本田未央と星を目指すことの現在について、その考察
在処と申します。アリカという名前でVtuberをやったり、在処という名前で同人誌を出したりしています。カタカナか漢字かでちょっとした棲み分けをしようという意識がありますが、それはどうでもよい話ですね。
先日十年強苦楽をともにしたアイドルマスターシンデレラガールズのモバゲー版、通称「モバマス」と別れを告げ、センチメンタルな日々を送っております。そんな中で、私の担当アイドルである「本田未央」が、モバマスの中でどのようなアイドルとして育っていったのか、そしてデレステでは今何を目指す存在であるのかについて、彼女がアイドルとして活動していく上でモチーフとしている「星」に着目して、論じていきたいと思います。
モバマスにおける未央の物語
まずモバマスの未央についてです。彼女がゲーム内で星に関して触れるようになったのは2013年、「パーフェクトスター」からです。ゲーム以外では、それより前に彼女のソロ曲である「ミツボシ☆☆★」があります。最初のSRである「ニュージェネレーション」では、衣装に星を象ったアクセサリーが多く採用されていますが、それに関して触れるセリフはありません。初期衣装であるノーマルにも星のアクセサリーがついていましたが、そのときは二つの星が連結したピアスのようなものだったので、おそらく特訓後であることを表したデザインであっただけだと考えられます。ノーマルには特訓前に星が一つ、特訓後に星が二つ、名前の下にデザインされているからです。とはいえ、「ニュージェネレーション」から「ミツボシ☆☆★」、「パーフェクトスター」までのスパンの短さを考えると、最初のSRについて考える時点で、星をモチーフにしてデザインをしていくことも決定したと思われます。
「パーフェクトスター」にて未央が星についてに述べたセリフは「あのオリオン、星がみっつだね。3人並んで、輝くんだ…私たちも…!」です。三人とは島村卯月、渋谷凛と未央のことを指します。他にも、流れ星に願いをした等あります。
今でこそ「星」をイメージさせるアイドルという印象が強い未央ですが、実はここからしばらく星に関しては触れられず、次にSRの二つ名として出てくるのが2015年の「アニバーサリースター」、憧れとしてより象徴的に触れるのは2016年の「オンリーマイスター」になります。「一番星のように輝きたい」という強い意志は印象深く、多くの人に衝撃を与えました。それまでの彼女はアイドルであることをめいいっぱい楽しむ、アイドルとして過ごす青春を駆け抜ける少女でした。しかし、彼女は同時に、他のみんなに負けたくないという想いも抱えていたのです。誰よりも先に輝く一等星のようになりたいという憧れを募らせながら、彼女はアイドルを続けていたわけです。
ここまでの未央にとって星とは憧れであり、自分が目指すものという象徴的な存在でした。「星祭の織姫」では「どうも、ヴェガ本田です。ウソウソ!」というセリフが、「光のプリンセスナイト」では「『私は英雄じゃない。ただ、大切な人の前でカッコつけたいだけ!』」というセリフがあります。深読みかもしれませんが、いずれも自分はヴェガ、つまり一等星や、英雄のような、輝かしい存在ではないと自己否定しているセリフであると読めます。おちゃらけているように見えて、どこか悲観的な、ポジティブになりきれていない一面が垣間見えるセリフであると思います。
彼女の転機は「シンデレラガール」で訪れます。おそらくこのゲームにおいて「シンデレラガール」が一つの到達点であることは、誰もが認めるところでしょう。以降のSRである「スパークルスター」では「私の挑戦はまだまだ続くっ!一等級…ううん、最大級の輝きを、みんなに贈りたいから。」というセリフが、アニバーサリープリンセスでは「輝くよ!星空よりも、まぶしく!」というセリフがあります。いずれも憧れていた一等星、星を越えようとする気持ちが見て取れる、力強いセリフとなっています。その後のSRである「マーメイドスター」では「「星になる」って、簡単な言葉じゃない。でも、〇〇プロデューサーが一緒だもん。みんなの夢を背負って、輝くよ、いつまでも!」というセリフがあり、今度は自分が、憧れられる側になるのだという自覚を持ち始めています。
ラストシンデレラストーリーでは第五話の終盤、「私たちは星だよ!」というセリフがあり、彼女のモバマス最後のSRも二つ名は「キミという星」となっています。モバマスにおいて、未央の物語は、「星に憧れた少女が、やがて自らが憧れられる存在となってステージに立つ」話であるといえます。自信満々に見えて、実は小心者である彼女の性格は、モバマスやアニメ、デレステでも語られているため、知っている人も多いのではないでしょうか。モバマスが十一年以上かけて描いた物語は、一旦きれいに着地したと言えるでしょう。
デレステにおける未央の現在
ではデレステの未央はどうでしょうか。星の印象が強い彼女ですが、実はデレステにおいてはそこまで触れられていません。SSRでは新星を意味する語が入っている「パワー・オブ・ノヴァ」、流星を意味する語が入っている「超光のミーティア」くらいで、実は星に憧れるという話もそう多く出てきているわけではないのです。もちろんこの世界にも「ミツボシ☆☆★」があり、「ステージオブマジック」や「ワンダーエンターテイナー」のイラストから未央が星をモチーフにしているという事実はあるようです。しかし、モバマスほど明確に意識している描写はありません。
この差異がどこから生まれたかと考えると、やはり「シンデレラガール総選挙」の有無でしょう。デレステの未央はいわば、最初に述べた「アイドルであることをめいいっぱい楽しむ、アイドルとして過ごす青春を駆け抜ける少女」である未央がそのまま描かれ続けていると言えます。「シンデレラガール総選挙」は未央のアイドル人生を大きく変化させた存在であることが見えてきました。
では、「シンデレラガール総選挙」がない未央は壁にぶち当たらず、順風満帆なアイドル生活を送っているのかといえば、もちろんそんなことはありません。今彼女は、「みんながそういうものだと思って見ている自分」を打破し、「自分が見せたい自分」を見せることを目標としています。元気で明るい自分だけでなく、様々な一面を持ち、その全てで魅了することを目指しています。その過程で、自分は一人じゃなく多くの人に支えられて輝いていること、たくさんの人の想いを束ねてより大きな光となって輝こうとすることを、自然と目指していきます。総選挙がなくとも未央はアイドルを続けていく過程でそこに至るということを示してくれているのだと思います。
「シンデレラガール総選挙」が未央に与える意味について
現在開催されている「Stage for Cinderella」はデレステにおける「シンデレラガール総選挙」ですね。モバマスでは、他者との関わりの中で、自分ももっと輝きたいという強い憧れを抱いていった未央ですが、デレステではまだその面が強く描かれているわけではありません。しかし、未央がシンデレラガールになったときに貰った曲である「Sun!High!Gold!!」では、「太陽になりたいよ」と力強く歌っており、イベントコミュでも自分の在り方、輝き方に思い悩む未央が描かれています。太陽とは、誰もが思い描く、強い輝きを放つ星であると同時に、皆を暖かく照らす存在でもあります。形は違えども、光り輝いて、誰かを照らす存在に憧れ、目指し続ける未央の物語は紡がれていくのでしょう。一度に五人投票できる「Stage for Cinderella」は、アイドル同士の関わりにより着目した選挙形式であると言えます。相手のことを思いやる気持ちが強く、多くのことに気づいてしまう性格だからこそ、他者と自分を比較して悩むこともある未央にとって、このイベントは大きな刺激となり、新たな物語が始まることは想像しやすいはずです。誰かが意図的に用意したわけではない五人だからこそ生まれるドラマは、未央に多くの可能性を与えるでしょう。星にまつわる彼女の物語は、新たな形となって、私達の前に現れるかもしれません。未央が悩み、もがき、あがいた先に見せる新しい光の目撃者になれる瞬間が、私達に訪れるのかもしれません。「シンデレラガール総選挙」に起因する星への強い憧れが、誰かが用意したわけではないように、高い壁も、私達の予想も、遥か高く飛び越えて、流星のように輝く本田未央を、これからも最前線で楽しんでいきたいですね。
最後に、「シンデレラガール」のあとに出たSRである「スパークルスター」のセリフを引用して、話の締めとさせていただきます。
「プロデューサーと見たい景色、まだまだいっぱいあるよ」