ワン・モア・ライフ!
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今何をすべきか? 普段通りに過ごして死ねばいい
交通事故で死んだ主人公は、90分だけ現世に戻れることになった。家族と一緒に最後の時を過ごそうとする。
死ぬまでの時間がどのくらいか、誰にも分からないが、無限でないことだけは間違いない。だから一瞬一瞬を大切にと教えられるが、限られた大切な時をどう過ごすのがいいかは、誰も教えてくれない。その人その人で違うから、誰にも教えようがない。
子どもの時は友達と遊ぶのが一番楽しかったり、少し大きくなると本や漫画を読むのが楽しかったり、ゲームや音楽など、いろんな楽しい時間の過ごし方があった。受験の前なら、わずかな時間も記憶に使ったりした。大人になると純粋に楽しい時間はなくなり、何かに備える必要もなくなった。今、限られた時間を何に使うべきか、と考えても全く思いつかない。
未来や過去を考えながらでなく、その時その時に集中するのが、幸せに生きる方法だと聞く。が、より正確には、それは不安や恐怖を生じさせないための方法で、幸せに直結する方法ではない。
むしろ、将来の不安に備えて必死に受験勉強している時間、その時はつらい時間に思えるが、ひとつの目標に向かって我武者羅になっている時間こそが幸せなように思える。道元が坐禅をしている姿が仏だと言ったのは、こういうことかもしれない。
死ぬまでの残された時間に何をするか。特別なことをするより、普段通りに家族と穏やかな時間を過ごせれば、それが最高な時になるはずだ。