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霧の街、偽物の京都

高校卒業の日、帰りのスクールバスが出る時刻が迫っていた。名残惜しく数人で残って話す。バスに乗れなくても、少し歩くけど一応、電車もあるからと、なんとなく時間を気にしながらも教室に残っていた。

「もうこのままさ、どっか行かない?」

冗談混じりに言うと、誰もが同意して親にも連絡せず、京都へ行くことになった。

教室を出ると緩やかな螺旋のエレベーターがあり、担任に見つかったので逃げるように学校を出た。
円形の窓の外は、水中。半分から3/4ほど水に使っていた。

走って逃げた先は天神駅で、地下にはラデュレがあった。マカロン食べたいなーなんて、思ったけれど京都へ向かうのだから何も言わなかった。

そうしたらそれは同級生にバレていて、今マカロン見てたでしょ! と怒られた。

電車に乗った記憶はないが、気付いたら三条辺りにみんなでいた。三条と言っても、広島の本通りにも似てたし、長崎の中華街にも似ていた。

かに道楽の動くかにの代わりのように、大きな木の窓が定期的に自動で空いて、ピエロのような顔の、でもクラシカルなメイドの格好をした3人が動いて宣伝するような看板が、喫茶店に付いていた。

どこに行きたいとも言えず、ストーンマーケットへ行きたがる友達に着いていった。
ペリドットにするか他のにするか悩んで終わりそうになかったので、気になる喫茶店があるからと1人で店を出た。

少し歩くと、なんとなくライト商會の近くに来たようだった。気になっていた別の喫茶店は休みだった。
ライト商會に行こうとして歩くけれど、景色は似ているようで違う。霧が濃く、不気味だった。

より不気味にする者達がいた。イギリスの近衛兵がぞろぞろと歩いている。霧でよく見えなくても、黒くて長い帽子と赤い制服は目立つ。

奇妙に思いながらも目を見ないように、できるだけ離れてすれ違った。

また少し歩くと、京都の知り合いに出会った。ちょうどよかったと安心して、地図を見ながらここに行きたいと尋ねると、かなり遠いことが分かった。地名は漢字で5〜6文字あり、その全てが見たことないような読みの分からない漢字だった。

諦めてやっぱりライト商會に行ってゆっくり待つことにした。また歩く。そうしたらまた大勢で列になって歩く集団とすれ違う。今度はアメリカの囚人服をや着ていて、ダラダラと摺り足で進んでいる。

霧が濃い。知っている街並みが混ぜられて、知らない京都が出来上がる。
いっしょに来た友達は、誰がどこにいるか分からない。

歩いても歩いても、ライト商會には辿り着けなかった。

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