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59.手切金とお手紙
陳述書という裁判所での書面のやりとりは、話が噛み合わなくて最高にストレスでした。ちゃんと話し合いの出来る者同士であれば、そもそもこんな不毛なやりとりをする必要もなく自分たちで話し合って解決できただろうに・・・
夫側の陳述書はどうにもこうにも夫自身が書いているとは思えないし(34.不可能ですが、私は屋上から飛び降りた。)私が書いた陳述書は一体相手側にどう伝わっているのだろうか。とふと思った瞬間に、義母に宛てて書いた手紙のことを思い出していました。
当時、貸したお金を返してもらえない。なのにさらにまた貸してくれと言われる。(3.家族のはじまり。家族のほころび。)そんなことがずっと続いていました。私は最初の一回と最後の一回だけ夫が義母にお金を渡すことを承諾しましたが、その間の何十回かはずっと反対し続けていました。「のんのんくんはなりちゃんと結婚してからお金をあんまり貸してくれなくなった」とか「なりちゃんはひとりっこだから助け合うとかわけあうということを知らない」とか言われるし、反対するのは心苦しいし嫌なものでした。
反対ばかりしていましたが一度だけ、私から義母に直接お金と手紙を渡したことがあります。
それは義母がお得意さまのおうちへたくあんを配達する時に足をすべらせて骨折をし、入院することになった時でした。「入院費用を貸して欲しい」と連絡があり、「入院一時金の保険が50万円おりるのだけど、すぐにはおりないとのことでそれまでお金を貸してほしい」というのです。すぐに払わないと病院を追い出されてしまうと。そんなはずはないだろうと一度はお断りしたのですが、その後も何度も電話がかかってきて、その度夫は「お母さんが病院を追い出されてしまう」と言ってとても悲しそうな顔をするのです。
お見舞いにいくとき、お金と共に手紙を渡したのですが、その手紙の下書きメモが残っていたのでそのまま載せます。
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「お金をお貸しすることについて、私ひとり反対してしまってごめんなさい。
はじめてお母さんに会ったときとても明るくて、頑張り屋で、楽しい話をいっぱいしてくれてまだ結婚前でしたがこんな方がおかあさんになってくれたらいいなぁと思っていました。
結婚後も悩み相談にものってくれて的確なアドバイスをくれたり、料理を教えてもらったり、面白い話をしてくれたり大好きな自慢のおかあさんでした。
でもお金が足りなくなる度、のんのんさんに頼り、あっけらかんと返してくださらないおかあさんの様子を見てしまう度に嫌いになってしまいそうです。
そんな自分が嫌で嫌でたまりません。
今でものんのんさんのことを産んでくださり、素直でやさしくて心の綺麗な人に育てて下さった方なので感謝はしています。
でもお金の相談があるたびに毎回毎回悩み、苦しみ、のんのんさんは私に遠慮して隠し事をしたり、うそをついたり、守れもしない約束をしようとしたりするのでそれも辛いです。
今も、おかあさんが大変なときに私のせいで援助できなかったのんのんさんはきっと苦しんでいると思います。
私はおかあさんのことが嫌いだからではなくその場限りの対処のためのお金を渡すことがお互いにとって、どうしてもよいことだとは思えなかったので反対しました。でも今は後悔しています。
困ったときはお互い様なはずなのにごめんなさい。
これはのんのんさんがおかあさんたちのために本当は渡したかったお金だと思うので、うけとってください。ただこれ以上は無理なのでどうか今回限りにしていただきたいです。」
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義母は手紙を読み終わって封筒の中の50万円の金額を確かめると、勝ち誇ったような顔をして引き出しの中にお金をしまいました。私はそんな義母の姿を見て、「あぁ一生懸命気を遣いながら自分の気持ちを伝えたつもりだったけど伝わらなかったな」と思いました。
まぁ何年もたって久しぶりに読み返してみたら、伝わらない文章でもあったなぁと。義母に嫌われることを恐れてオブラートに包みすぎたけど、きっと当時の私は「手切金です。もう金輪際お金は貸したくありません。迷惑です。」と伝えたかったんだと思います。