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PARCOプロデュース2019 『プレイハウス』 を観劇した

※極力直接的なネタバレは避けていますが、物語の根幹部分について言及しています。これから観劇予定の方は読まない方がいいです。

PARCOプロデュース2019 根本宗子作・演出の「プレイハウス」を観劇してきた。会場は東京芸術劇場のプレイハウス。
ミュージカルなんだけど歌い出しが演技過剰なかんじじゃないのでたぶんミュージカル苦手な人も見やすい。
そしてこの舞台のポイントは、主要登場人物である「歌舞伎町プレイハウス」で働く風俗嬢を演じているのがGANG PARADE、通称ギャンパレと呼ばれる、実在の女性アイドルグループのメンバーであること。

ここでまず私の持っているイメージについての話。全部が全部じゃないけど特に小劇場にアイドルが呼ばれる時ってお客さんの動員要員として扱われることが多いイメージがある。
複数公演入ってくれるような熱心なお客さんが何人もついてる演者って特に小劇場の世界ではすごく貴重だから。
でもいざ幕が開くとお茶を濁すような作為のないアイドル役とかさせられたり、そうじゃなくてもその子のポテンシャルを生かしきれない薄い役をなんとなくやらされるような。悪い言い方をすると、アイドルとアイドルオタクを舐めているんじゃないかという舞台を何度か見た。

でも根本さんはそういうアイドルと演劇の関係性には中指を立てるように今の彼女達が今演じるべき役と物語を用意し、彼女達が持つポテンシャルを最大限生かす作劇と演出をした。
彼女達のポテンシャル、それは個々のキャラクター、それから日々プロとして磨き続けている歌とダンスのクオリティの高さ、そして、アイドル業界という世界に身を置いているということ。
アイドルである彼女達にとって本業じゃなくしかもおそらく未経験の子もいたであろう演技面をフォローするように厚い俳優陣で脇をしっかり固められ、物語はより説得力を増す。
お芝居を観る楽しさがより増すような、ポップで豪華な舞台装置や衣装も演者や舞台に力を与えていた。

冒頭でも触れたように彼女達は、歌舞伎町プレイハウスという名前のお店で働く風俗嬢を演じる。
アイドルである彼女達が風俗嬢を演じる必然性がどこにあったのかというとそれはたぶんアイドル業界と風俗業界は、「女の子が自由に輝いているように見えるがその裏でその女の子達を束ねているのは大抵男で、その男が無責任で暴力的だと女の子達を平気で傷つける」という点で似ているから。

でもこのお芝居は決して「女の子救われろ、男は死ね」と言っている作品じゃない。「女の子救われろ、男の子も救われろ。」と言っている舞台だと思う。
女の子は時に男から呪縛を受けた存在みたいになってしまうことが多々あるけれど、その一方で男の子もまた男の子に呪われていてそれは「男らしくいなければならない。格好悪いところを見せてはならない。そのためには本音を隠して嘘をつかなければいけない時もある」というタイプの呪縛。なんなら男の子達にかけられたその呪縛が巡り巡って女の子達まで苦しめている側面すらある。

でも誰かを救いうるのは本当は男らしさでも格好良さでもない。
男らしくなくても本当の愛情や優しさを相手に注ぐこと。格好よくなくても自分の本当の感情を伝えること。
それができるのは彼女達のことを本当に愛しているあなた達こそなのかもしれないよ
と、そういう示唆のある舞台なんじゃないかなと私は解釈した。

アイドルも風俗嬢もホストも風俗の客もアイドルオタクも男にも女にも、かけられた呪いの全てを解いて肯定するためにギャンパレのメンバーがこのお芝居を演じる必要があり、彼女達のことを好きでいるファンのみんなに見てもらう必要もあった、そういう風に感じました。






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