春のゴングが鳴る【啓蟄】
「啓蟄」を知ってから毎日そわそわしていた。「啓蟄」は「けいちつ」と読み、立春や夏至などでおなじみの24節気のひとつ。「すごもり(蟄)をひら(啓)く」という意味があり、土の中の虫が動き始める時期(=例年3月6日や7日のころ)をそう呼ぶらしい。稲作がさかんな日本では、昔から暦に合わせて農作業が進められてきた。啓蟄は、「冬が明けました。今シーズン開幕ですよ。」という合図なのだ。
福井は冬の間雪に埋もれる。雪が少なくなった、とは言われるが、それでも1月、2月は雨や雪ばかりで畑作業は進まない。水を吸って土がぐちゃぐちゃだし、手が凍りそうで外で作業をする気にはなれない。わたしは家の中で、雪が少ない地域の農業系のYouTubeを見ながら、うらやましくて目をぎらぎらさせていた。そんなときに知ったのが「啓蟄」。シーズン開幕の日を、今か今かと待つようになった。
その日は正しくやってくる。3月に入ると陽の光が明るくなり、真冬のコートの出番が少なくなる。「今日あったかいね」と話す日が増え、ふきのとうが開き始める。
シーズンが始まった畑には人が戻り、土が耕される。耕したばかりの土は板チョコのような茶色をしているのですぐわかる。冬の間、人の手が入っていなかった黄土色の地面が誇らしそうに板チョコ色を見せている。隣の畑でもそう。あちらこちらで春のゴングが鳴る。このあと植えられるのは、おそらくじゃがいも。畝を作り、種芋を植え、と諸先輩方は着々と作業を進めていくことだろう。今年こそは先輩方とお近づきになりたい。(と、思いながらなかなか声がかけられない、わたし。勇気をだせ~)
畑作業のあれこれは、YouTubeに教えてもらうことが多い。土のおこし方から、苗の植え方、剪定、水やり、追肥、収穫、残菜処理までなんでも教えてくれる。ただ一つ、気温や天気に関することは、自分で判断する必要がある。特に雪。雪が降る・降らない、積もる・積もらないで人の暮らしが違うように、畑との付き合い方も異なる。
その点、季節の移ろいを教えてくれる強い味方が暦だ。今シーズンは24節気をアップした「いにしえの配信者」の知恵も拝借しよう。パソコンを閉じて、巣ごもりを開く。春が来て本当にうれしい。
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