マイ・スパイ
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子どもは力だ。こう書くとありきたりだと思えるけど、子どもを見てると生きる力をもらえることは間違いない。
子どもを見て、力をもらえるかどうかが、大人になったかどうかの分かれ目だ。
子どもが出る映画は、2種類に分けられる。子どもに返って見る映画と、そのまま大人から子どもを見るものだ。
「スタンド・バイ・ミー」は子どもの頃に返って冒険を疑似体験するし、「ホーム・アローン」は子どもの立場でいたずらを楽しむ。一方、この「マイ・スパイ」は、大人の視点で子どもを見る。
こまっしゃくれた子どもの言動に振り回されるスパイを笑う、という趣向だが、徐々にこの子どもがかわいらしく見えるようになっていく。「E・T」も最初は気持ち悪かったけど、いつの間にか愛らしい存在に見えてきた。人間の子どもは、宇宙生物よりよほど容易に情が移ってしまう。
子どもはかわいい。時に虐待のニュースを見るけど、ニュースになるのはそれだけ珍しいからだ。ほとんどの人は、子どもを大事にする。その割に子どもをただかわいいと思える映画が少ない。
この映画の女の子は、うちにいる子どもと同じ10歳。洋の東西は違っても、子どもは同じような表情をするのも、少なからぬ驚きだった。
なんにしても子どもはかわいい。『がばいばあちゃん』で、テレビを見ているより、洋八を見ている方がおもしろいと言った老婆には、ほとんどの大人が共感できるだろう。この作品は、子どもを大人の視点から見ている。こまっしゃくれた子どもをかわいいと思える、そんな余裕のある大人の世界が広がればいいと思う。