第13話 地下室の腹黒い奴
100号室 アマビエ様のお部屋
部屋から続くデッキには、沢山の光が降り注がれている。
波が穏やかで最高のクルーズ日和。
サングラスをして日光浴をされているアマビエ様と玉二郎さん
そこに、私とアイクはへお掃除道具を持参し、ご挨拶に伺う。
私「アマビエ様、お早う御座います。昨夜はご挨拶せずに失礼いたしました。私、浦島ありんと申します。この旅の間、アイクさんと一緒にお手伝いをさせていただきます。」
アマビエ様「そうなのね。宜しく。昨夜は迷惑かけて悪かったわね~アイクは慣れてるからいいんだけどさ」
アイク「そうだよ、アマビエちゃん。久しぶりに会ったけど更に大きく、黒くなっていて僕びっくりしたよ~」
(ここも親戚なの???)
アマビエ様「そうだ、アイクに頼みがあるのよ。地下に私のペットちゃんを二匹預けてるんだけど餌を上げてきて貰える?」と。
アイク「ボク、行ってきます~」と飛ぶように消えてしまった。
アマビエ様「だからさ~何で人の話をちゃんと最後まで聞かないのかしらよ。勝手に解った気になってさ、アイク・エンジェルは困ったもんだわ。」
玉二郎さんがフフッと笑う。
アマビエ様「掃除はいいから後を追いかけてくれる?この袋に餌と懐中電灯が入っているから持って行ってあげて」
私は大急ぎでアイクの後を追う。
~関係者以外立入禁止と書いてあるドアの前で~
トイレを我慢している子供の様に鍵を持ってモジモジしているアイクを見つける。
私「アイクどうしたの?」
アイク「ありんちゃん、ここ電気つかないじゃん、ボク暗い所怖いんだよ」
私「アマビエ様から餌と懐中電灯預かってきたよ。」
アイク「あああぁ良かった。鍵開けたから入ろ。ね!」
私を先に入れ、私のポロシャツを握りながらオドオドついてくる。
ドアが大きな音を立ててバタンと閉まる。
暗闇感が増す中、床を照らしペットちゃん達を探す。
小さなゲージに姿はない。
私「あれ?脱走でもしたのかしら?」
突然、ぎゃ~~~~~~~~~~とアイクが叫ぶ。
振り向き、アイクを照らすと背後の大きなゲージの中、黒い大きな固まりがうごめいている。爪が延びてアイクのシャツの首を捕まえている。
よく見るとビーバーかと思うほど巨大化した灰色ネズミだ。
私は慌てて、アイクの身体からネズミを引き離そうとするが、爪が引っかかり難しい。
持っていた袋で叩くとシャツが破けて離れられた。
アイク「あ~怖かった。悪霊かと思ったよ~臭くて吐きそうだ」
今度は私を狙って執拗に爪がのびて来る。
私のズボンに爪が刺さり、黒い腹を見せながらズリズリと下がっていく。その重みでズボンが破ける。
私「いや~~~~~~~~。やめて!ペットちゃんて、お化けネズミじゃない!アイク、袋から餌出して!早く上げて帰ろうよ~(泣)」
アイク「ちょっと待ってよ、僕のズボンポケットにも何か居るよ~小さいネズミ?勘弁してよ!」と、しっぽを持ちあげると黒ネズミが爪を立てしがみつく。
ポケットが破れチョコボールが落ちるとズボン伝いに地面に降りて、それを咥えて大きなゲージに逃げ込む。
大きなネズミと小さなネズミがチョコボールを取り合いして噛み合っている。
私「小さなネズミが食べられちゃうよ!早く餌をあげなきゃ!」
絶妙なタイミングでドアが開き、光が差し込む。
玉二郎「お前ら何やってるんだ!こんな事だと思ったぜ。」と言い、
玉二郎「おーおー可愛いネズミちゃん達、怖かったね~。お腹も空いてるだろう?さぁ、ご飯を腹いっぱいお食べなさい」
大きなゲージに居る黒いビーバーにしか見えないネズミと、そのゲージに自由に出入りしてる小さなネズミを交互に撫でながら餌をくわえさせている。
私達は酸欠の様にヘロヘロになりながらドアの外に出る。
気がつけば機関銃で打ち込まれた様に、数カ所、シャツやズボンに穴が空いてボロボロに引き裂かれている。お互いに情けない姿だ。
初めての試練がこれか。この先が思いやられる。
玉二郎さんが出てきて呆れた様に言う。
「お前ら~あいつらの玩具になってんじゃねーよ。」
アイク「そんなつもりで入ったんじゃ無いですよ」
玉二郎「地下で暗くて腹が空いてりゃ、自分より弱そうなのが来たら玩具にして、ちょっと喰ってみるかってなるんだよ。もっとビシッと毅然とした態度を取れ!」
アイク「解りました。」
私「いつもあんなに凶暴なんですか?」
玉二郎「ん~いつの間にか、あんなになっちまったんだよ。本来影に隠れてチョコチョコ動き回ってるだけの可愛い奴が、今寂しいんだよ、誰からも構って貰えなくて。」
~控室~
泣き顔を洗いボーッと座っていると、笑いながらドリーンが入ってきた。
ドリーン「二人共、ねずみちゃんの玩具にされたって、、、あら、大丈夫!?怪我は無い?」
私「かろうじて血は出ていませんが、、、ミミズ腫れです。半世紀生きてきてネズミに襲われたのは初めてです。」
思い出すと又泣けてくる。
アイク「ありんちゃん、又泣いてるwww」
自分だって半べそかいていたくせに、何故か喜ぶアイク。
ドリーン「此処に着替え出しておくので、シャワー浴びて下船支度お願いしますね。」
アイク「ワーイ観光ね!美味しいもの食べに行けるよ~ありんちゃん、早く泣き止んで行くよwww」
アイクの切り替えの速さが羨ましい。
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