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よくある景色の話の一つ

世界中でよくある景色の話の一つですが、現在の気持ちの記録をする目的で文章に起こそうと思います。

今からおおよそ15年前に東京の郊外へ引っ越してきました。リビングから見える景色はほぼ真南で、朝は南東から光が差し込む窓辺です。

窓から見える景色は数百メートル離れた先に緑が生い茂る小高い丘があります。その少し前方にはマンションが2棟建っていて、そのマンションとマンションの間の空間は、春になるとさくらの木でピンク色に染まります。

わたしはリビングの窓からその場所を見るのがとても好きです。リビングで仕事をしているときは目を休めるためにもその場所を見るし、ソファに座りコーヒーを飲みながら少し離れたその場所を見ると気分転換になります。

今から数年前のある日、リビングの窓からその視線の先、さくらの木の空間の左半分が見えなくなりました。わたしの視線と小高い丘との間に家が建ったのです。かろうじて右半分は見える状態でしたので、春になるとピンク色に染まるさくらの木は見えていました。

2022年新春、もうすぐ、小高い丘との間にある空間、さくらの木がピンク色に染める空間は、わたしの家の窓から見えなくなりそうです。視線の先にマンションなのか、店舗なのか現時点ではわからないけど、とても大きな建物の建設が始まっています。右半分の空間も見えなくなりそう。

よくある景色にまつわる話なのだけど、いつもの場所が見えなくなること、見えなくなっていく様子を眺めるのは、なんだか寂しい。

この街、この場所を選んで過ごすと決めたとき、リビングの窓から見える景色が、生まれ育った実家のわたしの部屋から見える景色に似ていて気に入っていました。小さい頃、実家の窓から見える山の色合い、移ろいを感じながら眺める時間が好きでした。

新しく居を構えるこの土地もそんな場所であることが良かった。関東平野に住んでいると、視界に丘や山を見えることが少ないので、特に気に入っていました。

最初に桜が見えなくなった時に建った家、今回桜が完全に見えなくなる建物の場所は、長らく空き地で草が生い茂り、小さな子供がそこで虫取りをしてるような場所でした。いずれ何かの建物が建つであろう土地。

日本全国で過疎化していく地域がある一方、わたしのような都心近郊はコロナの影響もあるのでしょうか、社会が変わり、働き方も変わり、人が次々とこの地域にも転居しています。

風景は変わってしまうのは仕方のないこと、人々が転居してきてくれるのは地域にとって望ましいとも思っています。

ゆっくりだけど変わっていく景色、目の前の景色を見つめながら、何気ない思い、好きだったことを思い起こしてくれたので書いておきました。

今年の春は窓からさくらは見えなくなりそうなので、遠くからではなく、あの場所の近くに行ってみることになりそうです。

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