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interview 齊藤麻弓さん “布に思いを織り込むように”

エシカルな活動をされている方をインタビューさせていただく、新しいわたしの夢への道。

エシカルジャーナリストの活動。

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2人目のインタビューは
京都上世屋で暮らしながら藤織りの普及に尽力されている、齊藤麻弓さん(藤織り工房ののの)。

齊藤さんのものづくりにかける情熱をしっかり伺ってきました。

まずは、齊藤さんのプロフィールや藤織りについて、また近日開催予定のイベントについて。

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プロフィール

齊藤 麻弓さん(藤織り工房ののの)
埼玉県出身。木工職人の祖父 齊藤久山に憧れ、ものづくりの道を目指す。
結城紬や絹織物の習得を経て、丹後藤織り保存会主催の藤織り講習会を受講し、30期保存会員になる。2018年から京都上世屋に移住し、藤織り工房のののとしての活動を始める。(WEBサイトより一部抜粋)

藤織り工房のののではWEBでのオーダーも承っている。

藤織り

藤織りは山に生える藤の蔓から採ってきた繊維で作る織物。
藤布は万葉集にも詠まれ、江戸時代に木綿が普及するまで、広く庶民の手によって作り続けられてきた。
日本各地で藤織りが途絶える中、唯一制作技術が受け継がれ続けている土地が京都府宮津市上世屋
上世屋では、女性たちの農閑期の仕事として藤織りが続けられた。

藤織り制作の流れ

フジキリ
春から夏にかけて、山に自生する藤を探し出し藤蔓を採る。
状態のいい藤蔓を手に入れるために木に登る方もいるらしい。
まっすぐに伸びているところの方が糸にしやすい。
使える大きさになるまで5年はかかる。

フジヘギ
伐った藤蔓を乾かないうちに木槌で叩き、皮を剥ぐ。
水分を含ませ繊維の間に隙間を作り、皮を剥いでいく。
必要な部分の中皮は蔓の外周の内側、厚さ1㎜ほど。

アクダキ
剥いだ中皮を皮が柔らかくなるまで灰汁で4時間ほど炊く。
炊き上がりの繊維は、灰の効果で真っ黒でヌルヌルしている。

フジコキ
炊き上がった繊維を川で洗う。
真夏でも長時間洗っていると身体の芯から冷えてしまうそう。
しかし、川の流れで不純物を洗い落とすのがいいそう。
竹で作ったコウバシという道具を使って不要なヌルヌルしている部分を擦り落とす。
洗い終わった後は糠の汁に浸してトリートメントしてから干して乾かす。

フジウミ
繊維を作りたい糸の太さに合わせて適当に割き、撚り合わせてつなぐ。
繊維を継ぎ足していき、繊維を均一な太さに長く長くしていく。
藤織りの中で最も時間のかかる工程。

ヨリカケ
糸車を使って、つないだ繊維全体に撚りをかける。
毛羽立ちを防ぐために繊維は湿らせておく。
撚りをかけ終わった糸を木枠に巻き取って、木枠ごと乾燥させる。

ハタオリ
作りたい布に必要な長さと本数の糸を揃えて織機に準備する。
松葉で作ったシャミボウキという道具を使って、経糸に糊をつける。
ぬらした緯糸を織り込んで藤布の完成。 

(WEBサイトより一部抜粋)

イベント

搔く績む (大益牧雄 木工展 特別展示)

日時:2021年11月26日(金)~12月1日(水) 11時~19時まで ※最終日17時まで

※期間中、大益氏・齊藤氏ともに在廊

会場:AYUMI GALLERY (新宿区矢来町144)

上世屋の山一つ向こうの地、味土野にて漆掻きを自ら行う木工師の大益牧雄氏の個展会場にスペースをいただき、特別展示として藤織りの展示を行う。

インタビュー

山に入り藤の蔓を採るところから始まる藤織りの作業。

時に重い木槌をふり蔓の皮を剥ぎ、不純物を落とすため冷たい川に入り、、

一本の糸を作るまでに想像を絶する苦労がある藤織り。

現在、上世屋で住みながら藤織りを行っているのは、90歳代のおばあちゃんと齊藤さんの2人だけ。

ものづくりや上世屋での藤織りに対する思い。

伺ってきました。

ーなぜ、織物の世界に足を踏み入れられたのですか?

木工職人の祖父の影響で、ものづくりに憧れがありました。

織物を始めたのは思いつきで、とにかくすごい技術を身につけたかったんです。

初めは結城紬を織ることから始めました。

しかし、結城紬は糸をつむぐこと、布にすることなど一反の結城紬を作るのに作業が分業になっていて、ものづくりの全ての行程がわかりませんでした。

そして、次に繭から糸をひくことから始められる絹織物を学びました。そして、その後は西陣織りの会社に就職しました。

そんな時に藤織りと関わりを持つ出来事がありました。

西陣織りの会社の大先輩で30年来藤織り保存会員さんとして藤織りをしておられる方がいらっしゃいました。元々、藤織りの存在は知っていましたが、その方がとても素敵な先輩だということもあって、保存会の講習会に参加させてもらい、藤織りについて学んでいきました。

【繊維を撚り合わせていくフジウミの作業。藤織りでもっとも時間がかかる作業。】


ー齊藤さんは今京都の上世屋で藤織りをされていますよね。上世屋で暮らしながら藤織りをされているのは90歳代の女性と齊藤さんだけと伺っています。
 齊藤さんが上世屋に移住して藤織りをしようと決意されたのはなぜですか?

せっかく、上世屋という土地で続いてきた藤織りなのに、90歳代のおばあちゃんが、「もう歳だしやめとくわ」なんてことになったら、

『村に住んでて藤織りをする人がいなくなっていまうなぁ。それは嫌だなぁ』と思ったんです。

結城紬や絹織物、西陣織りを経験して、身近なものを工夫して布をつくる藤織りはものづくりの原点だなと思いました。

そして、いつか都会じゃないところで暮らしたいとも思っていました。

星を見ることが好きなので、田舎暮らしに憧れていたんです。

でも、移住するなら雪が降らないところがいいなと思っていました。
上世屋は雪がたくさん降るんですけどね。笑

でも、雪のことや住む条件を考えても

藤織りは上世屋にしかないな!と思ったんです。

「誰かにやって欲しいと待つのではなく、自分でやろう」と決めました。

すでに自分の基準や選択肢の中に上世屋の藤織りがあったんだと思います。

【手間をかけて段階的に繊維を柔らかくしていく】

ーそこまで、魅せられている藤織りの魅力って何ですか?

手間がかかっているもの、大変な作業の末に出来上がるモノは魅力的だと思います。

今の社会はモノがどうやって出来ているのかが見えません。

糸もどうやって作られているのか、見えないんです。

現在に残っているモノは昔の人たちが試行錯誤した末に出来上がっています。

工夫の最終形態なんです。

上世屋には藤織りを作り始めたその当時から続くものづくりが残っています。

だから、上世屋で藤織りをすることに意味があるんです。

【実際に機織りをしている様子】

ー上世屋で藤織りをされているのは90歳代のおばあちゃんと齊藤さんのたった二人だけ。 
 藤織りを継承していくことにプレッシャーはないのですか?

ないですね~。

やっぱり保存会の存在が大きいのだと思います。

今、上世屋で藤織りをしているのはわたしだけですが、手に藤織りの技術を持っている人たちはたくさんいます。

昔の上世屋の存在を知っていて、長く藤織りをされてきた方達に直接教わった人もたくさんいますから。

なので、もしわたしに何かあっても大丈夫ですよ!笑

ーでは、ここで工房の名前になっている『ののの』についてお伺いしたいいのですが。

『ののの』の、ののは上世屋ではのことなんです。

地方で呼び方が違っているらしくて、沖縄では地の布をぬぬと呼ぶ地域もあるらしいです。

『ののの』にした理由は、
祖父が煎じて飲むためのサルノコシカケを探して手に入れたいと考えている時があって、その時にその言葉遊びみたいに「のののこしかけ」って言葉が浮かんできて、藤布の〇〇って意味で『ののの』っていう名前いいかも!と思いつきました。

そして、響きも気に入っています。

名前を思いついたきっかけということもあって、何か座れるものも作りたいなと思っている次第です。

縦に並べると藤の蔓みたいだし、布にも織り込める形にしたいなと思ってロゴを考えました。

ー確かに、響きが可愛いですよね!!ロゴもとても素敵です。


ー最後に、人生で大切にしている考え方を教えていただけますか?

祖父に言われた言葉で、

“自分の身体は自分が大切にしなさい”

という言葉ですね。

おじいちゃん子だったのもあって、祖父の存在がとても大きいです。

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ものづくりを愛し、ものづくりに愛されている齊藤さん。

インタビューの中で齊藤さんのものづくりへの愛情を何度も感じることができた。

特にわたしの心に響いたのは、上世屋の藤織りの今後についての考えを伺ったときだ。

上世屋の藤織りを守りたいです。

でも、まだ上世屋に暮らしながら藤織りをして生きていくことは難しいのも現状です。

だからこそ、上世屋で藤織りをして生きていけることを実現したい。

そして、次の世代に伝えていきたい。


伝統技術は一回無くなると復活することの方が大変です。

伝統技術は先人たちの思いが込められているものなんです。

もともと、布は家族が着るために作られていました。

大切な人を守り、温めてきたもので、ただのモノではないんです。

糸には思いが伝わります。

布には思いが織り込まれているんです。


なので、わたしも使ってくれる人の顔を想像してものづくりを続けていきたいです。


そう語る齊藤さんの表情はとてもあたたかかった。

齊藤さんに、何かつくってもらう人はとても幸せだなと感じました。

【藤布のコースター。藤布の自然な色味がなんとも言えない優しい色味だった。】

【藤紐とリサイクルガラスのペンダント。この長さの紐を作るのにどれほどの日数と手間がかかっているのだろか?そう思うとさらに輝きを感じる一品だ。】

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わたしもものづくりが好きです。

モノがどのように作られ、どんな人が作っていて、どうやってわたしの手元に届いているのかに
ストーリーがあると思っています。

普段、意識をしていないと
モノの裏側を考えることはできません。

齊藤さんにお話を伺って、糸を一から作る過程をお話いただき

まだまだ、モノの裏側を見れていなかったなと反省しました。

齊藤さんもおっしゃっていましたが、

モノの裏側は隠されている。
知ろうとしない限り見えてきません。


だからこそ、これからもモノの裏側のストーリーをたくさん伝えたいと思いました。

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