53.フレンドリーペアレントルール
調査官調査報告書には「監護開始の違法性については、法的判断に委ねられるが、現在の生活環境に大きな問題は見当たらず、緊急性は乏しい」という内容のことが書いてありました。私は審判前の保全処分を申し立てていたのですが、私側の主張をしりぞけるものでした。
報告書を読み終わり、愕然としましたが、報告書の最後にこのような一文がありました。
本案(監護者指定)については慎重に判断することが必要である。なお、この間、母子交流の機会が途絶えることは子の福祉上問題であり、面会交流は頻度、時間、ともに十分なものが確保されることが望ましい。本案の判断において、双方の面会交流の許容性(どちらの親を監護者とした方が非監護親との継続的かつ十分な面会交流が確保できるか)も重要な要素となることから、一定期間、双方当事者の面会交流に対する姿勢や葛藤を抱える未成年者らの心情への配慮の在り方、監護態勢(直接養育に携わる時間等)を見極めながら、未成年者たの状況や双方との親子関係を改めて調査することが相当と考えられる。
この調査官調査報告書のあと、夫側は「母親と子どもたちを徹底的に引き離す」というスタンスを取りにくくなったのです。「熱が出た」とか「子どもが会いたくないと言っている」とか「悪天候」とか色んな理由で中止になった日も多かったけれど、「調査」という名目の「面会交流」が実施されることとなりました。
裁判所は審判中「非監護親に子を会わせたくない」という監護親に対して「面会交流」を強制させる力まではないということを聞いたことがありますが、「面会交流の許容性の調査」という名目で「面会交流の実施」を促すことはできるんだ・・・と、思いました。
「フレンドリーペアレントルール」はアメリカのカリフォルニア州などで採用されている基準であり、子の親としての関係で、他方の親と友好的な関係を築くことができる方の親の方が親権者にふさわしいというものです。寛容性の原則ともいうそうです。日本でもフレンドリーペアレントルールが注目された裁判がありました。年間100日にも及ぶ面会交流の計画を提示した父親が一審で親権者と指定され、ニュースになりました。平成28年の「松戸判決」です。
もしも、フレンドリーペアレントルールが日本中に広がっていたら、日本にこんなにたくさんの会えない親子が溢れているでしょうか?
平成25年、私の調査官調査報告書を見た人たちに「珍しい報告書だ」と言われました。平成28年の松戸判決以降、フレンドリーペアレントルールは以前よりもたくさん取り入れられているのでしょうか?それとも取り入れられていないのでしょうか?
「日本ではどのような基準で監護者、親権者の審判を下しているのか?」と裁判所に尋ねたとしても、きっと「個別の事案の判断等につきましてはお答えすることが出来かねるところではございますが」とか「一般論として申し上げますと、子の利益を最も優先する観点から総合的に考慮して」などときっとおっしゃると思うのですが、「会うべき親子が会えていない」という現状を見るとフレンドリーペアレントではない監護親が相当数いるのではないかと想像します。会いたいのに会えない親子が数多く存在している今の日本の現状は決して「真の子の福祉に叶っている」とは言いがたいのではないかと思います。