大車輪物語 ~俺たちの轍(わだち)~ ①
フィクションかどうかの判断は読む人に任せます。脳内で「浅草キッド」とかを流しながら読んでいただけると嬉しいです。
「「俺と一緒に、漫才やらへんか?」」
――車輪が、回りだす音が聞こえた。――
時は2019年秋。特技がセパタクローの大本と、田舎の工場あるあるが言える元島は、人力舎の養成所である、スクールJCAに通っていた。二人はそれぞれ、別のお笑いコンビを組んでいたが、授業後に他愛もない話をする間柄だった。
元島「なんか俺、最近上手くいかへんのや」
大本「俺もや」
2人で話をするのは楽しかった。相方の愚痴、お笑い論、好きな女の子の話、有村が当時組んでいたコンビ“あかね荘”の悪口。たくさん喋って笑った。閉館時間が迫り、思い出したように大本が言った。
大本「やっべ、そろそろ新ネタ作んないと」
元島「俺もや」
大本「でも、今の相方と、何か漫才する気ぃ起きひんのよなぁ」
元島「……俺もや」
数秒の沈黙ののち、目が合った。
――何かが始まる予感がして、心臓が鳴った。――
(ここでAwesome City Clubの『勿忘』が流れる)
「「俺と一緒に、漫才やらへんか?」」
同時に、お互いがお互いにそう言った。
そして、翌週のネタ見せ。
大本「どうもー! “大本元島”です。お願いしまーす!」
元島「あんな、軟式野球や軟式テニスがあんねんなら、軟式サッカー部とかもあると思うねん」
大本「何言うてんねん!」
ウケた。
互いに目を合わせた。二人の初めての漫才は、大きな手ごたえを感じて終わった。
大本「いやーウケたなー」
元島「せやなぁ。少なくとも“あかね荘”の『自分の髪の毛で作ったミサンガを自分で食う人』のコントよりはウケとったな」
大本「ほんまや。俺ら、めっちゃ相性いいんちゃう?」
元島「せやせや! この調子なら、どんどん上に行けるんちゃうか!」
大本「ほんまや! これから俺たち二人で、漫才に、バラエティに、大車輪の活躍していこうや!」
元島「大車輪? それええな! 大車輪! 俺たちのコンビ名は、“大車輪”や!!」
……しかし、そのコンビ名が世に知れ渡ることは無かった。養成所のネタ見せに全てを出し尽くした大車輪は、続くJCAライブ、お客さんを前にウソのようにダダ滑りした――
書いていて頭がおかしくなりそうなので、一旦ここで次回に持ち越します。
次回『どうなる大車輪! 人力舎に所属できるのか!?』
お楽しみください。
またそのうちです。