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やっぱり愛は勝つ-KANタービレの記録-

11/12。大好きなアーティスト、KANさんが旅立ってから1年が経ちました。
本当につい最近まで、ユーモアとあたたかさに溢れた音楽を生み出していたように思うのに、時の経つのは早いものです。

当日は、彼を敬愛するアーティストが集って、そのメロディー、音色、楽曲の素晴らしさを分かち合うコンサートが開かれました。

こちらも私の大好きなウルフルズのトータス松本さんを始め、Mr.Childrenの桜井和寿さん、藤井フミヤさん、スキマスイッチ、山崎まさよしさん、秦基博さん、そして総合司会にKANさんの親友、スターダストレビューの根本要さん…
ほかにも錚々たるメンバーが集まって、KANさんについて語り、彼の歌を歌いました。

今回のコンサートを迎えるファンの心境はそれぞれに複雑だったことと思います。私も例に漏れず、その日を迎えるのが楽しみなような、KANさんの不在を思い知りそうで苦しいような、味わったことのない気持ちでした。

KANさんの楽曲には、何度となく人生の辛い時を支えられてきました。心が萎れて疲れて人を信じられない時、どちらに進んだらいいかわからない時。KANさんのライブに行くと、その柔らかい佇まいとユーモアと優しさに、涙が止まらなくなったり、笑いが止まらなくなったりして、気がつくと次の日を生きる力が心の中にあることに気づくことばかりでした。

初めて名曲「エキストラ」を聞いた時もそうでした。おそらくCDにもなっていなかったその曲を、弾き語りで聴いたことをよく覚えています。
(この曲の魅力については、以前も書きましたが、聴いたことのない方にはぜひ、一度と言わず、じっくり聴いていただきたいです。)
とにかくこの曲を生で聴いて、私は悲しいことに当時恋もしていなかったのに、ポロポロ流れる涙を止められなくなりました。

大好きです 好きです

そう切なく控えめに切実に繰り返し、歌うこの歌。人を想わずにいられない主人公の直向きな姿に寄り添うような歌です。
初めて聴いた時からこの曲は、私の心に深く染み込んで、忘れられない曲になりました。
それから、KANさんをよく知らない知人に曲を勧める流れになったときは、迷わずこの曲をチョイスしていました。

その曲を、11/12にトータス松本さんと、スキマスイッチのお二人、ピアニストの塩谷哲さんが演奏し、歌い上げました。

トータス松本さんは、私が小学生の時から愛してやまないアーティスト。いつの時も私の人生にはウルフルズが、トータス松本さんの歌声がそばにあります。いつの日も魂を揺さぶる歌と生き様。

この曲を彼が歌うことは予想していなかったので、正直どうにも涙が込み上げて止まらず、きちんと聞けたのかどうかわかりません。
それでも、スキマスイッチの大橋卓弥さんの優しい澄んだ歌声と、

大好きです 好きです

と心から伝えるような、トータス松本さんらしい人間らしさ溢れる歌声に、胸が抉られるような、それでいてあたたかい気持ちになりました。
曲がたちまちKANさんの歌う時とはまた違う表情を見せ、歌詞の持つ力がステージから大きな力になって伝わるような、そんな歌声だったように思います。
きっと一生忘れないステージです。

ほかにも桜井和寿さんの歌った「君が好き胸が痛い」と「まゆみ」はもはや、完全に歌いこまれ、桜井さんの長年の持ち歌のようになっていたし、
藤井フミヤさんの歌う「世界で一番好きなひと」は、歌詞の持つ意味やメロディーの美しさを完璧に表した素晴らしいものだったし…

始まる前は、「KANさんの歌をKANさんなしでどんな気持ちで受け止めよう」と不安な気持ちを抱えていましたが、
参加したアーティストの皆さんのKANさんへの敬愛が、友情が、そんな気持ちをあたたかく包み込んでくれたような素敵な場になっていました。

さらに後半は、いつもKANさんのバンドツアーで共に演奏するバンドメンバーの皆さんも登場して、思わずクスッと笑うような、KANさんの茶目っ気が詰め込まれたナンバーも披露されました。

KANさんを振り返る時、どうしても「愛は勝つ」か、しっかり聴かせるバラードナンバーが流れがちですが、胸の谷間の引力や、ひざまくらの幸せや、二の腕の柔らかさを歌ったような、そんな曲や、ロックンロールに振り切った歌、それも、彼の大きな魅力なのです。

今回は中でも「適齢期LOVE STORY」を藤井フミヤさんとトライセラトップスの和田唱さんが、「Oxanne-魅惑のオクサーヌ-」をトータス松本さんと桜井和寿さんが、これぞKANロック!をさらにそれぞれの味にして披露しました。

聞き慣れていたバンドのドラムが痺れるロックな音色を響かせた瞬間、ずっとしんみりしていた、偲ぶばかりだった気持ちがたちまち吹き飛んで、「ああ、そうだったこれもKANさんだ」と瞬間で思い出されました。
(追悼ライブで「おっぱいぱい!」と叫んで、おっぱい型の巨大風船が飛び交うなんて、きっとKANさんだけなのではと、泣きながら笑いながら改めて感じました)

会場もみんな立ち上がり、思い思いにその空間を楽しんで、熱い空気になったことが、この日のハイライトの一つだったと思います。
最後にKANさんの素敵な写真たちを見ながら「愛は勝つ」をアーティストも観客もなくみんなで思い切り歌ったことも、象徴的なシーンでした。

…さて、まだまだ書きたいことはありますが、
とにかく、KANさんの作った音楽はその日たしかにそこで楽しそうに皆と共にありました。

皆が泣く時、笑う時、歌う時、つねにそこにKANさんのはにかんだような笑顔が見えるような、そんな気がしました。

まとめる言葉はまだ浮かばないものの、このライブが終わった時、弱って萎れて苦しい気持ちだった私の心が「明日も、なんとか、らしく生きよう」と思えていたのは、あの時のKANさんのライブと同じでした。

音楽って、すごい。歌い繋ぐって素晴らしい。本人の不在は、確かに苦しくせつないけれど、KANさんの作る歌がやっぱり大好き。

これからもこうして彼の曲に、歌声に、メロディーにたくさん力をもらっていくのだろうと、そう想った1日でした。

KANさん、いつもほんとうにありがとう。
帰りの飛行機にて。着陸。

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