新型コロナウイルスにおける公演中止について
※この記事は他の団体は勿論のこと、第一回公演の座組みとも無関係の、在りが欲し主宰・津島ヨモツ個人によるものです。
……こんな感じのタイトルのお知らせが昨今、小劇場、商業演劇など、その規模の大小を問わず横溢しています。
なんとなく観に行こうかなと思っていた公演が中止になったり、推しの舞台・ライブが中止になったり、そこまで具体的な経験はなくとも、何かが中止になったと小耳に挟んだり。怒り、悲しみ、落ち込み、諦念、無気力。人によって反応は様々ですが、少なくとも何らかの感情的影響を受けている人は多いのではないでしょうか。
かく言う私も、観に行こうとしていた舞台が中止になったり、推しのLIVEが中止になった上に推しがコロナに罹ったりと、このコロナ禍で色々ございました。もう心配で心配でたまらなくて、コロナに罹った人もそうですが、スタッフさんだったり他の出演者だったり、はたまた観客になるはずの人だったりの心情も鑑みると、本当になんとも言えない気持ちになるのです。
しかし、感じ方はやはり人それぞれなので、LIVEなどが中止になった原因を探す、つまり「コロナ罹患の犯人探し」をする人が居たりもするんですね。規模が大きければ大きいほど、ファン層が多様であればあるほど、そういうことが起こるようです。
どれだけ気を付けて居ようとも、罹患するときはしてしまう。そんな段階がもうきているのに、明日は我が身かもしれないというのに、です。彼ら・彼女らもこの状況に疲れているのでしょう。そして、そういったことを触れ回っている方々は、そもそもファンですらなかったり、逆に熱烈なファンが転じてそうなってしまったり、色々、本当に人の心には色々起こるのだなと思い、ここ数年を過ごして来ました。
ここまでも、個人的体験に基づいた話でしたが、ここからは完全に私自身の立場の話をさせていただきます。私の主宰する劇団在りが欲し第一回公演『クラブ・ハルシネイト』は、2022/3/5に無事公演を終えることができました。これは完全に時の運だったと言えるでしょう。勿論、感染症対策は実施していましたが、そんなことよりも、この時はコロナウイルスの感染力が今ほど強くなかったことが1番大きな成功の要因で、だからこそ無事に公演を終えられたのだろうと思います。
この公演『クラブ・ハルシネイト』は、「個人のこころ」に焦点を当てた作品でした。ハルシネイトの文字通り、ゆらめき捉え切るなど不可能な、幻覚のように幽玄なる個人の心を描いたミステリー作品です。役者の方々とも、スタッフの方々とも「コロナ禍に一石投じてやろう!」なんてことは一切話さず、ただ、私のやりたい時に、やりたい人と、やりたいことをやった公演でした。それが、ただの偶然で上手く行った。それがとても素晴らしいことだったのだと真の意味で気付けたのは、ほんの今、この瞬間なのかもしれません。
さて、私は自身の幸福自慢をするために筆をとったわけではございません。タイトルの通り、『新型コロナウイルスにおける公演中止について』、劇団在りが欲しとしてできることをやりたいという、独りよがりな思いにより、筆を取らせていただきました。演劇はカロナールでもワクチンでもございませんが、心の薬になることを、私は信じてやみません。ですので、劇団在りが欲しとしては、《第一回公演の映像を8/31ごろまで公開する》という対応を取らせていただきます。時期は若干未定です。人の心が癒えるのに必要な時間など測り知れないですし、「延ばしてほしい」とのお声があれば延長することもあるかと思います。
公演中止は上演側も、観客側も辛いのです。上演側だって、わざと公演中止にしようなどと思うわけもないことは言うまでもないですね。個人の生活を営み、その中で演劇という活動を営み、真摯に向き合い、その完成形をお客様に見せたい。
観客側だって、公演中止は辛いのです。その日のために予定を調整したり、新しい服や靴を買ったり、美容院に行ったり、関連書籍を読んで勉強してみたり、比較のために他団体の映像や公演を見てみたり。……観に行くためにすることは人それぞれかとは思いますが、色んなことをしても、公演中止を、時によっては開場5分前に知り、心に大きな穴を開けて家に帰ることになるのです。どちらとも、辛くないわけがないのです。
その穴は、何で埋まるのか。安直に「演劇です!」と叫び、自団体のYouTubeのURLを貼ればいいものなのですが、ごく個人的には「埋められない」が正解だと思います。埋まらないのです。その公演でしか、その時でしか。それが、演劇は生物であるということだと思います。それでもあえて、仮に詰めておくものとして、この映像公開を決断しました。ただの一回公演を打てただけの、未熟な団体です。大した影響力などないでしょう。ですが、皆さんにとって大したものではないこの映像をただぼうっと眺め、『穴』のことを忘れられるようになってほしい。束の間の休息としてほしい。私としてはその一心です。
情勢にかこつけた売名だ、自団体をよく見せたいだけだと眉を顰め、不快感を示す方もいらっしゃるかと思うので一応の弁明をしておきますと、うちの団体では主宰の都合により少なくとも今年中に公演を打つことはないので、売名するにしても大した宣伝効果は生み出さないものであると考えております。
とは言いましたが、どう捉えていただいても構いません。心が疲れると、どうにも他人のことが気になるものです。ついつい粗さがしをしてしまったり、自分以外の誰かに責任の所在があると確認して安堵したり。無意識でも、意識下でも、いろんなことをしてしまうものです。その意識たる自己の認知だって、良い方にも悪い方にも歪み得る。人を攻撃することでそれが解消されるとは、私は到底思えないけれど、「そういうことがある」とは理解しています。でもどうか、何かを攻撃する前に、一度このどうでもいい映像を見て、それでぽっかり空いた時間だけでも埋めてみて、溜飲の下がることがあればいいですし、やはりこの売名行為に腹を立てて怒りのベクトルを分散させていただくことに使っていただいてもいいのです。
つまり、どう捉えるかは皆さん次第ということです。まさにクラブ・ハルシネイト。幻覚は皆さんが見るもので、その中身は皆さんが決めること。売名か自慢か、はたまた善意か救済か。別に何も考えなくたって構わないし、演劇なんてもうこりごり!と思えば見なくてもいいわけです。しかし、私は前述の通り、皆様の心休まるひと時を願うばかりであるということは、再度お伝えしておこうと思います。
長々と失礼いたしました。それでは、また会える日が来ることを祈念いたしまして、この記事を終えます。
劇団在りが欲し主宰
津島ヨモツ
【劇団在りが欲し第一回公演『クラブ・ハルシネイト』】
※ご視聴にあたって料金は発生しません。
公演概要はYouTubeの概要欄をご覧ください。
現在は公開が終了しております。ご了承くださいませ。