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車窓を流れる景色を全て描き留めておける才能
ありんごです
車窓の景色をすべて描いてしまう人、について書こうと思う。物凄いスピードで走る列車の中で、私はその人のことを思い出す。才能ってすごいんだ。
数年前、テレビで見たその人に私は度肝を抜かれた。その人は新幹線に乗って、車窓に流れる景色を描ける。それだけ書くとできそうな気がするかもしれないが、ちがうのだ。
出発駅から到着駅の間の景色を「全部」横長の巻物みたいな紙に描いてしまうのだ。たしか、長さ何メートルだったか?忘れてしまったけれど、尋常じゃない長さの紙を使って景色をそこに描いていた。超横長パノラマ写真とでも言おうか。その絵を後で見返すと、ちゃんと正しい位置にランドマークだってある。木々もちゃんとある。その人は出発駅からひたすら窓の外を眺めて描いているけれども、その間出発駅からの距離を正確な縮尺を以て紙の中に落とし込んでいるのだ。目線は常に窓の外を眺めている。紙ではなくて窓の外。手元はシャカシャカと動き続けている。絵を描くほどに巻物がくるくると周り、巻かれた部分が減っていく。描いた絵は横に長く伸びて床に落ちて丸まっていく。美しい。最終的に出来上がった絵も美しい。世の中、すごい才能を持った人がいるものだ。私はその様子を眺めながら唖然としていた。
人間、本当にすごいものを見ると「すごーい」しか言えなくなるんだとその時知った。当時まだ学生だったのだが、周りに凄さを伝えたいのに私がすごい人がいて!としか話せないので、あまり伝えられた感じがしなかった。残念だ。
その人は今何をしているんだろう。今も絵を描いているんだろうか。偶然特急電車に乗ったら近くにその人がいて、絵を描いている姿が見られたりしないだろうか。今日も車窓を流れる景色を綺麗と思う瞬間はあるけれど、一瞬で流れ去っていく。その瞬間ですらも描き留められる気がしない。動体視力の違いだろうか。空間認識力の違いだろうか。もちろん画力もちがうけど。ああ、一度でいいから描く姿を眺めてみたい。
ありんご
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