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第18話 最終話 本来の姿で
翌朝 スタッフ控室。
雅楽のモーニングコールが部屋に流れる。
(いやいや、、、。今朝の運動はいいや、、、。もう一寝入りだ。)
玉二郎さんから電話で
「アマビエ様のデッキに集合!」とだけ言い電話が切れる。
(昨夜の余韻に浸っていたい~という甘い考えは通用せずだ)
眠い目をこすりカーテンを開けると、アイクがベットから半分落ちながらもイビキをかいて寝ている。
私「アイク!起きて。私達呼ばれてる」
アイク「何?朝ごはんならいらないよ~昨日食べすぎた」
私「いいから着替えて!行くよ」
面倒がるアイクを連れて100号室へ。
ジャグジーには泡だらけの短パン姿のアマビエ様と玉二郎さんが入って格闘しながら何かを洗っている。
私「お早う御座います。何をお手伝いしましょうか?」
玉二郎「待っていたよ!早速だけど、小さい方のネズミを洗い終えたから捕まえて爪を切ってくれ」
アイク「え~~~~~あのネズミ達連れてきたの!?どこ?」
探すとテーブルの下で白くてフワフワ毛のちびネズミちゃんがお座りして両手でチーズを食べている。
私「可愛い!おいで、おいでネズミちゃん。爪切りますよ」
そっと抱きかかえると、ちびネズミちゃんが小さな爪をニュッと出す。
アイクは爪切りを持ち「痛くないからね、そっとやるよ」と器用にチョンチョン切っていく。
私「随分伸びてるね~これじゃ、引っかかって歩けないね」
アマビエ様「あらやだ。お風呂のお湯が真っ黒じゃないの~シッターさんに任せっきりだったけど、結局一度もお風呂入れて貰えなかったのね?ママが悪かったわ~」
アマビエ様に抱かれている巨大ネズミ。
洗われてベージュ色になっている。
玉二郎さんが叫ぶ
「さぁ、次は大物がいくぞ!ドライヤーかけて爪切りだ」
犬のトリミングの様に首輪を付けて台の上に大人しく乗せられる巨大ネズミ。
ドライヤーの風を受け気持ちよさそうにしている。アマビエ様がブラシをかけ始めるとお腹をみせて甘える素振りをする。
アマビエ様「よしよし、いい子ね。お腹も真っ白!キレイになって~」
ふわふわに仕上がった巨大ネズミは玉二郎さんの手にニョキッと大きな手を乗せて、爪も大人しく切らせている。
昨日とは別の生き物の様だ。
私「ねぇ、アイク~もしかして一昨日、私達に攻撃して爪を立ててたんじゃなくてさ~「切ってちょうだいよ~」って言ってたのかもね?」
アイク「あっ、そうだったのか!僕たちの勘違いだったのかも!」
私とアイクは大人気なかったと反省しながらジャグジーを掃除する。
海風に吹かれながら綺麗にネズミちゃんの毛がそよぐ。アマビエ様と玉二郎さんからチーズを貰いながらの朝食を楽しむ姿は幸せな仲良し家族だ。
(今頃、息子家族もワイワイ賑やかにご飯食べてる頃かな~)
アイク「何を羨ましそうに見てるの?僕たちも朝ごはんに行こう!」
私「そうだね!お腹すいたよ、急ごう!」
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~下船準備~
船が港に近づく。
夢のような二泊三日だった。
ドリーンはギリギリまで笑顔で動き回り、
次のオファーが来るように船内の写真を撮ったりネットに記事を書いたりしている。
~着岸~
七福神様方が見送りに出る中、ペットを抱えたセレブな一家風のアマビエ様が登場。
「皆さん本当に有難うございました。しばらくは玉ちゃんとこの子達も一緒に東京観光してから帰るわ。」
リュックを背負ったアイク「ねずみランド!?僕もついていきたい~」と言って皆んなを笑わせる。
ドリーンがスーツケースを持って笑顔で登場。
「では、皆さん色々有難うございました。お陰様で初仕事も無事終えることが出来ました。感謝致します。おじさま、おばさま、皆様もお身体に気をつけて~ありんさんをくれぐれも宜しくおねがいします。」
ドリーン「ありんさん、しばしのお別れね。七福神様達は元気そうだし、まだまだ介護がいらないようだから今のうちに船旅を楽しんでね!」
私は帰れないのだ。少し悲しい。解っていても泣けてきそうで頷くのが精一杯。
ドリーン「半年頑張れば有給休暇もつくし、神様達が天に戻る日は自由だからお休みと合わせて里帰りも出来ますよ~もし辛くなったら日本全国直ぐに迎えに行きますから!」
私、涙を拭く。
アイク「電話くれれば僕、直ぐに飛んでくるよ~大丈夫だよ」
私「うん、お部屋そのままにしておくから絶対帰ってきてよ!」
アマビエ様「貴女なら大丈夫よ!次のゲストにもお勧めしておくわ。アロマ&ヒーリングとても癒やされたわ。ありがとね」
玉二郎「ありんさん、良かったらコレ使いなさい~七福神オーラに負けないで、神様からの頼まれ事でも嫌なことや出来ないことはキッパリと断るんだぞ。」と掛けていたサングラスをくれた。
アイク「え~!い~な~。掛けてみて?」と泣いてる私にサングラスをかける。
(玉二郎さんの輝く瞳をじ~っと見つめてもドキドキしない(*^^*))
恵比寿様「大丈夫だよ、皆とこれから仲良く暮らせるよ!」と、オーラ全開にして迫ってくるが、これも眩しくない。大丈夫そうだ。
まさみナースも私の背中をバンバン叩きながら「アタシたちと笑って暮らそうよ!ひゃひゃひゃ~」と笑う。つられてドクターも七福神様も笑って頷く。
下船して行くアマビエ様は母親の表情でペットネズミちゃん二匹を満足そうに抱きかかえている。玉二郎さん、アイク、そしてドリーンが後に続く。
宝船が港から離れていく。
アマビエ様の大きなお身体もどんどん小さくなっていく。
私も大きく手を振り返す☆ここが私の新しい職場☆毎日を楽しんで生きようと決める。
完