになっていた。
この感じで4泊6日か、、、正直無理だと思った。もし仮にわたしが吉田沙保里選手並の機敏な動きでバックポジションを取られず、乗り越えたとしても、その頃には私の心はそりゃーーーもうハワイの砂浜くらいからっからになってしまう気がした。

ハワイに到着すると暖かい気候と陽気な音楽で母のテンションも絶好調。
ホテルに向かって意気揚々と歩いていた。

今なら。

すまない、母よ、弱い娘を許してくれ、、、

わたし:「あ、そういえばさ〜、なんかいつの間にかちょっと髪の毛はげちゃってんな〜もうやんなっちゃうわ〜」
母:「え、、」(10円太郎確認。)
母:「や、、、」(言葉失う。)
わたし:「まぁ、一応病院は行って薬もらったから全然大丈夫やねんけどな〜」
母:「大丈夫ちゃうわ、もう、ほんまそんな仕事頑張らんでいいからぁあぁあ〜(グスン、😢)」
わたし:「まぁハワイの陽気な雰囲気でストレス吹き飛ばすわ〜😂」

やはり泣かせてしまった。
29歳にもなって母に心配をかけるなんて、困った奴だな、わたしは。

しかし、さすが前向き親子。
その後は、
「すみません!朝の髪の毛チェックお願いしまーす!」なんて、ハゲてることもネタにしながら笑って過ごした。
ありがたかった。
こうゆう時は心底心配されるより、ネタにして一緒に笑い飛ばしてくれる方が気持ちが楽らしい。
(母はそれも分かって心配しつつも明るくいてくれたのだと思うが。)

10円太郎との共同生活は、落ち込むことばかりではない。
改めて自分が恵まれた環境にいることを再認識させてくれるきっかけでもあった。

これからも仲良く行こうぜ、10円太郎!🤝
to be continued.

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